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  アリスインプロジェクト 2018札幌公演
「ダンスライン♪SAPPORO」 参加レポート
 
   


ダンスライン♪SAPPOROヘッダー

脚本 : 麻草 郁
演出 : 納谷 真大 (ELEVEN NINES)

http://aliceinproject.com/

【 日 程 】 201825(水)29(日)  全8公演
【 場 所 】 札幌 ・ 生活支援型文化施設 コンカリーニョ (札幌市西区八軒1条西1丁目)
無事終了しました。



ガールズ演劇の旗手と言われ続けるアリスインプロジェクトが、札幌で3年目の公演を開催。

ジャガイモンプロジェクトは今年も、チケット販売イベント、稽古場、そして公演本番と現地での取材を行ないました。

また、これ以外にも様々な形でスタッフとしても参加し、表側のこと裏側のことと数多くの経験もさせていただきました。

更には昨年に続いて所属タレントもキャスティング起用していただき、2年続けてタレントプロダクションとしても参加をさせていただくことが出来ました。


今年のレポートも15万文字を近い長大作となっており、最後まで読むだけでもかなりの時間を要すると思います。

北海道のガールズ演劇にまた新しい1ページを間違いなく刻んだこの公演を、今年もジャガイモンプロジェクトの独自目線でレポートします。


   
(フライヤーはクリックで拡大してご覧いただけます)

レポート中に使用している写真の一部は、一般の方は撮影不可の場所で、運営側の許可の元に撮影したものが含まれています。
第三者の二次利用は固くお断りいたします。







今年の公演の企画のスタート、オーディション、稽古、チケット販売イベント、稽古、稽古、稽古 ・・・ 。

物事が始まってからは各々にやるべきこと、やらなければならないことが山積し、それは待ったなしに怒涛のように押し寄せてきます。

そんな毎日を送っているうちにあっという間に公演本番がやってきます。


長いようで短い日々。
キャストやスタッフ関係者にとってはまさにそんな日々だったと思います。

一方でこの公演を心待ちにされていたみなさんにとってみれば、それは待ち遠しい瞬間でもあり、そして長い期間だったかもしれません。


立場によってそれぞれの感覚があったであろう公演スタートまでの期間。
ですが一方で、どんな立場の人にも同じ想いを共有できるものもあると思います。

それが、公演が終わった後に押し寄せてくる ロス だと思います。

それぞれにい想いを持ったものだからこそその後にやってくるこの喪失感というのはとても大きなものです。


今年は、 ダンスラインロス
毎年こんな気持ちになるのは分かっていても、だからといってこれを避ける手段を私は知りません。

むしろこの ロス が強ければ強いほどそのもの自体に対する想いが大きかったのだと実感することもでき、それはそれで自分自身を納得させることもできたりするのだと思います。



今年の公演は4月25日から29日までの5日間。

一度始まってしまえば、それは後ろから強い風が吹きつけるように背中を押され、そしていくらその場に踏ん張ろうとしても過ぎ去っていきます。

ジャガイモンプロジェクトでは今年もタレント・羽美をキャストに起用していただきました。
一方、私自身は例年同様、本公演は最終2日間のみの現場参加となります。


本来であればタレントマネージメント最優先の立場です。
ですがここまで来るともうその役割としてのやるべきことはほとんどありません。

一方で、私自身は現場入りしてからもやるべきことは色々とあります。

まずはアリスインプロジェクト札幌公演では初年度から 取材者 としての役割があります。
このレポートもその結果であり、みなさんに対しての報告でもあります。

このような立場があり、そしてこれまでの様々な経験などがあるからこそ多角的にお伝えできるものは少なくないと思います。
公演が終わった瞬間に全てが終わってしまうのではなく、たくさんの方にとっての振り返りにもなり、新しい発見にもなり、また一方で次へ繋がる何かにもなるよう、このような形のレポートを毎回まとめています。

文量だけを見てるかなりの長さにはなりますが、これを積極的に短くしたり端的にまとめてしまう事は私はあえてしません。


また、実際の現場では表方のスタッフとしても色々と動きます。

ご来場いただくお客様に公演を楽しんでいただくためには、気持ち良く観劇していただくためには、開演中ばかりではなくその前後の様々な対応も大切だと思います。
ここを色々と担当させていただき、少しでもスムーズな、そして気持ちの良い流れを作るべく努力していきます。

そして結果的には私自身もそこから得られるもの、そしてこのレポートに書き加えられることもあるはずです。


様々な角度から多角的に、そして時に厳しく、公演最終2日間のレポートをお届けします。





4月28日(公演4日目)

コンカリーニョにやってきた朝。
この日の公演は13時からと18時からの2公演です。

これを前に午前中から現場入りをしますが、やはりいつもこの瞬間というのは心臓が高鳴り、そして独特の緊張感にも襲われます。

本番がスタートして数日が経過し、すでに ” 温まった ” 現場に遅れて合流するというのは何とも言えない気持ちにも、そして違った意味での緊張感も伴います。

ただ1つ、自分自身の中での救いは、この現場にいる人は知っている人ばかりだという点です。
すでに稽古場での取材や他のタイミングでもお会いしていたり、また以前より知っているスタッフの方ばかりがいるわけで、そういう意味では随分と気持ちも楽です。

しかし一方でそんなこと考えると、今回の稽古期間、他のキャストより遅れての合流となった 金澤有希 さん は本当に色々な想いを持って合流したのだろうなと思います。

すでに ” 温まって ” 、形の形成されつつある場所に後から飛び込んでいくというのは本当に大きなプレッシャーだったのではないかと想像しますし、不安もたくさんあったと想像します。


金澤 さん 本人も、そしてファンの方も、金澤 さん は、” 極度の人見知り ” だとこの合流以前から言っていましたし、私自身もこれ以前の 金澤 さん の活動を見ている中でそういう部分を大いに感じていました。

ですが、結果としてはこの遅れての合流というのは心配していたよりもずっとスムーズに、そして全てが穏やかに進んだようです。

あとで聞いたところによると、この座組は全体的にそもそも ” 人見知り ” の人が多い座組だったようです。
結果的にはそんな部分も良い方向に作用し、金澤 さん の合流がスムーズにいったようですし、一方でそこにはこの合流がスムーズになるべくちょっとした努力をしたメンバーもいたようです。

具体的に誰がどのようなことをという点に関してはここに書くことは避けたいと思いますが、どんな場面であっても場所であっても、このような形の、中間材のような、橋渡しのようなことをしてくれる存在というのはとてもありがたいことだと思います。
そして、そういうことを出来る人がいる現場、そういう雰囲気を持っているグループがここにあったというのは全ての人にとっても嬉しくも逞しくも、そしてありがたくもあることでした。



私のこの本公演への合流、朝の現場入りの際には必ず持っていくものがあります。

もうすでにアリスイン札幌の現場ではすっかりお馴染みになったとは思いますが、士幌の生産者還元用ポテトチップスの差し入れを3箱。
1週間前の稽古場にも持っていきましたが、また改めての持参です。
私が出来ることは少ないですが、それでも出来ることを少しでもという想いで毎回必ず差し入れを行なっています。


   


会場に入ってからはまず舞台へと向かい、前日までは関係者のSNSなどを通して見ていた実際の現場を自分の目で確認しに行きます。

この時点ではまだ数人のスタッフしか来てはいませんでしたが、そんなみなさんとちょっとゆったりと話をしたりしているうちに、規定の集合時間に向かって続々とスタッフ関係者、そしてキャストも現場入りしてきます。

舞台や客席ではイレブンナインの若手が熱心に小さなゴミの1つも残らないよう掃除をし、モップをかけ、ホコリを探し ・・・ 。

このアリスインプロジェクト札幌公演は札幌の劇団・イレブンナインのみなさんに何から何までお世話になる形で形成されています。
それは演出、制作、衣装など、実際にパンフレットや広告などに名前が並ぶものばかりではなく、このような縁の下からの支えも本当にたくさんあります。

彼ら彼女達はまさに縁の下からこの公演全体を支えてくれています。
また、朝の掃除などに限らずかなり色々な場面で彼ら彼女らの頑張りは、我々スタッフの側からは目について見え、そしてそれがあってこその公演だと思うこともしばしば。

そんな様子は、またこのレポートの中でも追って紹介してきたいと思います。


   


朝、我々表方のスタッフにとって最初にやるべき仕事は、物販開始、そして開場時間にむけた受付周りの準備です。

この日の昼公演は物販の開始が12時からだったため、それに先立って一旦会場の中に入れてあったスタンド花などを並べ、更には受付、物販用にテーブルなどを準備。
前日までにはビルの間を抜ける風にあおられてスタンド花が倒れるアクシデントもあったため、テープ等でなるべくの補強なども行ないます。


   


一方、この時間にはすでに会場前にいらしているお客様の姿もチラホラ見えます。
そしてそんな中には私が過去の様々なイベントや機会などでお会いしたことのある方も少なくなく、ご挨拶がてら少しお話をさせていただいたり、改めて交流をさせていただいたり出来るのも嬉しいことです。

また、この公演を前にこちらから、「 ジャガイモントレカをお配りします 」 というアナウンスもさせていただいていました。
私はジャガイモンプロジェクトの普段の活動から、いつも特製のトレーディングカードをお配りしているのですが、昨年からはこの公演のために限定デザインのカードを作っています。

今年も朝からこのようにしてご挨拶させていただく方などに対してカードをお配りしていたのですが、この2日間でお渡しした方の中には、「 時間の都合で公演は観られないけれど、カードだけでももらえますか? 」 と、わざわざ来ていただいた方もいらっしゃいました。
本来、公演自体も観ていただけるのが立場上からも一番望ましいのではありますが、それでもやはりこのような形でもお声がけをいただけるというのはそれはそれでまた嬉しいものです。

このような1つ1つの御縁というのはその場限りではなく、きっと何らかの形で、そしてそれぞれの形で次に繋がっていくものと思っています。


   


同時刻、楽屋などもあるバックヤード、舞台の裏側でも様々な準備が同時進行的に進んでいます。

キャストのみなさんは集合時間を前後してヘアメイクなどの準備も行ないますが、同時にこの時間を利用して食事を摂ることも必要です。
1日の中での全体の流れを見てもちょっとした空き時間に食事を摂ることというのは本当に大切ですし、このような状況に慣れている人にとってはそれがごく自然な流れ。

一方で今回は舞台初挑戦というキャストも少なくなく、そういう人に対しては始めのうちはこういう部分での細かな指示などもあったそうです。
現場の興奮や熱量の中でついつい忘れがちになってしまうことでもありますが、こういう部分というのも本当に大切なことだと思います。


また、キャストがこれから着る衣装の準備もその直前まで着々と進められています。

衣装自体の用意というのは当然もうかなり以前に終わってはいます。
この時点に来て靴がない、服のサイズが合わない、小道具を忘れたというようなことはあり得ません。

ここでの ” 準備 ” というのは、前日までの本番の中でちょっとしたシワができてしまったものにアイロンをかけたり、汚れを取ったり、破れなどがないかをチェックしたりするのが、その ” 準備 ” に当たる作業です。

ここでもやはりイレブンナインの若手メンバーを中心に作業が進められます。
楽屋では衣装はハンガーにかけられてきれいにズラッと並べられていますが、それは前日の公演後にキャストがかけていったそのままではなく、全てに改めて目が通され、そして次の日も万全の状態で本番にのぞめるようにとする裏方スタッフの努力があるのです。


   


公演本番が始まる前、もう少し正確に言うと開場前、舞台の上には一旦キャストが全員が集合します。
これは今回の公演に限らず、昨年も一昨年もそうでしたが、この時点で演出の 納谷 さん が最終確認したい場所を提示し、実際に本番同様に1つのシーンをやってみたり、全体に対しての注意事項などが伝えられたりもします。

前日のものを振り返った上での注意だったり、ちょっとした演出の変更がある場合もあります。
開場のギリギリまで行われるこの準備は、決してお客様の目に触れる部分ではないと思いますが、本当に大切なものであり、そして我々スタッフも改めて気合の入る瞬間でもあります。


   


また、この開場前には会場の外でも時間を追って動きが様々あります。

まず最初は開演1時間前の物販開始です。
そして同時に、チケットをキャストからの手売りで購入された方や、取置をしてまだ実券を持たれていない方に対してのチケットの引換も始まります。

また、開演30分前には開場となるため、それに先立って10分ほど前から入口前での整列も始めます。
このあたりは私が現場入りしている最後2日間は、昨年と同様にイレブンナイン・ 菊地颯平 クン と一緒にお客様対応を行なっています。

が、前日までは混乱があったと、お客様からもスタッフからも情報がありました。

今回のチケット、指定席の方に対しては当然ご自身の席番号がチケットに書かれているために全く問題なくご案内が可能でしたが、それ以外の自由席の方のチケットに問題がありました。

チケット発券時のシステム上などでのミスもあったのですが、この自由席券に ” 整理番号 ” が入らず、本来であればその整理番号をもってお客様に順に並んでいただくのが理想でしたが、それが出来なくなってしまいました。

そこで、運営側では事前に様々なパターンを想定した上で話し合いも重ね、チケットに併記された ” チケット予約番号 ” を利用してお客様に並んでいただくこととしたのですが、ここに多少の難しさが伴いました。

この ” チケット予約番号 ” というのは、それがわかっていてチケットを見ればどこに書いてあるものがそれにあたるのかというのは一目瞭然ではあるのですが、実際のチケットには、「 これがチケット予約番号だよ 」 ということは書かれておらず、チケット1枚を見ただけではお客様の側ではわかりようもありません。

私自身も今回、自分自身が運営スタッフ側にいたためにこの番号がそれにあたるものだということがわかりましたし、それぞれのお客様に違う番号が発給されているということが理解できましたが、逆の立場であったならきっとわからずに不安だけが残ったと思います。

であれば運営側として事前にどうすべきか、現場ではどういう対応をすべきかというのが自然と見えてくるとは思うのですが、これがここまでは足りていなかったと思います。

本来であれば公演初日よりも前に、公演の公式サイトに実際のチケットの写真も出した上で、この番号の順に並んでいただくということを提示すべきだったのと、現場でもそれを言葉以外の方法でお客様に提示できる準備が必要だったと思います。
この点、私もスタッフの1人である以上は誰かのせいにしたりというのはできないと思いますが、ここは明らかな準備不足があったと思います。

結果、公演初日は特にお客様に対してのご案内が思うような形に進まず、自由席の方の整列時に混乱が生じてしまったようです。


   


これに対し、公演公式のツイッターでは以下のような形の発信が公演初日の朝に行なわれていましたが、ご来場いただける方の立場に立つと、これでは少し情報が足りないと思います。




また、私もいつもそうなのですが、様々なイベントに対して1人のファンとして、1人の来場者として参加する時、そのイベントは早く行けば行くほど前で観たりすることができるのか、遅く到着しても同じなのか、早く行かないと入れなくなってしまうのかなど、色々な心配事を抱えることがあります。
この心配を解消するためには公式の発表を探したり、時には関係者の方に直接聞いてみたりすることもあります。

ですが今回の場合、まずこの整理番号についてのアナウンスが公演初日の朝になってしまっているというのは正直遅すぎる感がありますし、同時にこれはお客様の持つ不安を全て解消するには至らない情報量だったと思います。


相手側にとって必要な情報の発信には、普通の発信とはまた少し違ったやり方が存在すると思っています。

これから発信しようとするものを相手が見た時に、そこには相手にとって必要な情報がしっかりと盛り込まれているか、そしてわかりづらくないか。
文字での発信というのは言葉での発信とは違った受け取り方をされてしまうこともあるため、そういう部分での不明瞭な部分はないか。
それを発信する前にしっかり客観的に確認する必要があります。

今回の場合はチケットの不備に対する情報の発信であり、そういう部分が特に必要だったと思うのですが、ここでの一連の発信にも更に不備があったのではないかと思います。

私自身も立場上、こういう部分を手掛けるスタッフの多忙さもわかってしますし、それぞれのスタッフが1つの仕事、1つの作業だけを担当しているわけではないため、どうしても疎かになってしまう部分があるというのも理解しています。
普段は役者を本業としているみなさんがスタッフとして支えてくれている公演のため、そういう意味での不慣れな部分も少なくないのも分かっています。
ですが、だからといってそういう意味での ” 慣れと許容 ” が結果的にお客様に不便やご迷惑をおかけしてしまうのであれば、そこには改善すべき点があるのだと思いますし、変化していかなければならないのだとも思います。


ということで、公式からの発信の直後に、こちらから追加で情報を発信させていただきました。
あとはこれが1人でも多くの方に届くことを祈るばかりではあるのですが、同時にそういう意味での不安も残りました。




あとで聞いたところによると、初日などは混乱する整列において、この画像の発信を見たお客様がスタッフに対して色々とアドバイスをいただき、更にはお手伝いまでいただいたようです。

公演の前には、「 チケットを大きく引き伸ばしたようなものを作って、お客様に目で見て分かっていただけるようにしないと混乱するよ 」 ということも伝えてはあったのですが、私自身も伝えるだけではなく、実際に作って渡しておくべきでした。

実際、私が現場入りしたこの日からは大きく引き伸ばしたチケットを持参しており、これを使ってお客様をご案内したためにそれほどの混乱は生じなかったと認識しています。

こういうものは言葉で長く説明してもダメです。
お客様は常に移動したり色々なものを見たり気にかけたりされているわけで、やはり端的にわかるものでなければならないと思います。

全てこういうものは物事を俯瞰して考え、自分達のやっていることや伝えたいことが、しっかりわかりやすく相手に伝わるものなのかを客観的に見つめなければなりません。


   


開場前の整理列は、S指定席のお客様、A自由席をインターネットで購入いただいたお客様、イベントや手売りなどで購入し、当日チケットを引き換えた方にそれぞれの列を作っていただき、順に入場をいただきます。

楽しみなものがこの直後にあるのに、こういう部分でイライラしてしまったり、不安を感じてしまうのは、私が一般の方と同じ立場で参加していたとしたらやはり嫌です。
公演自体を楽しめたとしても、あとで振り返った時に入場前にイラッとしてしまったり疑問を感じてしまうと、そこが全体の良い思い出に傷をつけてしまいかねませんし、この日に至るまでに一生懸命に頑張ってきたキャストのあの子達の努力や様々なものに泥を塗ってしまうようなことになるかもしれません。

だからこそ、私自身は入場前のこの場所もある意味では公演の一部だと思っていますし、だとしたらそれに対しての演出や飾りだって必要だとも思います。

参加者としてイベントに行くにあたっては、やはり入場前の場所だって、列に並んで待っている時間だって、ワクワクドキドキしながら過ごす時間です。
ここを気持ちよく過ごしていただくための努力は、我々スタッフ側には絶対的に必要だと思っています。



物販コーナーにも開始と同時に列ができます。

内容は、公式パンフレット、台本、各キャストのポートレートと写真セット、公式Tシャツと例年と同様ですが、どれもいつも人気の商品ばかりです。
中でもポートレートと写真セットは初日から早速増版されたものもありました。

各公演の終了後にはサイン握手会がありますが、これに参加するためには物販で2000円購入ごとに貰える参加券が必要です。
そんなこともあり、物販は毎回大好評をいただいています。

特にポートレートと写真セットに関しては各キャストのものがそれぞれ作られており、その準備数も一定ではありませんが、各キャストの人気や支えてくださるファンのみなさんの影響が直に出るものです。

1人のキャストのものを全てコンプリートするだけでもそこそこの金額がかかりますが、それでも1人のキャストのものを全て揃えたり、またたくさんのキャストのものをそれぞれ購入されたりと、色々な方がいらしたそうです。


公演関係者としてはこのように物販でたくさんのグッズが売れていくというのは本当に嬉しいことですし、ありがたいことです。

と同時に、このみなさんの購買行動には本当に大きな愛情を感じます。

今回の公演に限らず、私が様々な形でお邪魔するイベントなどでもいつもそうですが、このような形で物販に多くの金額を費やされる方がたくさんいらっしゃいます。

ここは金額を多く使った方が凄くて、多く使った方が愛情が大きいというような単純なものではありません。
また、そういう物差しで何かを見比べるべきものでもありませんが、それでもやはりそんなみなさんの行動や、それぞれの愛情の大きさには頭が下がるばかりです。

実際、このようなみなさんの愛情にそれぞれのタレントが支えられているのは間違いのないことですし、公演関係者としてはこの公演自体も支えていただいていると実感しています。

私も及ばずながら、パンフレット、台本、Tシャツと、写真セットを数組購入しました。


   
   
   


開場時間の12時30分。
舞台側の準備が整うと、受付のスタッフの指示のもと、扉が開けられてお客様に対してのご案内が始まります。

ここまで来ると外にいる私と 菊地 クン は少し安堵できる瞬間もあるのですが、それでも開場後に到着されるお客様も多く、当日券を求めて来場される方もいらっしゃったりするなどまだまだ色々なご案内は続きます。

また、一度ご自身の席を確保してから外に出て来られる方もいらっしゃいます。
そんな方々と少しゆっくりお話をさせていただきながらも、私も開演5分ほど前には客席へ向かいます。


   


12時30分開演の星組公演。

この公演全体では全8回中5回目。
ちょうど折り返して後半戦に突入です。



本公演は終了しましたが、ダンスライン♪ は5月に東京での公演があります。
また同時に、今後の再演も十分に考えられる作品です。

今回の 『 ダンスライン♪SAPPORO 』 の舞台は終了しましたが、ここに具体的内容を書き添えることは、次に再演がある際、その観劇を楽しみにされる方に対してのネタバレになってしまう可能性があります。

その為、レポートといえどもこちらで劇中の具体的内容やストーリーについては書くことは極力控えさせていただきます。




この作品の完成した姿をこうして劇場で観る以前に、私はすでに台本にも目を通していた他、つい数日前には稽古場で通し稽古を観ており、ストーリーの内容や舞台上での展開、他にも色々なことは事前に知っていました。

ですがやはり、こうして実際の劇場で、大きな舞台の上で繰り広げられるものを目の当たりにすると、やはり大きな感動が押し寄せ、そして涙を抑えることができません。

オープニングのシーンからその感動の波は早くも私の心に押し寄せ、そしてどんどんとその世界へと引きずり込まれていきました。

オーディションで選ばれ残ろうとする彼女達の姿もすぐ横で見ていましたし、チケット販売イベントや稽古場でもその様子を見てきました。
また、関係者としてここに至るまでにも様々な情報を聞いてもいましたし、そこには楽しかったり嬉しかったりするものばかりではなく、彼女達の苦労や努力の伝わってくるものもたくさんありました。

ここまでの期間、私が直接現場にいられる回数や時間というのは決して多くはありませんでしたが、事務的な作業やスタッフ同士でのやり取りや打ち合わせなども数多く、そういう意味では常に公演がすぐ近くにあったと表現しても過言ではありません。

そういう意味では私の気持ちとしてはすでに彼女達に対して、そしてこの公演自体に対しても親心のようなものが育っており、これが一段と大きな感動にも繋がり、そして自然と涙が溢れ出てきます。

普通以上に色々なことを知っているからこその感動もありますし、考えさせられることも多くあります。
ですがやはり、一番は目の前で頑張っている彼女達の姿そのものに大きな感動があることは間違いなく、それは他の一般のお客様とも同じです。

また公演関係者として毎年携わらせていただいているアリスインプロジェクト札幌公演は私にとっても本当に大切なものであり、当然思い入れも強いものです。

そんなこともあり、私の目の前で繰り広げられた約1時間40分の公演は、涙で霞み続けた公演でもありました。



例年であれば終演後にはすぐに サイン握手会 が始まります。
ですが今年はここがちょっとイレギュラーな形となりました。

まずはステージ上にテーブルが1つだけ用意され、最初に 金澤有希 さん のみが参加の 無料ハイタッチ会 が行なわれます。

私も直前までは他のお客様と一緒に客席で観劇していましたが、その準備が始まると同時に階段を駆け下り、ここからはスタッフとして動きます。

この無料ハイタッチ会はその名の通り、参加券などがなくてもどなたでも参加できるイベントとなっているため、ステージの上に上がって来られる方も多数。
まずはそんなみなさんの誘導や安全確認などを行ないます。

金澤 さん とのハイタッチはお1人数秒。
全体でも時間にして数分で終了し、最後にマイクを持って挨拶をしてもらい、これでひとまず 金澤 さん の出番は終わりです。


続いては、ステージの上のテーブル配置を変更し、サイン握手会 の準備です。
こちらはこの回の公演に出演した全22名のうち、金澤 さん を除く21名が参加します。

スタッフ数名でテーブルを並べてマジックなどを用意し、準備が完了したところでキャストの呼び入れが行なわれます。


この間、基本的にマイクでの進行は 納谷 さん が担当してくださり、面白おかしくイベントが進みます。

ここからはイベント参加券がないとステージに上がれないため、それほど混乱するようなこともありませんが、それでも次々にステージへと上がってきてくださるみなさんの熱量が伝わってくる、熱い熱いイベントとなりました。


   


これは毎回そうなのですが、キャストには事前に、「 まずサインをしてから交流するように 」 ということが伝えられています。
キャストによってはこのような交流イベントに慣れている子もいれば、先日のチケット販売イベント程度しか経験のなかった子もいます。

自分のサインがある子もいれば、そういうものが全くないという子もいます。
サイン以外にもそれぞれの方に対してコメントをいっぱい書き込む子もいれば、そういうことが不得意な子もいたりします。
でもそういうものも全てがそれぞれの子の個性であり、全員同じではないところが逆にとても良いのではないかとも思います。


これだけの人数がいると当然のように個人の差も出てきてしまうわけで、長い行列が途絶えない子もいれば、途中で列がなくなり、一旦舞台裏に下がる子もいます。

また一旦裏に下がっても、お客様の希望で登壇の呼び出しも可能です。
あとでお客様に伺った話によると、「 あえて一旦後ろに下がるのを待って、『 ○○さ〜ん、登壇してくださ〜い 』 という呼び出しを楽しんだ 」 という方もいらしたようです。


サインをたくさん集めようとアチラコチラ回る方もいらつしゃれば、同じキャストのところに何度も行かれる方もいます。
どちらの方にもそれぞれの想いがあると思いますし、キャストやこの舞台に対する愛情を感じます。

また、1枚の参加券を大切なもののようにしっかりと握りしめて、ステージの入口に来てくれた小さな女の子もいました。
何年か後、今回の舞台を目の前で観たこの子がアリスインプロジェクトの舞台に上がっているのではないかと想像すると、ちょっと心が震えるような気もしましたし、そんな子もこの舞台を楽しんでくれたのだと思うと心が弾むようでもありました。

キャストの子の家族のみなさんがいらしていたというケースもありましたし、学校の友達や先輩後輩が駆けつけてくれたという話も聞きました。

とにかくたくさんの方がステージに上がってきてくださり、またそんなみなさんがそれぞれルールを守ってくださり、全てが滞りなく、そして特に問題もなく進んでいくことが、スタッフとしては嬉しくもありがたくもありました。


私自身はここでもお客様を誘導したり、ルールがわからない方に対しての説明をさせていただいたり、タイミングを観ながら交流の列が進むように促したりするなど、様々な作業を一気にやらせていただいていましたが、特に大きな混乱は感じませんでした。

アリスインプロジェクト札幌公演が今年で3度目を迎え、このような体験を2度3度経験しているスタッフもいます。
それでもやはり私以外は全体的にこの握手交流会に関しては不慣れな感は否めませんが、そんな中でもお客様が自主的に行動してくださり、そんなみなさんあってのイベントだと改めて認識もしました。


実は私自身もこの本番前の物販でグッズを購入したことで参加券を6枚持っていたのですが、それはポケットに入ったままでした。
さすがにスタッフとしてステージの上に上がっている以上、突然踵を返して交流の列に並ぶわけにはいきませんよね。

それでもやはり、本当に楽しそうなみなさんの様子や言葉を聞いていると、そんな中に自分自身も飛び込みたくなります。
そういう意味ではちょっと悔しい思いも頭の中をかすめたりもしたりするのですが、それ以上にスタッフとしてそんなみなさんの様子を見ているのは本当に楽しくもあります。

これまでのジャガイモンプロジェクトの活動を経て、以前より存じ上げているお客様も非常に多く、そんなみなさんが交流の前後にこちらにも声をかけていってくださったり、貰ったばかりのサインやメッセージを見せてくださったりと、いつも私自身も一緒に楽しませていただいています。


またこの回の握手会終盤にはマイクを持っている 納谷 さん から突然、「 ジャガイモンさんご指名です! 」 という声がかかりました。

遠方からいらした、元々ジャガイモンを知っていてくださった方がわざわざこのタイミングで声をかけてくださり、これもまた非常に嬉しいものでした。
この方以外にもこの握手会の中でも私を私だと分かって声をかけてくださる方が非常に多く、その1回1回がとても嬉しいものでしたし、その1つ1つが御縁であり、そして何物にも代えがたい喜びでもありました。


サイン握手会は予定時間にして40分。
次の公演に向けた準備等もあるためにそれほど延長するとこもできません。

終演後の物販や、交流の新規受付を時間を追いながら終わらせていき、握手会自体もだいたい時間通りに終了。

ご自身の交流が終わった後もそのまま客席に残って最後までそんな様子を見守ってくださる方も毎回いらっしゃいますが、そんな方に対して 納谷 さん が最後にマイクで一言、「 はい、じゃ大至急帰ってください 」 と。
これ、言う人が言ったら大問題ですが、そこはさすがの 納谷 さん です。
イベント中からマイクでしっかりとその場を温め、自分自身の流れを作っているために、みなさんが笑いで受け止めてくださいます。

こういうのを毎回見るたびに、「 いやぁ、やっぱり関西人ってすごいな 」 ( 納谷さんは和歌山出身です) と思ったりもします。

ですが、このマイクパフォーマンス ( !? ) が終わった後の 納谷 さん はいつも舞台裏でグッタリゲッソリしています。
イベントの流れの中で時々他のスタッフや私がマイクを持つこともあったりしますが、そのほとんどを担っている 納谷 さん 、相当疲れる様子です。
来年からはもう少しこちらで負担をしなければならないなと、ちょっと思っています。


   


この日1回目の星組の公演が終わってからは、18時の月組の公演まではまだ少し時間が空きます。

会場から全てお客様が出られてからは一旦キャストが全員舞台に集められ、納谷 さん から直前の舞台のちょっとしたダメ出しや次に向けた注意などが行なわれます。

これが終われば次の集合時間が伝えられ、ここで一旦解散。
しばしの休憩に入ります。

楽屋からは楽しそうに談笑する声が聞こえ、用意された弁当や差し入れを食べる子、コンビニに買い物に行く子、我々スタッフと話をしに来る子 ・・・ 。
みんなそれぞれでの時間を過ごしていますが、それぞれがみんな楽しそうで、ここまでの疲れも感じさせない様子が伝わってきます。

考えてみると、稽古開始から約1ヶ月半。
家族以上に長い時間を共にし、楽しいことや苦しいことも様々共有してきた仲間との時間もあと2日。

この公演が全て終わってしまえばこの26人全員で同じ場所に集まり、みんなで何かをするということはもう二度どないはずです。

最初のうちはそんなこともあまり考えなかったことでしょうが、その最後の瞬間、最後の日が見えてくるにつれ、やはりそれぞれに淋しさのようなものが押し寄せてきているという話を、複数のキャストの口から聞きました。

この淋しさ、” ロス ” というのは、今年の公演に限らず、昨年も一昨年も耳にしてきました。

公演が終わった次の日から周りの環境や時間の流れが一気に変わり、途端に押し寄せてくる淋しさ。
昨日まで一緒にいた仲間が隣にいない喪失感。

それらは彼女達の心を大きく揺さぶり、その度に、「 もっと色んなことをしたかった 」 「 もっと話をしておけばよかった 」 というような想いに襲われるそうです。


そんな中でも今年の ” ダンスラインロス ” というのは、例年のそれよりもずっと早く、小屋入り前後、もしくはそれよりも前から彼女達を襲ったようです。

きっとこれはこの座組に昨年一昨年の舞台の経験者が多数いることも影響しているのではないかと思います。
その時に感じた ” ロス ” を補うことも、そしてそれを埋めることも今年はできないのでしょうが、それでもそこから得た経験を今年に活かすことはできるでしょう。

あの時の後悔を後悔のまま終わらせたくない、同じことを繰り返したくないという気持ちが、自然とやがてやってくる座組の解散を早い時点から淋しく思い、そして後悔しないような過ごし方をしようとする想いが、早い時点での ” ロス ” を引き起こしているのだ取ろうとも感じました。


また一方で、この ” ロス ” というのは、強ければ強いほど大きければ大きいほど、そのもの自体が充実していて、そして固い絆で結ばれていたという何よりの証拠にもなると思います。

今年の座組全体を見ていても本当に仲の良さを感じましたし、何とも言えない良い雰囲気を感じました。

年齢もキャリアも、置かれた状況も普段の活動もバラバラの26人です。
そして人見知りの子がとても多い座組でもありました。

ですがその中にも雰囲気をうまく作ってくれる子がいたり、優しく見守ってくれる子がいたり、自然と引っ張っていってくれる子がいたりと、絶妙なバランスはあったようです。

だからこそそんな彼女達から、” ダンスラインロス ” の話を例年よりもずっと早い段階で聞いた時、私は今年のこの座組の本当に素晴らしさを改めて認識し、そしてそんな1つのグループをまとめてくださっているスタッフのみなさんへの感謝の気持ちも強くなりました。


   


夜の月組公演は18時から。

ここに向けて舞台裏では各キャストがそれぞれの準備に次第に入っていきます。

メイクや髪形を担当スタッフに直してもらう子。
台本に目を落として集中してるいる子。
ずっと何かを食べている子。

舞台上で準備運動をしている子もいれば、体を伸ばしてつかの間の休息を取っている子もいます。
また、数人で1シーンの台詞や動きの再確認をしている子達もいれば、リラックスして楽しそうにキャッキャとしている子もいます。

そんなところにそれぞれの子の飾らない個性が見えたりもしますが、ここには正解や不正解はないと思います。

どんなものにもそれぞれの準備があり、それぞれの取り組み方があり、そしてそれぞれの人にそれぞれの最良があります。
ただ我々スタッフは、そんな彼女達を見守り、サポートし、そして支えるだけです。

誰が年上だろうが、誰の役職が凄かろうが、誰が大きな会社の人だろうが関係ありません。
ここでは彼女達全員が主役であり、重要であり、一番優先すべき存在なのです。



一方、夜の公演に伴う物販は17時開始です。
私を含むスタッフ側では昼と同様にそれに向けた準備を行います。

そんな準備作業をしながらスタッフ同士で交流するのも私は実は本当に楽しい時間だったりもします。
この現場はイレブンナインのスタッフはかりでなく、外部からも多くのスタッフがお手伝いに来てくださっています。

そこには受付周りのプロフェッショナルもいれば、客入れの達人もいます。
本来ほとんどの人が役者だったりするのですが、このような公演がある際には集まって来てくださいます。

東京や他の地域ではどのようにしてこのような形の公演が行なわれているのかは直接見たことはないですが、札幌ではこのようにしてお互いの支え合いがあって公演が、そして興行が成り立っています。


私はそんなみなさんから、特に初めてお会いする方やここまでにお話をしたことがあまりなかった方からは、「 マネージャーさんなのに、どうしてスタッフの仕事してるの? 」 という趣旨のことを聞かれることがよくあります。
確かに事情を知らない方にとってみれば私は、ジャガイモンプロジェクトは公演にタレントを出演させているマネージャーでありプロダクションだと思います。

ですが、このアリスイン札幌の現場では私はその立場は一度横に置き、他の現場のスタッフと一緒に作業をしています。
他のマネージャーさんや各事務所の方でも現場でのお手伝いをしてくださっている方はいらっしゃいますが、私はそれよりも更に積極的に現場スタッフとして動いているため、事情を知らない方にとっては普通の1人のスタッフだと思っている方も、現場レベルでもいるのではないかと思います。


アリスインプロジェクト札幌公演の初年度。
私はこの現場に主に取材スタッフとして入りました。

元々 アリスインプロジェクト さん と御縁があったこともあり、広報活動的なこともさせていただきつつ、その一環として他の誰とも違う立場で現場にいました。
そしてその年もやはり、わずかながらにスタッフのみなさんのお手伝い程度のことをさせていただいたのを覚えています。

昨年のアリスイン札幌2年目からは所属タレントをキャストに起用もしていただきました。
立場としてはタレントプロダクションですが、それ以前に一兵卒であり、この公演をどんなことをしてでも支えたいという気持ちは変わりません。

また、他の方と違って私はこの公演の稽古期間から、実際に公演が始まってからも、多くの日数を現場入りすることはできません。
だからこそ現場入りできるこの少ないチャンスは何事にも最大限に活かそうと思っていますし、スタッフとしてもなるべく多くのことをサポートしようとしています。

幸い、ジャガイモンプロジェクトのこれまでの様々な活動の中でそんなノウハウは確実に自分の中に蓄積されています。
そんなこともあって現場に入るたびに、「 これをやってほしい 」 「 こんなこともできるかな 」 「 こっちも手伝って 」 「 これ、どうしたらいいと思う? 」 などと色々と声をかけていただけるのは非常に嬉しくもあり、どんなことであっても頼りにしていただけるというのは心からの喜びでもあります。

また実際、現場のスタッフとしてはこの場で育てていただいている部分も多分にあると思いますし、またそれをこの現場にお返ししているという事実もあると思います。

去年から引き続き、一緒に表方のスタッフとして会場外でのお客様のご案内をさせていただいている 菊地 クン などはまだまだやはり色々な部分で至らないところもあったりしますが、私の経験を持ってそういう彼を育成していくことも可能だと思いますし、結果的に色々な観点からプラスの方向に働くのであれば、私はこの現場では何でもやりたい、やらせていただきたいと思ってもいます。

そこには自分のところのタレントがいるからどうだとか、そういうものは一切関係ありません。
少しでもこの現場に貢献できることが大切です。



この日の夜の回、18時からの公演に向けての物販もやはり、昼の公演同様にたくさんの方にご利用いただき、そしてグッズもどんどんと売れていきます。
人気商品ともなると品切れになってしまったものもあり、ポートレートや写真セットに関してはこの日の昼公演が終わってからも更に重版もかけられたりもしました。

Tシャツに関しては急遽追加生産するというわけにはいかないため、色とサイズによってはそろそろ販売終了ものも出てきます。

またこういう時、慣れた方ともなるとポートレートなどが折れ曲がってしまわないように、ケースやバインダーなどを持参される方も少なくありません。
私自身も出張やこういう機会には必ずカバンの中にA4サイズが入るケースを入れており、随分と重宝しています。


   


開場10分前には昼と同様に入口前にチケットの種類別に整列していただきます。

今回もまずは 菊地 クン にお客様への説明をしてもらい、そのあと私が補足説明をします。
私が最初からやってしまえばそれで済んでしまいますが、現場としてはやはり彼を育てることも大切です。

ここに限らず全ての場合においてそうですが、当然お客様に対してはわかりやすい方法でご案内しなければなりませんし、説明後も続々とやってくる方達のためにも、同じ言葉を何度か繰り返すことも必要です。

また、「 何かご不明点などありましたら、こちらでお伺いします 」 と言いながら少しウロウロすることによってそういう方の不安点を解消するようにもしていますし、何か迷ってる雰囲気で立っている方に対してはこちらから声がけをさせていただきます。

とにかく、ここでは不安や不満を感じずに、気持ち良くとは言わずともごくごく普通に過ごしていただくことが大切です。



開場は17時30分。
外は少し涼しい風が吹いており、そんな中で並んでいただいているお客様には少しでも迅速に会場内に入っていただくことも必要でしょう。

ここはそういう部分での声がけもしながらお客様を順次ご案内していきます。


正直、最近こういった類のご案内に関しては私自身だいぶ慣れてきた感があるのですが、だからといってそれが慢心に変わってしまってはいけないとも思っています。

相手があるものは特に、いつでもイレギュラーなことが発生する可能性があるわけで、そういう意味でも絶対に油断なんてできません。

例えば相手が100人いて、その中で1人に対してのご案内が失敗したのだとすると、結果的に自分から見ると失敗率は1%なのでしょうが、その相手の方にとっては1回のうちの1回で100%です。
自分の側から見てたった1%の失敗だからいいんだということは絶対に言えません。

理想としては常に100%を目指さなければならないと思いますし、そうであって初めて全てのお客様に快適に過ごしていただけるのだとも思います。

自分自身で全てをやってしまうのもいいですが、ここは周りの人ともうまく連携しつつ、そして若手の子には育ってもらいながら。
お客様に、「 アリスインプロジェクトの案内はいいよね 」 とプラス査定していただければ嬉しいですが、そうではなくても、気持ちのいい現場づくりを目指してこれからもやっていきたいと思っています。


   


18時の開演直前には私もまた客席へと向かいます。

場内では 金澤有希 さん の声による上演中の注意事項や説明の音声が流れています。

また待ち時間には、過去のアリスイン札幌の舞台で使用した楽曲や、アリスイン東京で使用された曲がかけられており、耳に憶えのある曲が流れてくるとあの時の記憶も蘇ってきます。

アリスインプロジェクトの舞台で使用される楽曲には、そのそれぞれの舞台を観た人達の記憶がしっかりとリンクして思い出になっています。
曲を聴くとあの舞台の鮮烈な場面や感動的なシーンが目の前に浮かんできます。

それは私ばかりでなくいつも同じような話をあちらこちらで聞きますし、今回もまた、「 ○○の曲が流れていて、あの時の○○を思い出した 」 という話を何度となく聞きました。

きっと今年の舞台で使用した楽曲も、来年のこの場所ではそのようにしてまた再びみなさんの耳に届くのだと思います。
これもまた、アリスイン札幌の歴史の積み重ねであり、お客様と一緒に作っていく思い出なんだとも思います。

来年もまたこの場所で、「 去年のダンスラインの曲を聴いて、○○のシーンがよみがえった 」 という思い出話をできるのが今から楽しみです。



今年の作品でも印象的な場面や演出はたくさんありましたが、そんな中でもこの楽曲を使ったシーンはみなさんの心に強く残ったのではないでしょうか。

中身について具体的に触れることはしませんが、私は上演が始まってから直後に楽曲が使われ、そしてキャストが横一列に並ぶシーン、そして後ろのスクリーンにその1人1人の名前が映し出されるシーンですでにいつも最初の感動を体感します。

特にキャストが一列に並ぶシーンなどは普通に観ていたら何ともないシーンなのかもしれませんが、私はその彼女達の表情を観るだけで泣けてきます。
オーディションを経て多くの候補者の中から選ばれ、長い稽古期間を一生懸命に乗り切り、そして今ここにその集大成がある。
彼女達の表情やその視線からはそんなたくさんのものが見えてくるようで、そんなことを考えながら観ていると私の心は大いに揺さぶられます。


また、上演直後という共通点としては、金澤有希 さん の目力が本当に印象的です。
冒頭のシーンで真っすぐに前を見据えるあの目 ・・・ 。

そのあたりに関してはまたレポート後半で書きたいと思います。



今年の作品はこれまで以上にアドリブであったり、それぞれに自由が与えられたシーンや台詞、そしてポイントが多い作品だったと思います。

中でもダンス部員が椅子を並べてダンスの練習を始めるシーンは毎回かなりの部分で違いがあったと思います。
観ている側からも、そこにはかなりの ” 素 ” を感じましたし、それぞれの ” 素 ” が見えるからこそ面白い場面になったのではないかとも思います。

毎回違ったアドリブが用意されていたシーンもありましたし、客席側に語りかけるような場面もありました。
面白おかしい動きや表情が盛り込まれたシーンもたくさんありました。

それらに対してはちょっとしたタイミングのズレからお客様の反応が凄く薄かったり、逆に大爆笑を誘ったりと、全てがキャスト側、演出側の思い通りにならない部分もあったりしたでしょうが、時にはそんなスベった空気感が面白かったりもします。

他にも靴が脱げてしまったり、台から落ちてしまったり、階段からずり落ちたりと、色々なハプニングがありましたが、それも全ては失敗ではなく物語の中の1つの出来事であって、それぞれが ” 色 ” だったと思います。

1回だけ観るのであればそんなポイントも他との違いもわからないかもしれませんが、複数回観ることによって気が付くものもあるでしょうし、複数回観る方にとっては全てがコピー機で複製したようなものでは面白くはありません。

ダブルキャストという意味での出演者そのものの違いもありますが、このようなちょっとしたハプニングやズレからくるものというのは次にわざとやろうと思ってもなかなかできるものではなく、場合によってはそういうものがあったからこそより味わいのある作品になるということも多々あります。

今回の作品も良い意味でそんな ” 味 ” の溢れた作品だったと思います。



アリスインプロジェクトの舞台を観ている私は、その度にいつも泣いています。

今回の作品に限っても、事前に台本にも目を通していますし、稽古場での稽古も見ています。
だから物語の内容は本番前にすでにしっかりと把握しています。

本番が始まってからも複数回観劇します。
それでも毎回観るたびに感動して泣けてきます。

きっとその感動は物語そのものの内容にもよるものだとは思いますが、それ以外にも彼女達のここまでの頑張っている姿やその様子を知ってるいからこそなんだとも思います。
スタッフとして実際に公演が始まるよりも、そして稽古が始まるよりもずっと前からこの公演に向けて動き出し、様々なものに触れています。

公演そのものに限らず、各種資料やグッズなどの準備もあります。
事前イベントなどの開催もあります。

そうなってくるとやはりこの公演そのものに対しての想いは当然強くなりますし、彼女達に対しての想いも大きくなります。
もうこれは全てに対しての親心のような感覚にも近い、そんな心境です。

だからこそ、目の前でそんな彼女達が躍動し、そしてここまでの成果をたくさんの方の前で披露している様子というのは、私だけではないでしょうが、少なくとも私には大きな大きな感動なのです。


回ごとに序盤から始まるその感動は終盤に向かって更に増し、終わる頃には号泣に近い時もあるのは、時々関係者に見つかって笑われてしまったりもするのですが、だからといって無理に感情を押し殺したり、何かを隠したりする必要なんて全くないとも思っています。

昨年などは号泣したまま終演後の握手会に突入してしまい、涙が止まらないままにスタッフとしてお客様を案内する事態となったことで、複数のお客様に励まされたのを覚えています。

今年は終演後のダブルカーテンコールの後は、岩杉夏 さん のご案内に始まって 金澤有希 さん の挨拶で締めるという流れがあったため、その間に涙を抑えることこそできましたが、それでもやはり目を赤くしているところを何人かの方には気が付かれてしまったようです。



終演後は昼の回と同様に、最初は 金澤 さん の無料ハイタッチ会が行なわれます。
まずは 金澤 さん からみなさんに対して挨拶があり、すぐにハイタッチのスタートです。

舞台の上から見ているとハイタッチを求めて壇上に上がる入口に向かって来る方々流れと、あくまでも舞台の作品そのものを観るのが目的で、すぐに出口へと向かわれる方の流れがあります。

これにはどちらが正解でどちらが不正解というようなことは全くないと思います。
1つの同じ舞台であっても、そこには観る人それぞれの観劇の方法もあれば想いもあります。

ハイタッチに参加する方からしてみると、「 無料なんだから参加すればいいのに、もったいない 」 という話も出ていたのを聞きましたが、やはりそこも人それぞれ。

このハイタッチ会に参加しなかった方からは、「 ハイタッチしに行っても何を話していいかわからないし、恥ずかしいから 」 というお話を伺うこともできたのですが、やはりそういうご意見もあって当然だと思います。

今回に限らず、アイドルとの交流会や握手会などは、一度参加してしまえばそのハードルというのは低くもなり、中身がどんなものかもわかると思うのですが、そういうものを未体験の方にとってはなかなかハードルも高く、やはり何を話せばいいのかわからないということになってしまうとも思います。
私もこういうものに初めて参加した時にはとても戸惑ったのを覚えています。

「 いやいや、なんでもいいんだよ 」 「 ハイタッチだから何も話さなくてもいいし 」 「 おつかれーでも、こんにちはーでもいいよ 」
そういうのはやはりすでに参加したことのある側からの意見です。


スタッフ側の人間として、積極的に参加をされない方に対して、「 もったいない 」 とは言いませんが、それでもやはり、「 せっかくですからご遠慮なさらずにどうぞ 」 という声掛けは何度かさせていただきました。
それによって参加をしていただけた方もいらっしゃいましたし、そうならなかった方もいました。

ただこの場合、事前に我々スタッフ側の出来ることとして、今回であればこの壇上にいる 金澤 さん が苫小牧出身だとか、普段はこういう活動をしている人だとか、何歳だよとか、ごくごく簡素な情報であっても提供できる体制ができていれば、それもまた話のきっかけを作ることにもなったのではないかと思いました。

有料のパンフレットには色々と書かれていることもあります。
ですが、入場時にはこの舞台のアンケート用紙や握手会のご案内に併せて、他の公演舞台のフライヤーなども多数配布させていただいてるため、その中にそういった情報を記載したものがもう1枚あってもいいなとも思います。

それでもやはりハイタッチや握手会は、初めての方にはハードルは高いです。
ですが、我々スタッフ側にはそのきっかけを提供させていただくことは可能なのだと思いますし、物事というのはちょっとしたきっかけで変わっていくものです。


一昨年、アリスインプロジェクトの公演が初めて札幌で行なわれた年。
キャスト側でも普段役者として活動をしている人にとっては握手会という催しは初めての体験だというキャストが何人もおり、会場にいらしたお客様にも同様に初めての体験だったという方の割合が当然今よりも高かったです。

一方で普段からアイドルのイベントに行く機会のある方にとってはこのような形のイベントは珍しいものではなく、その年はそういうお客様が先陣を切る形で握手会が盛り上がり、そして次第に参加される方の人数も増えていったと記憶しています。

これもたくさんの方にとっての1つのきっかけだったのではないかと思います。


また、今年参加いただいたお客様の中には小さな女の子の姿もありました。

私がこれまでに主催させていただいたり参加させていただくなどした数々のイベントの中では、アイドルを起用するもの、参加しているものが少なくないですが、そんな中で目の前で初めてキラキラしたアイドルを見た女の子が、「 私もアイドルになりたい 」 と一緒に来ていたお母さんに伝えたという話を聞いたことがあります。
また、親子で私のところに来ていただいて、「 どうやったらアイドルになれますか? 」 と聞きに来られる方もいました。

そんな出来事や出会いもまた1つのきっかけだと思います。

” きっかけ ” なんて世の中にたくさん溢れていると思います。

ただそれを受け止める側がどう受け止め、そしてどう気が付くか。
どう考えて、時にどう活かしていくか。

そこに違いが出るのだと思います。


今回この舞台に出演していたキャストにとってもそうだと思います。
どうしてアイドルを目指したのか、役者を目指したのか、タレントになったのか、歌を歌っているのか。

そこには間違いなくそれぞれのきっかけがあり、そして歩いてきたそれぞれの道があるのだと思います。

今回のオーディションを受けたのもそこにはやはりきっかけや運命のようなものがあったのかもしれませんし、だからこそこうして今、本当に素敵だとお互いに思える仲間に出会い、そして一緒に1つのものを作っているのだと思います。


ここまで来て、改めて辞書で ” きっかけ ” という言葉を調べてみると、そこには、「 物事を始めるはずみ(となるもの)。機会や動機や手がかり 」 と書かれていました。

考え方によってはすごく曖昧な言葉なのかもしれませんし、具体的なものではないのかもしれません。

ですが私はそんな自分自身の ” きっかけ ” を大事にしたいと思いますし、誰かの ” きっかけ ” を作れるというのはとても素敵なことだとも思います。

話がどんどん逸れていっていますが、とにかく来年同じような機会があれば、決して無理強いはしませんが、誰かのきっかけになるような何かを仕掛けることができるのも我々スタッフ側の人間なのかなと思います。



金澤 さん のハイタッチ会は、希望の方全員とのハイタッチを終えてから、最後に 金澤 さん から挨拶があって終了です。

ここでの 金澤 さん の挨拶には、地元北海道で舞台立てていることへの喜び、そしてたくさんの方への感謝の気持ちが本当にこもっており、横で聞いていてもちょっと心震えるものがあります。

私自身、金澤 さん とはこの舞台以前に全く違う機会でお会いしたこともありますし、以前に北海道や東京で一緒に活動されていた方々とお仕事をさせていただいたこともありますし、東京に羽ばたいてからの活動についても色々と学ばせていただきました。

また、そんなファンのみなさんと交流をさせていただくこともありますし、彼女がここ最近までリーダーを務めていたグループで起こった辛い出来事もわかっているつもりです。

そういうことをある程度理解した上で聞く 金澤 さん の挨拶は、心にグッとくるものもありますし、様々な想いを感じるものでもありました。
また泣きそうになりました。



続いては 金澤 さん 以外のキャストのサイン握手会です。
我々スタッフで、舞台上のレイアウトを変更し、キャストの呼び入れが完了した時点から早速スタートです。

このあたりになってくるとすでに会場内でのルールを把握されているお客様も多くなってきており、こちらからご案内をするまでもなく舞台に上がる入口に続く階段には早くも行列ができていました。


握手会中、舞台の上はものすごく暑いです。
1人約1分の交流という形で進行させていただく中、各キャストの前には長い列ができる場合もあります。

我々スタッフはみんな大汗をかきながらイベントを進めていきますが、同じようにお客様も汗をかきながらもそんな列に整然と並んでくださっています。

舞台の上ではキャストとお客様はテープル1つを挟むだけで、更にスタッフの数も最低限。

正直なところ、悪い人が悪いことを考えれば十分に実行可能な環境だと思います。
ですがこの3年で大きな問題は何1つ起こっていません。

これは全てのお客様の良心と優しさや愛情に支えられてこそ成り立つものです。

そして逆に何か1つ問題が起こってしまえば、もうこの状態での握手会、イベントというのは成り立たなくなってしまうとも思います。
そういう意味でも改めてお客様のご協力には感謝の気持ちでいっぱいになります。



またこのようなイベントは、提供する運営側もただイベントを粛々と進めるだけでなく、お客様の気持ちをちゃんと理解できる運営、そして進め方ができることが大切だと思います。

そんなことを考えながら実際に握手会が進む舞台の上で周りを見回してみると、「 ここにいるスタッフの中で、こんな感じの握手会に参加したことのある人っているのだろうか 」 という不安や疑問がよぎったりもします。

私自身は、ジャガイモンプロジェクトの普段の活動の中やまた個人としての経験でも、このような形のイベントに参加したことは何度となくありますし、札幌でのアリスインプロジェクトの初年度には他のお客様と同様に参加券を握りしめて一緒にその列に並んだりしたこともあります。

また、実際に握手会に参加した方が私に色々と教えてくださることもたくさんあります。

それはこの場に限らず以前から様々な形でお付き合いのある方も多く、そんなこともあって私には伝えやすいという部分もあるのだと思います。
そして私にとってはそんなご意見をたくさん寄せていただけるというのは、それが良いご意見であれ厳しいご意見であれありがたいことです。

これまでにもその場だけではなく、後日SNSなどを通じて伝えていただけることや、別の機会にお会いした際に教えていだけることも過去にも多々ありました。


並んで待っている時や参加後などに感じる気持ちというのは実際に自分が参加してみないと分からない部分があると思いますし、参加したことによって見えてくるものというのもきっとあると思います。

参加いただける方にとって気持ちのいい、そしてストレスのないイベントを作っていくにはやはり、お客様がどういうことを考え、そして望んでいるのかということをスタッフ側がしっかり理解しているのが理想的です。

この現場においてお客様のご希望の全てを叶えることは不可能でしょうが、それでも可能な限りそれに近づけることはできるでしょうし、その努力はきっと相手にも届くのだろうと、両方の立場を経験している私はそう思います。

お客様がこの握手会の進行に色々とご協力をいただいているのですから、我々の側ももっと何かできるはず。
自分自身でそこに天井を決めてしまわず、上を見上げ、そして周りを見回すことは、きっと相手のためにも、巡りめぐって自分のためにもなるのだと思います。



この回の握手会もたくさんのお客様に参加いただき、舞台の上は大盛況。

時に我々スタッフのいる場所がないほどに人で溢れ、私も他のスタッフも何度も舞台の上から降りてそんな様子を下から見守るような瞬間もありました。

握手会も最初の方はバタバタしていてなかなかそういうことも出来ませんが、終盤になってお客様も舞台に残ってるいキャストも人数が減ってくると、マイクで進行をしている 納谷 さん は突然キャストにマイクを渡し、お礼のコメントを求めることが何度もありました。

キャストの方も事前にここでのコメントを用意しているわけもなく、そういう時にこそそれぞれの本来の姿を垣間見ることも出来て、これはこれでとても面白いものです。

また、一度お礼の挨拶をして後ろに下がったのに、直後にまたお客様に呼ばれて戻ってくるキャストもいたりします。

呼び戻される時にも 納谷 さん が、「 何か食べながら出てくるんじゃないだろうか 」 とか、「 面白いことをしながら出てきてくれるはず 」 と、少しハードルを上げたりします。

するとそんなフリをされた子は、舞台裏からシュークリームを食べながら出てきたり、お弁当を持ってきたりと色々と楽しいことをやってくれます。

横山奈央 さん に至っては、私が差し入れで持ってきた士幌の生産者還元用ポテトチップスを持って、食べながら出てきました。
このあたり、” できる子 ” です。


このマイクでの進行は、タイミングによっては他のスタッフや私が一時的に変わることもあったりするのですが、やはり 納谷 さん の面白い進行はなかなか真似できません。

これは 納谷 さん が関西の土壌で埋まれ育ったという環境もあるでしょうが、それ以上にここまでの稽古期間、彼女達と一緒に過ごし、そして共に苦労してきた中で培ったかけがえのない時間と信頼関係があってこそだとも思います。


   


この回の握手会もほぼ定刻時間で終了です。

参加券を手に入れるための物販は開演前にも行なわれていますが、終演後に握手会が始まってからも更に買い足して参加券を入手される方も本当にたくさんいらっしゃいます。

その1つ1つ、1回1回は確実にお金もかかるものですし、その積み重ねというのはなかなかなものです。

ですが私も参加するみなさんの立場に立って考えると、その気持ちというのは痛いほどにわかります。

舞台を観ている中で、「 あの子もかわいいなぁ、魅力的だなぁ 」 と感じることというのは間違いなくあるでしょう。
握手会の中で誰かの列に並んでいて、その時に別の列の先にいる子の姿を見ることだってあると思います。
誰かのところに一度行ってみたけれど、やっぱりまだ話したりないと思うこともあるでししょう。

そんな中で最初の予定よりも多くの参加券が欲しくなることだって当然あるでしょうし、資金的に許される範囲なのであれば、二度とないかもしれないこの機会を逃したくないという気持ちはよくわかります。


舞台へ上がる入口にいるスタッフの手には、いつも束のように参加券が集まってきます。

参加されているお客様の様子や、集まってくる券の枚数を見て、アリスイン札幌が始まった頃はそんな状況に慣れないスタッフがその度に驚きを隠さずにいましたが、それも今ではそんな状況もこの現場でもお馴染みの光景になりつつあります。

イレブンナインのスタッフのみなさんも、最初の頃はよく、「 世の中にはこんな世界があるんだねぇ 」 と言っていたものでした。
初年度はほとんどのスタッフがそんな状況が初体験で、どこを見ても鳩が豆鉄砲をくらったような表情をした、あっ気にとられているスタッフが並んでいた光景は今でも忘れられません。

一連の握手会が終わってからも、目を見開いて、「 すごい! ホントにすごい!! 」 と連呼していたあのみんなの顔は今でもしっかりと脳裏に焼き付いています。

3年目ともなるとそういう意味ではスタッフ側も多少は慣れてしまった部分もあるかもしれませんが、それでもやはり原点を振り返って、そんなお客様1人1人の行動、そして想いは決して当たり前のことではないんだということをしっかりと認識しなければならないなと、改めて思った今回でもありました。



握手会終了後は、最後まで会場に残って見守っていただいたお客様も迅速に退出いただき、これで公演4日目、この日の日程はひとまず終了です。

本来であればここで一旦全キャストが舞台に集まり、納谷 さん からのダメ出しや、スタッフからの連絡事項が伝えられて解散となります。

また我々スタッフも、会場のレイアウトを元通りに戻し、表側に設置した受付や物販の関連のものを全て会場内に入れるなどしてだいたいの作業は終わりとなります。


が、今年はここから少しイレギュラーな予定が入っていました。

千穐楽を明日に控え、ここで全キャストと一部スタッフで ” プチ打ち上げ ” を行ないました。
その理由や詳細に関してはここでは触れません。

全てが終わった後に行なうのが普通の打ち上げを、” プチ ” として前日に行なったことに関しては、ファンのみなさんの中でも察しのいい方はその理由に気が付かれる方もいるのではないかと思います。
ですが私からここでそれを披露することは必要ないと思いますので控えます。

翌日に千穐楽を控えていることもあり、また時間的なこともあって約30分程度だったでしょうか。
それほど長くもなくあっという間に終わった ” プチ打ち上げ ” でしたが、それでもそこにいた全員の心にしっかりと残るものでした。


3月中旬に稽古が始まってからここまでで44日目。
26人のガールズ達のこの春最大の出来事も、ついにあと1日で終わりを迎えます。





4月29日(公演最終日)

前日よりも更に晴れ渡った札幌の空は彼女達の集大成を祝ってくれているかのようでした。

26人のガールズ達の45日目。
嬉しいことも楽しいことも、悔しいことも辛いことも共有し、時にみんなで笑い、時に涙を流し、みんなでその先にある1つのものに向かって突き進んだ日々も、ついにこの日で終わりを迎えます。

指折り数えて迎えた本番初日。
始まってしまえばあっという間に過ぎ去っていった前日までの4日間6公演。

全ては色々な数字で表すことができ、そしてその1つ1つに彼女達の色々なものが詰め込まれています。

ですが、そんな数字ももう明日からは新しいものへと書き換えられることはありません。
一緒にいることが当たり前だった仲間達との日々もこの日の2公演が終わってしまえば終了です。

そしてきっとこの先も、この26人全員で集合できることはおそらく二度とないでしょう。

日々開いては閉じ、閉じては開いた台本。
ここに自分で新しい何かを書き加えることももうないでしょうし、これ以上ボロボロになっていくこともないでしょう。

あの稽古場で全員で準備運動をすることももう二度とないはずです。

ここまで過ごしてきた44日間に、そして今の自分に後悔はないか。
この座組や仲間に対して思い残すことはないか。

そしてここまで培った全ての集大成として。
26人のガールズ達の、最後の1日が始まります。


   


千穐楽の2回の公演は開演時間が前日よりも共に1時間早く、昼の月組公演が12時から、夜の星組公演が17時から。

もう待ったなしでやってくるこの最後の2回の公演に向け、朝からスタッフ ・ キャストがコンカリーニョに集まってきます。


千穐楽の朝は毎年、私は同じような行動をとっています。
舞台裏には劇場入りしてくる人全員が必ず通る場所があるのですが、そこからしばらく動かずに、次々とやってくるキャストのみなさんを待っているのです。

実はこれがジャガイモンプロジェクトにとってはとても大切な行動だったりもします。

ジャガイモンプロジェクトが全ての活動の中で最も大切にしているのは ” 御縁 ” です。
この公演を介して出会ったみなさん、そして再会したみなさんともそんな御縁がそれぞれあります。

そんな御縁を大切にする活動の一環としての行動が今から始まります。


私は今年も昨年に引き続き、タレントプロダクションとしての立場と同時に、1人のスタッフとしてもそうですが、1人の取材者としての立場も持ってこの場所にいます。

そんな中でこの公演に関わる全てのことが始まってからここまでの期間、実際に現場に入っている期間は、キャストのオーディション、チケット販売イベント、稽古場での取材、そしてこの公演本番最後の2日間と、それほど多いわけではありません。

情報の発信や事務的作業の中では彼女達の情報にも多く触れ、そしてスタッフ同士でも様々なやり取りを重ねるなどはしているのですが、実際に顔と顔を合わせている時間というのは限られています。

その限られた時間の中でも相手が少人数であれば単純な割り算で考えたとしても1人1人とも確実に直接やり取りをすることは可能でしょう。
ですが、今回のように人数が多い現場ではそれもなかなか叶いません。


劇場入りの朝の時間帯はキャストが大人数で一緒に行動することなく、バラバラに動くことが多いです。
そこでこんな時間を利用して、各キャストのみなさんとも少しずつにはなりますがお話をするようにしています。

こういうチャンス、機会に一言も交わさず、ただお互いの存在だけを感じるだけで1つの現場を終えてしまうのと、たとえ一言だけでも言葉を直接交わして現場を終えるのとでは、次に与える影響というのは大きく変わってくると思います。

実際、昨年一昨年のこのアリスイン札幌の現場で初めてお会いした方でもその後交流は続いている方は非常に多いですし、ここでの出会い、御縁がきっかけとなって新しい取り組みへと繋がったことも何度もあります。

1度の出会いも1つの御縁も、全ては ” 点 ” ではなく、” 線 ” で繋がっているのです。

その実例は、普段のジャガイモンプロジェクトの活動を見守っていただいている方にはよくご存じいただいている部分だとも思います。

今回初めてお会いしたキャストの方でも、この千穐楽を前にすでに何度となくお話をさせていただいたり交流をしている方はいますが、改めてこの日は改めて朝から夜までかけて1人1人と多かれ少なかれ、” 点 ” を今後に繋がる ” 線 ” へと育てる活動はできたと思います。

ただし、あくまで本来の目的である公演自体や、その準備の邪魔にはならないことを大前提に置いていますので、そのあたりはご心配なく。


    


12時からの公演に向け、この日は早い時間から 金澤有希 さん塚本奈緒美 さん の2人だけが舞台に呼ばれてのある準備が行なわれました。

納谷 さん がすでにツイッターでそれについて触れていますので、ここでも紹介させていただいて問題ないと思いますが、実は千穐楽に来て、ラストに近い1シーンが大きく引き伸ばされ、そこに2人の台詞や動きが加えられたのです。

そしてここでは直前に渡されたその台詞に対して実際に舞台上で動きを交えての最初で最後の確認が行なわれたのでした。

私もそんな様子をすぐ近くから見ていたのですが、最初は2人共に台詞が書かれたものを見ながらの確認でしたが、それもすぐに横に置かれ、あっという間に1つのシーンが出来上がっていく様は本当に見事なものでした。

千穐楽の公演だけを観劇された方には前日までとのその違いは判らないはずですが、前日までも含めて複数回観劇された方にとってはそんな違いも楽しんでいただけだのではないかと思います。


この様子を確認した 納谷 さん のツイッターには次のようなことが書かれていました。




前日までの、前回までの違いという点では、このシーンに限らず、そしてこのタイミングに限らず公演中も常に変化をしていった部分が多数あったと思います。

自らを ” 演技オタク ” と称する納谷 さん の演出は、本当に細部にまで渡ります。

稽古や本番を経て一度作り上げたシーンや台詞であっても、その実際のものを目の前にした時に更なる高みを目指して変更が加えられることがよくあります。

それはお芝居寄りの泣かせるシーンも、笑いを取ろうとする場所も、次のシーンに繋がるための演出でもどんなところであっても、そして誰に対してでも可能性があります。

1つの作品を作るにあたって、稽古場で作り上げられたものが完成形なのではなく、小屋入りしてからも、そして本番が始まってからもその探求は続けられます。

他の方が手掛けるお芝居はどのような形で作り上げられ、そして最後まで走っていくのか、私はほとんど知りません。
ですが知る限り、納谷 さん の演出や創作というのは最後の瞬間まで妥協や油断や慣れを許さず、例えそれが長い公演の残り1回になったとしても続けられています。

だからこそ、観ている側にとってもその1回1回というのは違っていますし、観れば見るほどに楽しむこともできるものなんだとも思います。


またその変化は、出演しているキャストが本番での回数を重ねるごとにその場で成長していくということも作用していると思います。

昨年一昨年と、納谷 さん は本番直前の小屋入り後にこんなことを言っていました。
「 稽古場での成長率と、本番での成長率が圧倒的に違う 」 と。

そのあたりはやはり、普段から役者、アイドル、タレント、シンガー ・・・ と、様々な形でステージの上に上がっている彼女達にはより顕著な部分があるのだとも思います。

やはり、” 観られ方 ” を知っていて、同時に ” 観せ方 ・ 魅せ方 ” を知ってる子が非常に多いのです。


今年に関しては、納谷 さん は全公演が終わった後で、「 1日目2日目はどうなることかと思ったけれど、途中から一気に精度が上がった 」 と感想を漏らしました。
これもやはり ” 本番での成長率 ” なんだと思います。

そしてこれは、彼女達が頭の中からガチガチにならずにそういう部分での吸収や変化ができる柔らかい部分を持っていたということなんだとも思います。

中にはキャリアを積んだベテランもいますが、そんな人も含めて若手のこれからまだまだ成長するであろうキャストを起用しているアリスインプロジェクトだからこそ、こんな成長も見られ、そしてそれをお客様と共に楽しむことができるのだろうとも思います。


また、本番が始まってから更に成長をするということは、ある意味ではお客様がその成長を促してくださっているという考え方もできると思います。

笑えるところで笑ってくださり、泣けるところで泣いてくださり、そして大きな拍手をくださる。
それは間違いなく全てのキャストの活力になり、元気の源になり、勇気にもなっています。

握手会などでお客様からかけていただける言葉にも大きな力になると思いますし、SNSを通じて伝わるメッセージにも大きなパワーがあります。

そんなお客様1人1人の存在、笑顔、拍手、激励も、全ては彼女達の成長の栄養になっているのだと思います。
そういう意味ではやはり、お客様にも育てていただいていますし、同時にお客様と共に成長していく公演がこのアリスインプロジェクトだとも思います。



また、” 観せ方 ” という観点では今回、キャストによって大きな違いを感じたりもしました。
それは誰が凄いとか巧みだとかそういうものではなく、方向性の違いについてです。

普段からアイドルとして活動している人はやはりどうすればお客様に自分自身を観ていただけるか、アピールできるか、どうすれば伝わるかというのがよくわかっていたり、それがはっきりとわかっていなかったとしても自然とできる人が多いなと感じました。

また一方、役者としての活動が主な人は、舞台の上での役者としての自分自身の観せ方が本当によくわかっているなと実感しました。
その観せ方はアイドルのそれとはまた違い、言葉で表現するのはなかなか難しいですが、違った光り方をしているように感じました。


舞台上では物語の流れの中で様々な人が入り組み、そして色々なシーンを形成していきますが、そんな中でも時に役者として活動している人だけで作られるシーンが巡ってきたり、またアイドルの子だけで進むシーンもあったと思います。

この2つには、どちらが良いとか悪いとかいう優劣の問題ではなく、雰囲気や形として、それぞれに違うものを感じられましたし、それらが交錯することでまた楽しいものが生まれているのではないかと、私は思いました。

それはきっと役者ばかりを集めても、アイドルばかりを集めても、そしてベテランばかりを集めても出てこない雰囲気だと思いますし、形成されないものだとも思います。

元々の知り合いの子ばかりを集めてみても、年齢が近い子ばかりを揃えてみても、経歴が似たような子を並べても、やはりそれは同じだと思います。

アリスインプロジェクトはこれまでの経験や実力ばかりに捉われることなく、幅広いキャリアや年齢層の女の子を集め、普段一緒にやったことがないようなメンバーを揃えることで新しい化学反応が起こる場所だと思っています。


そしてその化学反応というのは座組全体、公演全体にも言えることだと思いますし、キャスト個々人に対しても言えることだと思います。

普段の自分と違う立場や環境、そして自分がやったことのないようなことをやっている人と一緒に何か出来る機会というのは誰にでもあるようなことではありません。
そのチャンスは自分の気持ちの持ちようでは本当にたくさんのことを得られるチャンスでもありますし、大きな刺激を受ける機会でもあると思います。

相手から何かを得ようとする人が集まった時、そしてお互いに刺激を与えあった時、そこには全く新しい形の化学反応が起こりえると思いますし、今回の現場は様にそんな化学反応の連続であり、そしてお互いの刺激で起こった化学反応が、またお互いの力を誘発し合ったのではないかとも思います。



この後も12時の開演に向けた彼女達の準備は進みます。

まだまだ照明も暗い舞台の上でもそれぞれの準備が進んでおり、何人かでラジオ体操を始める子もいれば、入念なストレッチをしている子、音楽を聴きながら集中している子、楽しそうに走り回っている子 ・・・。

他にも客席に1人で座って台本に視線を落として最後の最後まで確認作業を続ける子もいれば、やっぱり舞台裏で何かを食べている子もいます。
気がつけばいつも同じ場所に座って、同じ方法で同じものを食べているある子も気になります。

これはこの日に限ったことではなく、前日も、昨年も一昨年もそうでした。
それぞれの準備やその様子というのは実に興味深く、そして面白いものでもあります。


開場時間前には全キャストが舞台に集められ、最後の確認作業があります。

この時に確認したのはオープニングのダンスだったでしょうか。
とにかく、今日でもう終わってしまうからという油断のようなものはここには一切ありません。


また、納谷 さん が毎年必ず千穐楽が近いタイミングで全員に伝えることがあります。

それは、「 千穐楽だからといって特別なことをするな 」 ということです。

毎公演ごとにアドリブなどで色々なことをやってる流れの中で千穐楽も何かをやるというのであれば、それは ” 千穐楽だから ” というのではない自然な流れだから問題ないとのこと。
ですが、ここまでごくごく普通に来た流れを故意に崩したり突然おかしなことをするのは、それはこの回を観劇される方に対しても失礼だとの考えからです。

他の演劇の現場などでは千穐楽にはっちゃけるのを良しとする現場もあるとのことで、私自身もそれを否定したり間違っているという気は全くありません。
それも含めて演出家や制作側の考え方だと思います。

ですが、少なくとも納谷演出の舞台ではそういうものはありません。
これは 納谷 さん の演出の下ではアリスインプロジェクトに限らないことだと思いますし、今後もきっとその考えというのは変わらないでしょう。

我々スタッフ側にもすでにこのような 納谷 さん の考え方は浸透していますし、納得も理解もしています。

一方、実は私のところには、「 千穐楽なんだから何かやるんでしょ!? 」 「 最後くらい何かやってくれと ○○さん ( 具体的なキャスト名前 ) に伝えてほしい 」 「 最後だから何でも許されるはず 」 というご意見がお客様側から届くことがあります。

これも、私に対して伝えやすいからという意味で捉えるのであれば、それ自体は非常にありがたいことですし、そういうご意見を持ったお客様がいるということもとても参考になるものです。

ですが、これに関しては私の前を通過することなく、全て私の中で黙殺しています。
キャストや他のスタッフに伝えることは全くしていませんし、必要が全くないと感じています。

この公演に対していただくご意見や提案、また時に苦言やアドバイスなどは、必要に応じてスタッフと共有したり協議したり、そして改善に向けて動くことも多々ありますが、これに関しては今後共私から上に上がっていくことはありませんのでどうか了承ください。


   


会場前ではこの日も物販開始時間よりもはるかに早い時間から来場されるお客様の姿が。
そんな中には今回もやはり私の存じ上げている方の顔もたくさんありました。

この日もそんなみなさんと時間の許す限りの交流をさせていただいたりもしました。

また、「 ジャガイモンさんですよね!? 」 「 ジャガイモンプロジェクトの方ですよね!? 」 と多くのお声がけもいただくこともありました。

私はこのようなイベントの際、状況に合わせてスタッフ章を身につけていますが、これ以外にジャガイモンプロジェクトのロゴバッジもつけています。

これを見つけてくださる方もいらっしゃるようですし、普段の活動の中で自分自身の写真なども素材として出していることもあり、それで気が付いてくださる方もいらっしゃるようです。

私自身はタレントではありませんが、ジャガイモンプロジェクトの活動をしている以上、やはりこのような形でお声がけをいただけるというのはとてもに嬉しいことです。
また、以前より存じ上げている方が、新しく他の方をご紹介していただけるという展開もありました。

そういうのも本当にありがたいことです。

ジャガイモンプロジェクトにとって大切な ” 御縁 ” というのはお仕事をさせていただいたりするタレントさんや関係者の方ばかりではなく、様々な形でお会いすることのできるみなさんに対しても同様です。

これまでの活動の中でも本当にたくさんの方に出会わせていただきましたし、そんな出会いから生まれる御縁はその場限りではなく、その後何度もお会いする方もいれば、交流が続く方もたくさんいます。

1度の出会いからずっとジャガイモンプロジェクトを応援してくださっている方も少なくないと思いますし、そんなたくさんの出会いや御縁、そしてみなさんの存在がジャガイモンプロジェクトの活動の何よりの源ですし、大きな力にもなっています。

だからこそ今回もたくさんの方にお声がけをいただけたことは本当に嬉しいことです。
初めてお会いする方と交流できたのも、ここで久々に再会をすることができた方も、そんな全てが大切な御縁です。


アリスインプロジェクト札幌公演の現場ではいつもそうですが、私がたくさんのお客様とお話をさせていただくたびに、他のスタッフが、「 どうしてそんなに知り合いが多いの? 」 と、いつも驚きを持ってそんな様子を見ているそうです。

しかし、この現象というのは私からしてみればそこには明確な理由があります。


この現場にいるスタッフのほとんどは演劇関連の世界のみで活動している人がほとんどです。

一方私は、ジャガイモンプロジェクトの活動の中で、大きく見てみてもこのような演劇関連の現場に様々な立場で参加することがあれば、時に全く一般の方と同じ形で観劇に行くこともあります。

アイドルの関連で見てみても、運営者としてイベントを主催することもあれば、他者主催のイベントにタレントを呼ぶプロモーターとして参加することもあります。

他にも、所属タレントを他でのイベントに参加させることもあれば、一方でこちらでも一般の方と同じ形でイベントやライブに参加することもあります。

ここで例を挙げていけばキリがないほどですが、結果的に私は様々な環境の中でたくさんの方と出会う機会が多いのだと思います。
そしてやはり普段から御縁を大切にすることを念頭に動いているため、今回のような機会にも過去にお会いして交流をしていたり御縁のある方と多く再会をすることができるのだと思います。

また今年もありましたが、今回初めてお会いする方の中には以前からSNSを通じて交流をさせていただいていた方も何人もいらっしゃいました。
これはジャガイモンプロジェクトには ” ジャガイモン ” という、いわば最強武器があることが大きく作用していますし、そんなところから生まれる御縁というのもやはり大切なものです。

そんな御縁がたくさんあるからこそ、他のスタッフから見ると、私は ” 知り合いが多い ” という風に見えるのだと思います。

そしてそんなみなさんと、「 こんにちはー 」 「 お久しぶりでーす! 」 「 元気でしたかー!? 」 と声を掛け合ったり、時にはお互い手を振ったり握手をしたり出来るのは、私にとっては本当に心からの大きな喜びでもあります。


   


私自身、このような演劇でもイベントでも、一般の方と同じ形で参加する時などは時間が許す範囲内で結構早めに会場に行ったりします。

時々あまりに早すぎて会場前で1人で時間を余してしまったり、季節によっては暑かったり寒かったりという思いをすることもあるのですが、だからといってこれをやめようとは思いません。

早い時間にその場所に行くというのは、それが待ちきれずにいてもたってもいられずにその場所に行ってしまうというのもあるのですが、実は他にも目的があったりもします。
それは自分のようにいてもたってもいられずに会場に行ってしまう人と出会えることがあるからなのです。


実際この冬には イレブンナイン さん がこのコンカリーニョを使って公演した 『 サクラダファミリー 』 という演劇に、私は一般の方と同じ形で観劇に訪れましたが、かなり早い時間に行ったにもかかわらずそこにはすでに1人だけ先客が。
寒さに体を震わせながらもその方と色々とお話をさせていただいたりしたのですが、その方はジャガイモンプロジェクトのことも私のこともご存じだったようで、初対面でしたが随分と色々と話が盛り上がって楽しい時間を過ごさせていただきました。

そしてあれから数ヶ月。
今回の公演ではその方とも再会をすることができました。
本当に嬉しいことです。


例えばあるアイドルのライブに行くと、何度も行っているうちに以前にもそこでお会いしたファンの方と再会をすることもできたりもします。
直接お会いすることはその時が初めてだったとしても、それまでにSNSなどを通じて交流をさせていただいている方も少なくありません。

そういう場所でライブなどが始まる前にお互い1人のファンとして色々とお話をさせていただいたり交流出来るということは単純に本当に嬉しいことですし、誰かとそんな熱い想いを共有できるというのは素晴らしいことだとも思っています。

今回の公演ではそういう場面でお会いしている方とも数多く再会することができました。
その1つ1つが本当に嬉しいことですし、私にとっては1つの御縁を超えた ” 仲間との再会 ” だったりもします。


このアリスインプロジェクト札幌公演の現場で、私が現場入り出来る日は私には自然とこの会場前での役割があてがわれます。
それはコンビを組んでいる前述のスタッフ・ 菊地 クン を育てるという意味合いもありますが、同時にやはりどのスタッフの目から見ても私にとってこのポジションというのは適任に見えるのだと思います。

実際私自身もこのポジションは本当に楽しくもあり、やりがいのある場所でもあります。

来年もまた同じようにアリスインプロジェクト札幌公演があるのなら、きっと私はまたこのポジションです。
それを想像すると今からまた楽しみで仕方ないですし、考えただけでワクワクしてきます。

来年はもっと、「 会場前にアイツがいるなら安心だ 」 と多くの方に思っていただける仕事をしたいと思いますし、「 アイツがいるから楽しみだ 」 と思っていただけるような存在でいられればとも思います。

あくまでも一番のメインは公演そのものです。
それは誰の目にも明らかですし、絶対的に間違いのないところではありますが、他の部分でも様々にアピールできる部分があるチームというのはやはり強いと思います。

自分で言うのはちょっとおかしな気もしますが、スタッフからもそんなアピールや魅力が溢れるアリスイン札幌チームでありたいと思っています。


   


昼の公演も他の回と同様に開演1時間前に物販がスタート。

最終日ともなると特にポートレートと写真セットには売り切りのものも多数出てきます。
この日の朝にも一部商品に関しては増刷をかけていましたが、どうしても売り切れで販売を終了とさせていただいたものもあります。

物販コーナーには専属スタッフがいるために私が手や口を出すことはほとんどありませんが、「 売り切れのものもどんどん増えているのでお早めに 」 という声がけをさせていただきながら外のお客様を促したりもします。


今回のグッズは今回のこの会場でこの期間中しか購入することはできません。
またキャストによっては普段からグッズが作られることがなかなかない子もおり、そういう子のグッズというのは特にレア度が高いとも言えると思います。

そんな中、運営側である程度の量の準備はさせてはいただいていますが、売れ行きというのはなかなか予想がつかない部分で伸びたり伸びなかったりもするわけで、結果的に希望の方全てに希望のものが行き届かなかったりということもよくあります。


私かあえて言うまでもないですし、スタッフ側の立場からあまりはっきりということでもないのかも知れませんが、ここではハッキリと言ってしまいます。

こういうグッズの売り上げは公演にとってはとても大切です!

公演を維持し、そして来年以降も継続していくためにはチケットを購入いただくことによる収入も当然大切ですが、同じようにグッズ収益も本当に重要です!

スタッフとしてグッズを購入いただいた方とそうでない方とを区別や差別する気は全くありませんが、それでもやはりグッズコーナーからたくさんのグッズを運び出してくださる方に対しては改めて深々と頭を下げたくもなります。

ちょっと生々しいお話になってしまいましたが、ですがここでこれだけは忘れずに追記しておきたいと思います。

アリスインプロジェクトで販売しているグッズはどれも魅力のあるものばかりです。
数や種類を揃えるとなかなかの金額になってしまったりもしますが、きっとそれ以上の満足が得られるものばかりだと思いますし、それ以上の価値があるものばかりだと思います。

直前まででお金にまつわる話をした後でこんなことを言ってもちょっと真実味にかけてしまうのかもしれませんが、それでも私は本気でそう思っています。

私がこの公演に一般の方と同じ立場で参加していると想像すると、やはりグッズコーナーには間違いなく顔を出すでしょうし、自分の財布と相談しながらもいくつかグッズを購入すると思います。

そこには自分のお気に入りのタレントの写真があるのかもしれませんし、公演の思い出になるようなものがあるのかもしれません。

強い想いを捧げた公演であればあるほど、私はその思い出として手元に残る何かが欲しいと思います。
そしてそれこそがまさにここで手に入れられるグッズなのだと思います。


   


開場10分前の11時20分頃からはいつものように会場前でお客様に整列をしていただきます。

ここも前日同様にコンビを組む 菊地颯平 クン に先陣を切ってお客様に対して説明をしてもらい、私が補足する形でチケットの種類に応じてお客様に並んでいただきます。

が、やはり最終日でも 菊地 クン の説明はまだまだ相手に対しては分かりづらい部分が多々あります。

私からすると、彼は本当に真面目で真っすぐな性格だというのをわかっています。
ですが彼は1人1人のお客様に対して1から10まで色々な情報を全部を詰め込んで説明しようします。

その気持ちはわかるのですが、それでは結局説明が長すぎてどこが大切な部分なのかが判別できない。
実際、聞いている途中で立ち止まって息を止めてしまうような説明になってしまっているのです。


例えば数種類あるチケットを表現する時、彼は、「 カンフェティでご購入いただいた指定席のチケット、自由席のチケット 」 「 キャストからの手売りやチケット販売イベントでご購入いただいたチケット 」 と表現します。
確かにこれも間違いではありません。

カンフェティというのは今回の公演のチケットを扱っているインターネット上のチケットサイトの名前ですし、それには指定席と自由席の券があります。
他にもキャストからの手売りでチケットを購入した方、イベントで購入した方、キャストやスタッフに取置をご依頼いただいていた方など、それぞれの方がいます。

ですが後者の場合は全員が同じチケットのデザインで、それぞれに番号が書き込まれており、並ぶ時点ではどこで買ったとかそういうことはあまり問題ではありません。

そこで、私の場合はそれらのチケットを、「 緑のチケット 」 「 白いチケット 」 とまずは見た目だけをお客様にお伝えし、そこからそれぞれの色のチケットを持つお客様に対してそれぞれの説明をさせていただきます。

これであればお客様が難しいことを考えることはなくなりますし、自分がどこの説明を聞けばいいのかも明確になるはずです。


初めて来場された方にいきなり、「 カンフェティ・・・ 」 と言っても、その時点で、「 何それ? 」 と思われてしまえば、そのあとの説明は頭に入ってきません。

このようなご案内も自分が相手の立場に立った時、どのような説明をされればわかりやすいか、どのように案内してほしいのかということを頭に入れ、それを自分の行動に落とし込んでいくべきだと思います。

菊地 クン 、今年は育てきれませんでしたので、今後もっともっと鍛えていきたいと思います。
彼も普段はイレブンナインの役者として活動しており、そういう経験というのは絶対に自分の為にもなっていくと思いますし、やはりお客様のことをよくわかっている役者というのは絶対にお客様に支持される役者にもなっていくと思います。


このような演劇の世界に対しては、外からやってきた私にとってみれば、演劇のチケットシステムというのは実に複雑で、新規の方にとっては非常にわかりづらい部分があるなと感じます。

チケットの購入方法が何種類もあってみたり、完売と言っていても当日券が多少出てみたり。
また、演劇特有の ” 取置 ” というシステムも更にそれを複雑化していると思いますし、今回に関してもチケットによっては当日受付で引換が必要なものもありました。

ですがこのシステムに大きな変化を与えるのは現状ではなかなか難しいとも思いますし、この複雑化したものを解決するにあたってそこに着手するのは困難です。

であるならばやはり、お客様が会場に到着されて開場前に整列していただくこの流れの中で、お客様に対して明確な説明や指示をできる準備というのはスタッフ側にとっては絶対に最低限必要なことでしょう。


   


11時30分、開場。
整列いただいていたお客様が次々に会場内に流れ込んでいきますが、自由席の方でも一旦ご自分の席を確保されてから外に出て来られる方も少なくありません。

また一方で指定席の券をお持ちの方は最初から列に入らず、余裕をもってずっと外にいる方もいらっしゃいます。

更にそれ以外にも当日券を求めて来場される方もいらっしゃいます。
前売りの段階で席に余裕があればすぐにでも当日券のご案内が可能ですが、前売りで席が埋まってしまっている場合はすぐに当日券を希望される方をご案内することはできません。

この場合、ひとまずは開演10分前までお待ちいただき、その時点で取置などでご予約をいただきながらもご来場されていない方の席の数と照らし合わせながらのご案内となります。

この回の公演ではそんな当日券でのご入場も相次ぎ、開演直前に私が客席に入る時点では自由席は全て埋まっていました。
そんなこともあり、私は通路として開けてあった隅の邪魔にならない場所に自分で椅子を持って行って着席。

本公演7公演目。
いよいよ月組最後の公演が始まります。




カーテンコール、そしてダブルカーテンコール。

変則ダブルキャストで、 北野凛胡齋藤千夏 さん が、片岡観音子塚原樹 さん が演じ、更にダブルキャストで、国門紋未 さん高畑有美恵 さん太田菜月 さん佐藤楓子 さん の出演する回が全て終了となりました。

特にダブルキャストの4人からはこれが最後の出演ということで最後に1人ずつ挨拶がありました。

カーテンコールの時点ですでに感極まっていた 佐藤楓子 さん は、挨拶の時にも涙が止まらず、言葉に詰まるその様子にはこちらまで涙が出る想いでした。

国門紋未 さん も同じラップ部でシングルキャストの 市山黎 さん のことを、「 私の相棒 」 と呼び、そんな話になった時にはこみ上げるものがあったようです。

太田菜月 さん も初めての舞台に臨んでいた緊張感が解放されたようで、それが涙へと変わりました。

高畑有美恵 さん は最後まで笑顔で、彼女らしく挨拶を締めくくってくれました。

私はまたすっかり涙に濡れていましたし、他にも涙を流すお客様の姿が多数。
物語そのものも最後の4人の挨拶もそれぞれに感動があったと思います。



続いては今回もまずは 金澤有希 さん の無料ハイタッチ会です。
準備が出来たところで 金澤 さん が入場し、一言挨拶をしてもらってからハイタッチスタートです。

この回も 金澤 さん との貴重な瞬間を求めて長い列ができました。

希望する方は全員無料で参加できますが、舞台から客席の階段へと続く列に並んで待っていただけている方もいれば、少し落ち着くまで座席でそのまま待たれている方もいます。

握手会や交流会ではなく、あくまでも ” ハイタッチ ” ですから時間にしても本当に一瞬。
それでも多くの方が参加いただいています。

私もすぐ近くでスタッフとしてそんな様子を見ていましたが、手紙やお土産を持参されている方もいれば、この一瞬に想いのこもったメッセージを伝えてくださる方もいらっしゃいます。

「 北海道で舞台やってくれてありがとう! 」
「 おかえり! 」
「 ずっと応援してた! 」
「 北海道で会えて嬉しい! 」

参加くださるみなさんの笑顔、そして伝えられるメッセージにはこちらも自然と笑顔になりますし、地元北海道から東京へと羽ばたいて頑張っている 金澤 さん に対する想いには本当に感動してしまいました。

舞台の上からハイタッチを終わった方の様子を眺めていると、直前に 金澤 さん の手と直接触れた自分自身の手を大切なものを見るかのように見つめている女の子がいました。

また、お友達同士2人で参加し、ハイタッチしたばかりのお互いの手を合わせて興奮を抑えきれない様子の女性の姿も見えました。

ハイタッチを終えてから再び座席に戻り、まだまだ続くそんなハイタッチ会の様子を優しい笑顔で見守ってくださる男性の姿もありました。

更には、手紙を渡した後で感極まって泣き出してしまう子もいました。

お客様の側からはなかなかわかりづらい部分もあるかもしれませんが、我々のいる舞台の方からはそんなそれぞれの方の様子が本当によく見え、そしてみなさんの想いが伝わってくるかのようでした。

そしてそんな様子を俯瞰して眺めているうちにこちらまで感極まってしまい、次々に舞台の上がってこられるお客様をご案内しながらついつい涙が出てきてしまいました。

そんな私の様子に気が付いたいつもお馴染みのお客様からは、「 どーして泣いてるの〜!? 」 と笑いながら肩を組まれました。
1人のスタッフとしては恥ずかしい限りですが、それでもそんな時にもどんな時にもいつもフランクなコミュニケーションをしてくださる方がいるというのは本当にありがたいことです。

最後には 金澤 さん がみなさんに対して挨拶を行ない、これでハイタッチ会終了です。

イベントとしてもたくさんのお客様が次々に参加してくださる忙しいものでしたが、私の感情もなんだか随分と忙しい。
そんなハイタッチ会となりました。


続いては再び舞台上のテーブルレイアウトを変更し、引き続きサイン握手会へと移ります。

こちらは舞台上での我々スタッフの準備と同時進行で、舞台裏でもキャストが準備をしています。
そして早く準備が終わったキャストは舞台袖まで出てきて、今か今かとカーテン越しからチラチラとコチラを見たり、客席をのぞき込んだりしています。

そんな中でも私が見たり気が付いたかぎりでは、フルーティーの2人、長久保桃子 さん北出彩 さん が比較的いつも早く準備を終わらせて舞台袖に来てニコニコしていた印象があります。

キャストの人数が多いので、全員が事前に舞台袖に来ることは広さの問題からも不可能ですが、それでもこの2人はいつも先頭にいた気がしています。

やはりアイドルグループのフルーティーとして活動で多くのライブやイベントに出演する中でこのような状況にも慣れているのではないかとも思いますし、限られたイベント時間の中で少しでも多くファンの方と接するためには1分1秒でも早く始めるのが大切だというのが普段の活動から身に付いているのだろうと思いました。

舞台上の各々の配置から、どうしても順番的に後から出てくるキャストもいるとは思いますが、どうしてもこの 長久保 さん北出 さん の様子がスタッフとして良い意味で目についたため、ここにあえて書き記しておきます。


   


サイン握手会はこの回も大盛況。
参加券と引き換えに次々に舞台に上がって来られるお客様の熱気と、舞台を照らしだす照明から発せられる熱で、舞台の上はあっという間に温度が上がるのがわかります。

私も他のスタッフも始まってすぐに大汗をかきながらのご案内となりますが、それでもこの暑さや汗というのは全く嫌なものではありません。
ここでの熱量はそのまま、参加いただくみなさんからキャストに対しても想いであり熱さです。

このサイン握手会でキャストがサインを書き込めるのは、この公演の物販で扱われる公式グッズのみ1点です。
そんなこともあり、みなさんがそれぞれ購入されたパンフレットやポートレートなどサインを希望される方、更にはそれをたくさん集められる方も多数です。

もし可能な限り全員のサインを集めるとなるとこのサイン握手会に不参加の 金澤 さん を除いてキャストが25人。
1回の参加に 2000 円分のグッズの購入が必要ですから、《 25人 × 2,000円 = 50,000円》 と、決してサッと出てくるような金額ではありません。

また、ダブルキャストの子は自分が出演しない回の握手会には参加しませんから、最低でも2回は観劇しないと全員とは会えません。
更に、これを単純に半分で割り算して、1回の握手会で 12.5 人を回れるかとなると、制限時間内ではそれもなかなか難易度が高いでしょう。

となると、3公演分で全員のところを回るような感じで計算してみると、《 25人 × 2,000円 + 4,500円 × 3回 》 となり、最低でも 《 63,500円 》 。
大変なことですが、それでも私が知っている範囲内でもそれに限りなく近づいたという方が何人かいらっしゃいました。
本当に驚くと同時に、それだけの想いを持ってここに来てくださるということに対しては本当に感謝の想いが募ります。

スタッフとしてお客様を使った金額や来場された回数だけで判断するのは大きな間違いですし、お1人お1人に対する感謝の気持ちはや大きさ変わりません。
それでもやはり、それだけ大きな金額を使ってくださる方がいるというのは本当にありがたいことです。

私自身も1人の参加者、1人のファンとして握手会や交流会のようなものに参加したことがありますし、その際にやはり今回のお客様と同様にグッズを買って参加券を手に入れ、そこでサインをいただいたり握手をしてもらったりという経験も何度もあります。

だからこそ、ここに参加されるみなさんがどんな案内を必要とし、どんな交流を望んでいるかというのは自分の経験をもとに手に取るようにわかります。

ワクワクドキドキする気持ちも、それを誰かと分かち合ったり誰かに伝えたりしたい気持ちも自分のことのように理解できます。

そしてこの現場のスタッフの中では私が一番そんなみなさんの気持ちを実体験として理解できていると、そこは自信を持って言えます。

スタッフとしては常に冷静沈着に粛々とイベントを進めることも大切でしょう。
ですが、私のやり方はやはりそれとは少し違う場合もありますし、やはりどんな時もお客様の気持ちに寄り添える存在ではいたいとも思っています。

寄り添いすぎて一緒に楽しい気持ちを共有したり、時に泣けてきたりもしますが、そのあたりはどうかご容赦ください。


自分で言うのもおかしいですが、私がお客様側の立場でこのようなイベントに参加する時は、その現場に自分のそういう気持ちを分かってくれるようなスタッフが1人いるだけでも嬉しいですし、それも込みでその現場が好きになるんじゃないかなとも思います。

だからこそ、きっとこれからも私は私自身のやり方は変えないと思いますし、変えようと思っても変わらないとも思います。


この回のサイン握手会も終始お客様の笑顔が溢れ、楽しそうな声が響いて大盛況。

時間を見ながら途中で物販を終了し、そして握手会への新規受付 ( 舞台への登壇 ) を終了しましたが、それでも参加券をまだ複数枚持たれている方もおり、途中からは1回1回舞台からの降り上りを繰り返さず、舞台の上でグルグルとループしていただきました。


またちょうどこの頃、舞台裏では 金澤 さん がキャスト全員に対してそれぞれのメッセージが入った、特別注文のサクマドロップスを1缶ずつ配っていたそうです。
そんな缶の写真はキャストのSNSなどを通して公開されたりしていました。

握手会の途中、一度後ろに下がった 小西麻里菜 さん が呼び出されて再び舞台に戻ってきた時、彼女は確実に泣いていました。
そんな様子を見てマイクを持った 納谷 さん がどうしたのか聞くと、「 ゆうきりんがコレくれたんです 」 と、その缶を大切そうに両手で抱えながらこちらにも見せてくれました。

ここまで一緒に過ごしてきた仲間に対してそういうことをできる子も、そしてそれを受けて素直に涙できる子も、どちらも本当に素敵だと思います。


泣いても笑っても、残り1回。
彼女達の45日間も本当に残りわずかです。



握手会が終わってからはまたいつものように全キャストが舞台に集められ、今回もしっかりと 納谷 さん からコメントがあります。

ここからしばしの休憩を挟み、次の幕が上がってしまえば本当にそれで終わりです。
もうここまで来るとあと1回を残した彼女達よりもスタッフの方が少し感傷的になったりもします。

誰とは言いませんが、納谷 さん からの言葉を受ける彼女達の様子をじっと見つめ、静かに肩を震わせながら涙を拭う男性スタッフがいたのを書き添えておきます。


またこのタイミングで、5月9日から東京で公演の始まる、『 ダンスライン♪TOKYO 』 のみなさんに向けた動画の撮影も行ないました。

この公演が開幕した25日。
初日に合わせて東京チームのみなさんがこちらに向けた動画を撮影し、キャストのみなさんがそれぞれツイッターにアップして送ってくださいました。

今回の動画はそれに対してのアンサー動画です。


基本の台本は同じであっても演出家が違うことでお互いに手を加えた作品は結果的に大きく違うものになったとのこと。

出演キャストも全員違えば、札幌公演にはいても東京公演にはいないキャラクター、またその逆のパターンもあります。

ほぼ全てが違うものになっていたとしても、アリスインプロジェクトがあえて同じタイミングでの公演に踏み切った今回の作品は、お互いが結びついているといっても過言ではありません。

直接顔を合わせる機会というのは残念ながらありませんが、たとえ違う場所であったとしてもほぼ同じ時に同じものに向かってお互い進んだ東京チームのみなさんは、やはり我々にとっては大切な仲間です。


   


彼女達にしてみると、舞台裏で次に備えて準備をするのも、髪やメイクを直してもらうのも、差し入れを食べたり食事を取ったりするのも、そしてゆっくりと過ごしたりするのもひとまずこれが最後になります。

仲間と談笑したり、お互いにパンフレットにメッセージを書き込んだり ・・・。
こうしてちょっとゆっくり過ごせるのももう今だけです。

公演が終わってしまえば東京へ戻ってしまう子もいます。
それぞれ活動する分野が違えば、この先もなかなか現場で一緒なるということは少ないかもしれません。

それでも私が見ている限り、彼女達の様子からはそんな空気感もそれほど感じず、良い意味で、「 若いっていいな 」 と思わされる雰囲気がそこにはありました。

ただ、何人かで一緒に写真を撮ってる様子を見ていると、これまでにも何度となく一緒に撮っているはずなのにやはり今までとは少し違った淋しさやそんなものを感じさせる瞬間もあったりします。

そしてそういう光景を見ていると、やはりもうすぐ本当に全てが終わってしまうんだなという現実がチラホラと見えてきたりもします。


まだまだ公演本番まで時間があるうちは我々スタッフも彼女達と一緒になって話をしたりするなどして、一緒に時間を過ごしたりもしますが、次第にその時間へと近づいてくると舞台裏の空気感も少しずつ変わってきます、

相変わらず楽しそうにしている子もいますが、まだ暗い舞台に行って本番への集中を高める子もいれば、気合を入れている子もいます。
また、鏡をじっと見つめて自分に何かを語りかけている子もいれば、いつも通りに準備体操やストレッチに余念のない子もいます。

そうなってくると我々スタッフも彼女達にはもうほとんど話しかけません。
何かの確認など必要最小限のこと以外はほったらかしておきます。

これから本番の舞台に立つのは我々ではなく彼女達です。
何事も最優先は当然そんな彼女達なのです。



大千穐楽もいつもと同じように開場時間の少し前にキャスト全員が舞台に集合しました。

ここではカーテンコール後のキャスト1人1人からの挨拶などについての注意も行なわれました。

ダブルキャストの月組の4人はすでに昼の公演で挨拶を終えていますが、今度は残りの全員が最後の舞台ということもあり、最後には22人からの挨拶があります。
ここで1人が1分ほど話をしてしまえば単純計算で22分。
これではその後の予定を考えてもちょっと長すぎます。

感情が高まってついつい長く話してしまう気持ちも十分にわかるのですが、ここでは毎年必ず、「 あまり長く話さないように 」 という注意がされます。

またこれ以外にも、演劇自体に対してのものと終了後についての注意がいくつかされました。
最後だからといって勢いで突き進んでしまうのではなく、この1回も他のと同じ1回という考えでしっかりとした準備が行なわれます。

「 よろしくお願いします! 」
納谷 さん がかける掛け声に続いてキャスト全員からも、「 よろしくお願いします!!! 」 と発声。

さぁ、いよいよ大千穐楽の公演が始まります。


   


会場の外も全くいつもと同じ流れで進みますが、こちらは大千穐楽に向けてちょっと違った雰囲気が漂っていました。

まず、いつも通りに開演1時間前に始まる物販は、グッズを購入する最後のチャンスということもあり、早くから多くの方が詰めかけました。
すでに売り切れとなってしまっているグッズもありましたが、それでも次々に、そしてたくさんの方にご購入いただき、最後の方はキャストによっては全てのグッズが売り切れとなったものもありました。

この2日間で私も、「 今回しか買えないグッズばかりですよ 」 「 数に限りがあるので早めに購入しないとなくなってしまいますよ 」 「 グッズにサイン書いてもらったらいい記念になりますよ 」 などと色々とみなさんを促したりもしていましたが、最終的にはびっくりするほどたくさんの方に多くのグッズをご購入いただき、本当にありがたい限りです。

また、ここである方に、「 実はグッズを買う気はなかったけれど、あなたに勧められたのでパンフレットを買ってみた 」 と言われました。
その方はそのパンフレットを買って手に入れたサイン握手会参加券を使って、昼の公演後にあるキャストにパンフレットにサインを書いてもらったそうで、「 とてもいい記念になった 」 とわざわざ伝えに来てくださいました。

その方は昼の公演だけを観て帰られるつもりだったそうなのですが、グッズ購入を勧めた私に一言声をかけてから帰りたかったとのことでわざわざこのタイミングを待っていてくださったそうです。

昼の公演の握手会が終わってからここまで約1時間半ほどあり、その間私はずっと舞台裏などにいました。
ですがその方は夜の公演の物販が始まる16時頃にはまた私が出てくるだろうと、一度は移動したものの、その時間に合わせてまた戻ってきてくださったとのことでした。

改めてそこで少しお話をさせていただいてからその方は、「 帰りのJRの時間があるから 」 ということで劇場をあとにされようとしていたのですが、帰り際に一言、「 今日はありがとう 」 と伝えてくださいました。

全ての出会いは一期一会。
今回もまた素敵な御縁をいただきました。

お礼を伝えなければならないのは私の方なのに、そんなこちらに対して伝えていただいた、「 ありがとう 」 の一言がとても心に響きました。


   


16時20分頃にはこの公演最後の整列を開始しました。

「 よし、ラスト1回、頑張ろう! 」 と声をかけて整列を始めましたが、最後の最後もやはり相変わらず 菊地 クン の説明はちょっとわかりづらいです。
ですがそれでもいつでも本当に一生懸命です。

彼と知り合ってからもう何年かが経っており、この公演に限らず様々な機会で顔を合わせたり、時にこうして一緒に何かに取り組んだりもしますが、いつ見ても彼は本当に一生懸命です。
だからこそ不器用な部分をサポートしてあげたいとも思いますし、こうしてコンピを組むからには私もそうでなければなりません。

いつも通りの整列を終え、そして開場後はやはりいつも通りにみなさんに順次入場していただきます。


   


開演時間が近くなるにつれて、入場後に一旦外に出て来られていた方もどんどん会場に飲み込まれていきます。

外にほとんど人がいなくなった頃、2人で、「 今年も終わったね 」 とちょっとだけ一息つきながら一緒に記念撮影。
まだまだ終演後にも会場の中ではでやることはありますが、ひとまずこの場所でのお客様のご案内は終了。

開演ぎりぎりになって、私も大千穐楽を見届けるべく客席に向かいました。


   
   


大千穐楽は、前回は大スベりした 長久保桃子 さん のアドリブが大爆笑を誘いました。

岩杉夏 さん が大切なところで 谷口郁美 さん 演じる 平山先生 のことを、「 宮脇先生! 」 と、自分の名前で言ってしまいました。
最後のダンスで 上野華歩 さん が座っていたイスが後ろに倒れてしまいました。
更に他にもちょっとしたハプニングもありましたが、それらもお互いがよくカバーし合ってお芝居自体が崩れることはありませんでした。

昨年の公演でも自らの台詞の途中で完全に空気が止まってしまったような瞬間があったり、一昨年は開演して早々に舞台から落ちてしまったりと、それぞれにハプニングはあったりもしましたが、それらを瞬時にみんなでカバーし合って前に進むことで、それは何事もなく進むよりもかえって素晴らしい出来になってみたりもするものです。

全ては生のお芝居であり、目の前でリアルタイムで繰り広げられるものです。

100%予定通りのパーフェクトで終わることなんて考えられませんし、またそれを100%完璧にコピーしたものをもう1回出来るわけでもありません。
そういう意味ではハプニングがあろうとなかろうと、複数回の公演があればその回数分だけの種類のお芝居が繰り広げられるのです。


テレビドラマを録画で見ても、映画を何度見に行っても、DVDを繰り返し再生しても、そこには見れば見るだけ深い気付きがあるかもしれませんが、やはり基本的には同じものです。

ですが生の舞台、目の前で繰り広げられるお芝居というのは同じものというのは2つとなく、逆に同じものを2度観たくても観ることができません。
そんなところにも生の舞台の面白さがあると思います。


どの回の公演も単体でも笑えるところも泣けるところも、そして時に息を呑むような瞬間もあるのではないかと思います。
また、複数回を観劇することで見えてくるようなものもあったり、回数を重ねるごとに増していくこの公演への想いから流れる涙もあるのではないでしょうか。

大千穐楽のこの回も会場を包む爆笑があったり、予想外のアドリブに驚きの声が上がったりしました。
終盤にかけてのシーンでは私が座っていた周りでも涙を拭う姿やすすり泣く音がたくさん聞こえてきました。

それぞれの方がそれぞれの想いを持ってこのお芝居に触れ、そしてそれが感情となって表れる。
本当に素敵なことだと思います。


私自身も公演が始まってからは2日間で4公演を客席から観せていただきましたが、その度にしっかりと泣いてしまいました。

物語の内容自体にも感動の要素はたくさん盛り込まれています。
更には彼女達がどんな想いでここにのぞんでいるのかと考えただけで、そしてここに至るまでのプロセスをある程度見てきているだけに、余計に泣けてきました。


全てが終わり、この大千穐楽に出演の22人全員が横一列に並び深々と頭を下げたところで会場からは割れんばかりの大きな拍手、カーテンコールが捧げられます。
その拍手に送られて一度は舞台裏に下がるものの、更に続く拍手、ダブルカーテンコールに応えて再び全員が同じように一列に並び、そしてもう一度こちらに向かって深々と頭を下げました。

その拍手の音は私が今回この会場で直接聞いたどの拍手よりも大きく、そして綺麗に響き渡っていたように感じました。


ここからは22人のキャストが1人ずつ挨拶を行ないました。

ここまで一緒に頑張ってきた仲間や、会場に来てくださったお客様に感謝の気持ちを伝えて大粒の涙を流す子もいました。
最後まで笑顔いっぱいに挨拶をする子もいました。
上手く想いを表現できずに言葉に詰まってしまう子もいました。

それでもどの子のメッセージにも言葉にも、そこにはしっかりと気持ちが込められており、1つ1つが客席で聞いていた私達の方へと届いていました。
またそれらの言葉はきっと、この1回だけではなく、初日からの全8公演にご来場いただいた全てのお客様に対しても向いていたと思います。

どうしても時間に限りがあり、その思いのたけを全て語ってもらうほどの余裕がなかったのは運営側の人間として申し訳ない部分もあったりするのですが、それでも彼女達の想いはたくさんの方にしっかり届いたのではないかと思います。


   


この後は一旦キャストが舞台裏へと下がり、我々スタッフがいつも通りの準備を始めます。

まずその最初は 金澤有希 さん のこの公演最後の無料ハイタッチ会です。

これまでの回でもその度にたくさんの方に参加いただき、そして参加いただいた方々の数だけのそれぞれの想いが 金澤 さん へと届いたと思います。
そしてハイタッチで触れる手を通じて、そしてその視線を通じて、金澤 さん からみなさんへの想いも伝わっていったのではないかと思います。

この最後のハイタッチ会はこれまで以上に本当にたくさんの方に参加いただき、そのお客様が作る長い列がまるで大きな波のようにも見えましたし、その熱気がダイレクトに伝わってもきました。

ハイタッチ会の最後には改めて 金澤 さん からみなさんに対して最後のご挨拶。
最後まで本当に明るく元気に、そして最高の笑顔でこの公演を支えてくれました。


また、この挨拶の後にはマイクを持った 納谷 さん が唐突なことを言い出したと思います。

「 金澤さんとはみなさんもここでお別れだと思いますが、私も同じでこれでお別れなんです 」 と。

あの言葉の真意はみなさんには伝わったでしょうか。
その事情を知っていた私にとっては 納谷 さん が明るく伝えるその言葉の裏にも色々な想いが込められてるのが伝わってきましたし、ある意味では淋しくもあるものでした。

この真意や事情をここでお伝えすることはしませんが、明日はすでに始まっていたのです。



続いてはサイン握手会。
こちらも今回が最後です

舞台裏で待機していたキャストが所定の位置に着く頃、すでに舞台へと向かう階段にはお客様の長い列ができていました。
そのザワザワとした雰囲気は今までのどの回とも違いました。

「 スタート! 」
そんな掛け声がかかった瞬間から舞台の上に次々に上がって来られるお客様。
その数は今までのどの回よりもはるかに多い数でした。

あるスタッフが、「 コンカリーニョの舞台にこんなにたくさんの人が上がってるのを見たことがない 」 とボソッとつぶやいてしましたが、まさにその言葉は的を射ており、昨年一昨年も大千穐楽の後の握手会はすごい人で盛り上がっていましたが、今年の舞台の上は明らかにそれらを超える凄さ。

最初は舞台の上にいたはずの我々スタッフが立っている場所すらなくなり、何度も何度も舞台を降りたりまた上がったりと、お客様のご案内や誘導をさせていただきながらそんな動きも繰り返していました。


これがこの公演でキャストとサインをもらったり握手や交流をできる最後のチャンスということもあり本当に前回までとは比にならないほどの人数の方に参加していただきましたし、そこにはきっと最後だから感想を伝えたいというような想いもあったのではないかと思います。

私がみなさんのように握手会に参加する側の立場だったとしたら、やはり最後に本人の前に言って直接、「 お疲れさま、良かったよ 」 と言うような声をかけたりねぎらったりもしたいと思います。

一部のお客様からは、「 どうしてこんなに最後だけ 」 という声も聞こえたりもしていたのですが、私自身はこのようにイベントに参加されるみなさんの想いや気持ちを自らの身をもって知っていますから、これが ” 最後だけ ” 名のではなく、” 最後も ” ” 最後だからこそ ” なのだというのがよくわかっているつもりです。

キャストの側からしても、全ての回においてみなさんに自分のところに来ていただけるというのは嬉しいことだと思いますし、やはり最後のこの機会に一言声をかけていただけるのもまた間違いのない喜びだとも思います。

我々スタッフがかける、「 お疲れ様 」 の声より、自分自身をこれまでも応援くださっているファンの方や、この機会に新しく自分を知っていただけた方々にかけていただける一言の方がより一層響くとも思いますし、嬉しくもなったり疲れを忘れられたりもするのではないかと思います。


またこの、” 新しく自分を知って・・・ ” というところでは今回、たくさんの方がご自身がこれまで応援してきた子のまた新しい部分を知ることもできたのではないかと思いますし、他にもまた新しい魅力を持った子を発見していただけたのではないかと思います。

アリスインプロジェクトは、アイドル、シンガー、タレント、役者 ・・・ 、それぞれ色々な活動をしている子が一堂に会しており、だからこそ今までは見る機会のなかった子を見ることのできる機会ともなり、新しい世界を知るきっかけにもなると思います。


そんな中でやはり、元々はあるキャストを目当てに来たけれど、実際に舞台を観て他のキャストも気になった、という話を今年もお客様からチラホラと聞きました。
そしてこのような話はアリスインプロジェクトの公演では毎年のように少なからず沸き上がってきます。


アリスイン札幌の現場では、特に初年度はやはりこのような握手会に参加されるお客様は圧倒的に元々がアイドルファンだという方が多い状況でした。

ですから、必然的に普段アイドルの活動をしているキャストの前には長い列ができ、役者が本業の人との間には歴然とした差が生まれてもいました。

ですが一昨年の初年度、全8公演の中で大きな変化がありました。

アイドルファンの複数のお客様から、「 塚本さんがかわいい 」 「 塚本さんが素敵すぎる 」 という声が出始め、それが大きなムーブメントとなって現場に波を起こし始めたのです。

物販でも 塚本奈緒美 さん のグッズの売れ行きが急激に伸び始め、そして続々と売り切れに。
「 欲しかったけど買えなかった 」 という話もたくさん聞こえました。

握手会も 塚本 さん の前には長蛇の列ができ、その中には最初は違うキャストの列に並んでいた方の姿もたくさん。
そんなみなさんからは、新しい何かを発見したワクワク感が溢れ出て来るのが、その様子や言葉からはっきりと伝わってきました。


これ以前から北海道の演劇界では ” 至宝 ” と言われていた 塚本 さん は、元々その業界のファンの方は多かったのは間違いありません。
それは、彼女自身の実力もそうでしょうし、魅力もそうでしょうし、そういうものがあるからこその評価であり、人気であったのだとも思います。

ですがそんな彼女でさえ、当時はこのような握手会も初めての体験だったそうですし、アイドルファンの方々が自分のところに押し寄せてくるという体験も初めてだったのだと思います。

当時、某金融系のTVCMに出演していたというタイミングの良さもあったのかもしれませんが、たくさんの人が彼女の魅力に気が付いた、そして発見した瞬間がここにあったのだと思います。

その後、塚本 さん が出演する舞台やイベントなどにも、ここでその魅力に気が付いた人達が大挙して押し寄せるようになったのは言うまでもありません。



そしてこのようなムーブメント。
今年の現場で再び発生しました。

今年の座組全体ではアイドルの色が少し薄れています。
そして、役者として活動している、アリスイン札幌的にはニューフェイスのキャストが多く入ってきていました。


私が今回現場に再合流した公演4日目28日の昼公演あたりは、やはり以前にアリスイン札幌の舞台に出演経験のあるキャストや、今回が初めての出演であっても普段からアイドルとして活動している子の前に長い列ができていました。

そして逆に、役者を本業とする今回が初参加のキャストの前にはあまり列が伸びていなかったのがとても印象的でした。

ですが、これが千穐楽にもなってくると大きく変化。
元々長い列があったところは相変わらずの好評なのですが、役者の子達の前にもしっかりと列が出来始めていたのです。

そしてそんな中でも特に今回、北野凛胡片岡観音子 を変則ダブルキャストで演じた 齋藤千夏 さん には、初年度の 塚本奈緒美 さん のようなムーブメントが確実に起こり始めているようでした。

これだけかわいい子がズラッと並ぶ中、「 千夏ちゃんがかわいい、齋藤さんがかわいい 」 と、わざわざ私に伝えに来てくださる方が急激に増えたかと思うと、そんな頃から 齋藤 さん の前に出来る列が一気に長くなり始めたのでした。

個人グッズの売れ行きもそれに伴って加速したようで、最後の方にはもうそのほとんどが売り切れ状態だったそうです。


齋藤 さん を含め、劇団フルーツバスケット所属のみなさんは、この舞台の後は6月のよさこいソーラン祭りにチームで出場するそうです。
それを応援しに行きたいという声も早速聞こえてきていましたし、次の出演舞台についての質問もこちらにまで飛んできていました。

まさに初年度に 塚本 さん に起こった現象が今年は 齋藤 さん に起こっている。
これはスタッフの間でも話題になっていました。


実は ・・・ 。
いや、これを言うのはやめましょう。

我々スタッフの間では、” ○○マジック ” と呼ばれるある事があるのですが、これが 齋藤 さん に施されていたそうです。

ですがこのムーブメントは決してその ” ○○マジック ” だけが理由ではなく、元来彼女自身に魅力があり、そしてそれに気が付き始めた人がいたということなんだと思います。

これは、齋藤 さん 本人にとっても、勿論アリスイン札幌の現場にとっても、そしてそれに気が付いたファンのみなさんにとっても素晴らしいことだと思います。

そして断言できます。
このムーブメント、本当に大きくなるのはここまでではなくここからだと。
ここで起こったことは何かのゴールではなく、ここからがスタートなんだと。

札幌の演劇界にまた凄いことが起きそうです!



最後の握手会はたくさんの方々の熱い想いばかりではなく、名残惜しいという気持ちも溢れかえっているようでした。

それまで握手をしていたキャストに対して離れ際に、「 ありがとう! 必ずまた会おう! 」 と大きな声で伝えて舞台を降りる方の姿があれば、何も言わずに手を振り続けて去っていく方もいました。

キャストによってはライブなどですぐに会うチャンスのある子もいますが、そういう機会がなかなかない子や、拠点としている東京へと戻ってしまうキャストもいます。
当然この公演自体ももう同じものは二度とやってきません。

やはりそこには名残惜しく、そして淋しい想いも溢れているのです。


また、最後の最後に舞台から降りる際やその後で、私のところに来てくださって声をかけていってくださる方が何人もいらっしゃいました。
それはこの大千穐楽の回に限ったことではありませんでしたが、わざわざ私のところに来られて、「 お疲れ様 」 とか、「 ありがとう 」 と、色々と声をかけていただけました。
これは1人のスタッフとして以上に、私個人としても本当に嬉しいことでした。


今回お会いできた方々は、一番長い方だともう4年ほど前に初めてお会いしている方がいます。
期間はもう少し短くともこれまでに様々な機会で何度も何度もお会いしている方もいます。
直接お会いしたのは今回が初めてでもずっとSNSで交流をさせていただいていた方もいます。

客席側から手を振ってくださっている方もいました。
わざわざお土産を持ってきてくださる方もいました。
一緒に写真を撮りたいと言ってくださる方もいました。

それぞれの方に対してのそれぞれがありますが、でもほとんどのみなさんに共通して、「 ジャガイモンプロジェクトの活動をしていたからこそ出会えた 」 ということは言えます。

そんなみなさんにこのようにして色々と声をかけていただけたり、お会いする機会をいただけるというのは本当に本当にありがたいことであり、そんな出来事がまた次への活力にも繋がっていきます。

みなさんが握手会でキャストのところへ行って色々と声をかけてくださったり、時間を割いて公演を観に来てくださるという応援は、キャスト1人1人にとっては本当に力になることですが、そういう意味では私自身も同じようにたくさんお客様から力をいただいていたんだと、改めて身を持って知ることができました。



最後の握手会はなかなか終わりが見えませんでした。
舞台の上も長時間たくさんの人で溢れ、熱気が何かを溶かしてしまいそうなほどでした。

それでも時間を追うごとに確実に舞台の上のお客様の数は減り始め、少し予定時間をオーバーしながらもついに握手会も終了。
スタッフとしては少しホッとする一方で、これだけ楽しいことが終わってしまう淋しさも襲ってきました。

握手会に実際に参加されるのはお客様自身であり、その相手はキャストの彼女達です。
ですがそれを見守りながらイベント進行していく役割の私達スタッフにとっても、この場というのは本当に楽しいものでもあります。

楽しいばかりで済ませずに役割としてその場でやらなければならないことがあるのは当然ですが、それでもやはりこの場は本当に楽しい。

まして私自身は今回のお客様のようにこのようなイベントに1人の参加者として加わったことが何度もあり、その楽しさというのを実体験の中で知っています。
だからみなさんの笑顔がどんなところから来るかもわかっていますし、どんな想いでここにいるのかもわかっているつもりです。

だからこそ、やはりこの場は本当に楽しいのです。




これで今年の公演も全てが終了です。

舞台裏に戻ると、そこにはこれまでとは違った光景が広がっていました。
直前まで舞台の上で頑張っていたキャストの多くが涙を流しながら笑っていたのです。

” 涙を流しながら笑っていた ” とこれだけをお伝えすると、ちょっとおかしな印象を持たれてしまうかもしれませんが、舞台裏はまさにそんな雰囲気で溢れていました。

全てが終わった安堵感、全てが終わってしまった喪失感。
ここまでの約1ヶ月半、ずっと一緒にいた仲間との時間も本当に終わってしまいました。

きっとそんな色々な感情が一気に襲ってきていたのだと思います。

大切な仲間といるからこそ笑顔でいられる。
だけど自然と涙が出てくる。

全員で一度に集まれる機会というのはおそらくもう二度とないだろうけれど、それでも個別に会えるチャンスなんてきっとこれからもたくさんあるでしょうし、いくらでも作れることでしょう。

それでもやはりもうこの劇場とも、衣装とも、舞台ともお別れです。

そう考えると、舞台裏のホワイトボードに書かれた連絡事項ですら愛おしく思えてきます。


   


一方その頃、そんな彼女達の想いの詰まった舞台はすでに解体が始まっていました。
いわゆる ” バラし ” という作業です。

これには私のような素人は一切手を出すことはできませんが、握手会終了直後から必要な道具が運び込まれ、直前までの彼女達の夢舞台が驚くほどのスピードで消えていきます。


これはある意味では本当に淋しく悲しい光景でもあります。
プロのお仕事としてはぜひともたくさんの方に知っていただきたいようなものでもありますが、逆に見ない方がいいという場合もあるでしょう。

キャストの子達もおそらく誰も見ていないのではないかと思います。

ひとまず、その作業のごくごく初期段階の写真だけ添付しておくことにします。


   


バラしが始まった頃、正面から表に出てみると、まだ多くの方が名残惜しそうにその場にいらっしゃいました。

そんな中には以前より存じ上げている方や、そんな中でも遠方から遠征でいらしている方も残っておられました。

昨年の公演後も私は同じようなことをした記憶がありますが、私は最後のお礼を伝えさせていただきつつみなさんのところを回り、そしてみなさんを送り出させていただきました。

そんな時、駅の方へと向かうみなさんの方からこんな声が聞こえました。
「 またあの日のアリスインプロジェクトで! 」

これが何のことだかわかる方はこの現場では少数だとは思いますがいらしたと思います。
ですがこのレポートをここまで読んでいただいている方の中では、いらしたとしても本当にごくごく少数だと思います。

” またあの日の ・・・ ”
これはあるところで通じる合言葉のようなものなのですが、本来は、” またあの日の ” の後ろは違う単語が入ります。


ですがこれを言ってくださった方は絶対に私にならそれが通じると思って言ってくださいましたし、私もすぐにそれを理解することが出来ました。
まずはそれがとても嬉しかったです。

私も躊躇することなく、「 またあの日のアリスインプロジェクトで! 」 と返しました。


そのみなさんは私を待っていてくださったわけではありませんが、それでもお帰りの間際にギリギリお会いできたことも嬉しかったです。
そして我々にとっては大切な意味を持つ、 ” またあの日の・・・ ” の合言葉でお見送りできたことは、これが何のことやらわからない方にはなかなか通じづらい心境だとも思いますが、私は本当に嬉しかったです。


みなさんをお見送りした後は、会場入口に立って外に向かって一礼させていただきました。

おそらくどなたも見ていませんし、誰かに見せようと思ってやっていることでもありませんが、これが私なりの礼儀だとも思っています。

頭を下げて地面を見ながら、みなさんへの感謝や色々な想いでまたしばらく涙が止まらなくなりました。





ここからは今回出演していただいたキャストのみなさん1人1人について触れていきたいと思います。

その趣旨から物語の流れや様子など、その中身に関しても多少のネタバレ的要素も含まれるかと思いますので、そういうものを避けたい方は読まれる際にはご注意をいただけれぱと思います。



主演の 北野美環 を演じたのは、金澤有希 さん

苫小牧出身の彼女はもう何年も前に上京し、ついこの3月の末まではグループアイドル・ GEM (ジェム) のリーダーとして活躍していました。
しかし残念なことにそんなGEMも3月25日のライブを経て解散となってしまったのはファンのみなさんの記憶には新しいところだと思います。

ジャガイモンプロジェクトでも以前から御縁があり、私自身もここに至るまでに直接お会いをしたこともありましたし、ジャガイモンともSNSを通じてかなり以前より交流がありました。


金澤 さん がどのようにして今回のアリスインプロジェクト札幌公演に参加することが決まり、そして主役に抜擢されたのかということに関してはここでは触れません。

ですが、どうして他のキャストから一歩遅れてこの公演への参加が発表され、そしてなぜ遅れて合流したのかというのは直前の出来事を考えると自然とその答えも出てくると思います。

そういうことを改めて考えると、その大変な激動の時期に、それでもこの公演に参加することを決断してくれた 金澤 さん には本当に感謝ですし、ある意味ではこのタイミングだからこそ 金澤 さん にとってはまたと無いチャンスになったのではないかとも思います。


金澤 さん は上京して以来、GEMとしてライブで数回北海道でのお仕事があったこともありましたし、実際私もそんな機会に直接お会いすることが出来たりもしたのですが、それでもやはり拠点はあくまでも東京。
なかなかお仕事で北海道に帰ってくるという機会も多くはなかったと思います。

そんな中で今回、このような形で 金澤 さん を地元北海道に凱旋させてあげられたというのは、我々スタッフ関係者にとってはとても誇らしいことであり、そして何よりも自分達自身も嬉しいことでした。


主役という立場からも、この期間中 金澤 さん は大勢の関係者の前でも挨拶をしていただける機会が何度となくありました。
そんな中で彼女が声を詰まらせ、そして涙を流した光景は忘れることができません。

前述のGEMの解散などもあって稽古への合流が1人だけ遅くなった 金澤 さん
そのプレッシャーというのは彼女にしかわからないほどに大きなものだったようです。

稽古の進み方そのものもそうですし、自分が合流する時点ではすでに座組自体にチームワークや仲間意識というものが生まれ育っていることが想像できます。
そんなところに自分だけ途中から遅れて入っていくというのはとても大変なことだと思いますし、ましてやそれが主役だということになると、他の人がどんな気持ちで自分を見るのだろうかという想像も否応なしに膨らんでしまいます。

これまでの 金澤 さん の活動の中で、工藤夢心 さん横山奈央 さん は直接の後輩であり、一緒にライブを作ったこともあります。
また 羽美 ともジャガイモンプロジェクト所属ということもあってかなり以前からSNSを通じて繋がっていただいてはいましたが、座組のほとんどが初めて顔を合わせる人ばかり。

これは自他共に認める ” 極度の人見知り ” の 金澤 さん にとってはものすごく高いハードルだったと思います。

ですが実際のところは迎える側もしっかりとそのあたりをフォローしてくれたようで、何の心配もなく、そして何の障壁もなく、いたってスムーズに合流ができたようです。

金澤 さん にとってはこれが本当に嬉しく、そして安心した出来事だったようです。

関係者のみのある挨拶の時、「 こんな私を優しく迎え入れてくれて ・・・ 」 と大粒の涙を流した 金澤 さん
そしてそれを見た周りの子達がすぐにそんな彼女を抱きしめている光景は、この座組の本当のチームワークを見るようで、それを目の当たりにした我々スタッフも大いに感動したものでした。

金澤 さん が言った、” こんな私 ” という一言。
それは間違いなく、” そんなあなた ” だからこそみんなが今回のような形で迎え入れてくれたのだと思いますし、そして ” そんなあなた ” の一生懸命な姿や真っすぐな心があったからこそこの座組全体がより一層強く繋がったのだとも思います。

1つチームは1人だけが突っ走っていったり、1人だけで引っ張ろうとしてもなかなかうまくいかないものです。
みんながお互いに支え合い、お互いに引っ張りったり背中を押したりしながら進んでいくものだと思います。

ですがやはり、この座組には ” そんなあなた ” がいてくれたからこそ本当に強いチームワークがあったと思いますし、結果として素晴らしいものを作ることができたのだと思います。
私自身も1人の関係者として、そんな 金澤 さん には心から感謝の気持ちでいっぱいです。


公演スタートの数日前、私が稽古場を訪れた際、何よりも一番先に大きな衝撃を受けたのは 金澤 さん の強くて真っすぐな眼差しでした。
この日の稽古は 金澤 さん の台詞で始まる今回の冒頭のシーンの精度を上げる作業から始まりました。

直前までは稽古場の端の方でゆっくりとしていた彼女でしたが、稽古が始まると仮想舞台の真ん中に立ち、そして真正面へと眼差しを向けました。
あの瞳から感じられる強い力は、その後公演本番を迎え、そしてその全てが終わり、更にしばらく経ったのちも全く記憶が薄らぐことはありません。

稽古場であの瞳を見た時、私はその後へと続く稽古を見る前に、この作品の素晴らしい出来と、そして公演自体の成功を確信しました。
あの日は稽古場での様子を約8時間見ていたのですが、実はその冒頭のほんの数秒、というよりも一瞬で涙が流れそうになってしまいました。

彼女達の稽古が続くすぐ真正面に座っていたこともあり、私がここで動揺を見せてしまっては稽古自体を止めてしまいかねない状況でしたのでグッとこらえましたが、それでも瞬間的に鳥肌が立ち、体が震えるのを感じました。
それほどに 金澤 さん の眼力は私の心を貫いたのです。


公演が始まってからも彼女の良い意味での安定感と、静かに座組を支える姿勢は本当に流石だなと思える瞬間がたくさんありました。

北野美環 を演じるにあたっても、その天真爛漫で素直なキャラクターが本当によく表現できていたのではないかと思います。

私が特に好きだったのは 美環 の台詞の語尾の音です。
そこには作品自体には具体的には描かれていない、美環 の人間性が見えてくるようで、物語の中の仲間に対する想いが伝わるようで、本当に良かったと思います。

他の人がこの役をやったらきっとその部分というのは同じようにはならないと思いますし、そこにはそれぞれの個性も出ると思います。
そんな中で、やはり今回の 美環 は本当に 金澤 さん で良かったなと、心から想えるポイントでもありました。


周りに対しての気遣いも随所に感じました。
前述の ” 特注サクマドロップス ” の件もそうですし、他にも自分のことを見つめながらも、同時にしっかりと周りを見ているのがよく伝わってきました。

これは彼女が長い期間、メジャーグループのリーダーを務めていたところから来るものもあるのでしょうが、やはり彼女自身の本質にそういうところがあるのだろうと推測します。

そんな彼女を応援すべく、そして晴れの舞台を目の前で確認するために、今回はたくさんのファンの方、” ゆうちゃんず ” のみなさんが道内に限らず遠方からも遠征で駆けつけてくださっていました。

立場や環境が変わっても、そして時代が流れてもなおこうして応援してくださるファンのみなさんというのは本当にありがたい存在ですし、そして何よりも今回も 金澤 さん 本人の力にもなったと思います。

これも全ては 金澤 さん にそうしてあげたいと思わせる魅力があってこそのものだと思います。


公演が終わって翌日からはすぐに東京でのお仕事に戻った 金澤 さん
今回この座組に加わり、納谷 さん の指導を受けたことは本当に大きな出来事だったようです。

過去には東京でのアリスインプロジェクト公演にも何度か出演したことのある彼女ですが、またこの北海道の舞台でも観られることを私は確信しています。

この期間中、苫小牧の実家と札幌の往復だでもけ本当に大変だったと思いますし、一層に疲れることでもあったと思います。
それでも最後までそんな大変な様子は何一つ垣間見せることもありませんでした。

今回、会場で 金澤 さん を見たというお客様が、「 すごい芸能人オーラだった 」 ということもおっしゃっていましたが、舞台の上ばかりではなく、普段からのそういう姿勢がオーラとなって彼女自身を包み込んでいるのだとも思います。

私自身、これまでにライブでキラキラしている 金澤 さん の姿を直接観たことはありましたが、こうして演じる彼女の姿は初めて観ました。
ライブで歌い踊る彼女も本当に素敵だと思っていましたが、舞台でお芝居をする彼女もとても素敵でしたし、本当にキラキラしていました。

今回このような機会に、この場所で 金澤有希 という1人の素晴らしい女優さんを観られたこと。
これは今も、そしてこの先も、私の自慢です。




北野苺南田梨花 の2役を演じたのは、アリスインプロジェクト札幌公演3年連続出演のベテラン、塚本奈緒美 さん

女性に対して安易に ” ベテラン ” という言葉を使ってしまうのは少し気の引ける部分もありますが、それでも私は彼女に対しては ” ベテラン ” という言葉を持って敬意を表したいと思います。

数多いる札幌の役者さんの中には 塚本 さん と同世代の役者さんも少なくはないと思います。
ですが彼女がこうして3年連続で起用されているのには明確な理由があると、本番のみならず様々な場面を見ていて感じることがあります。

彼女の人気というのは、誰もが認めるその可愛いらしさと、他の誰もが持ち合わせていないような一種独特な雰囲気にも由来していると思います。
また当然、キャリアの長い役者としての実力や、交流などを通じて伝えられる何とも言えない人懐っこさにもその理由があると思います。

私には彼女の魅力を言葉でうまく表現することができません。
知れば知るほどその雰囲気にこちらが飲み込まれていくのを感じますし、それはまさに ” 塚本奈緒美ワールド ” と表現しても過言ではないと思います。

座組にとっても周りにいる人がみんな優しい笑顔になってしまうようなオーラを持っていると思いますし、それは稽古期間中、小西麻里菜 さん がツイッターを通じて発信していた、” 今日のつかもとなおみ ” の動画にも表れていると思います。

この人に触れると、若い世代の人も、同世代の人も、そして我々のように上の世代の人間も、本当に多くの人がキュンとしてしまうのを感じたりもします。
本人がそれを意識してやっているのか、それとも全く無意識のうちに出来ているのかはわかりませんが、とにかく良い意味で ” 人たらし ” であり、そういう意味では ” 魔性の女 ” なんだとも思います。

一方、一昨年の初めてのアリスインプロジェクト札幌公演が行なわれた際、塚本 さん の情報として私のもとに一番最初に飛び込んできたのは、” 北海道演劇界の至宝 ” というキーワードです。
これはやはり誰もが認めるような演じることに対しての実力がこう言わせているのだと思います。

私が初めて彼女のことを直接観たのは一昨年のアリスインプロジェクト札幌公演。
彼女が演じた生徒会長・青池一磨は本当にセンセーショナルなものでした。

それ以前にもTVCMで彼女を見ることはありましたし、その後もCMのみならずバラエティ番組でも見ることができました。
また、昨年のアリスインプロジェクト札幌公演 「 みちこのみたせかい 」 にとどまらず、他の公演でも彼女の演じる姿を何度となく観てきました。

いつどんな場面でも、そしてどんなシチュエーションでも、私の彼女に対するイメージは崩れることはありませんでしたし、やはりそこには ” 北海道演劇界の至宝 ” というキーワードが付いて来ます。

まだ北海道内での活動がほとんどの彼女ですが、これがもし道外に飛び出すことがあったなら、このキーワードから、” 北海道 ” という部分だけが外れ、今以上に多くの人から評価される存在になっていくのだろうとも思います。

本人がそれを望んでいるかどうかは別として、もしそうなったとしたらそれは本当にすごいことですし、彼女にはそうなるべき資質が十分に備わっているのではないかとも思います。

ただ、一方ではそれは少し寂しい部分でもあり、もしそうなって彼女が全国的に羽ばたき、結果的にもし来年のアリスインプロジェクト札幌公演にいなかったとしたら、それはそれで大きな痛手を伴う部分でもあるのだとも思います。

もっと色々な場面で様々なことに挑戦する彼女を見てみたい気もしますが、いつまでも近くで見ていたい気もします。
きっとそんな私も、すでに彼女の魅力の沼にどっぷりとハマってしまっているのだろうと思います。


今回の作品で彼女の演じた 北野苺 はすでに亡くなった人の役です。
考えてみると、昨年も一昨年も、このアリスイン札幌の作品では、彼女は途中で死に至ります。

外部の公演でも随分と死ぬ機会が多いようですし、一時期は毎回必ず死んでいたと彼女自身が言っていました。
偶然か、それとも必然だったのか、それは分かりませんが、それでも彼女の演技力がそんな儚さや淋しさもしっかりと表現してくれているのは間違いないことだと思います。

今回の作品の 北野苺 は、当たり前のことですが普段の彼女とは違うところがたくさんあります。
更に中では素の彼女が到底やらなそうなことを突然やってみたりポーズをとってみたりと、そういう意味でも楽しい部分がたくさんありました。

役者さんですからそういう意味では常に違った人間を演じることができるのは最低限なのかもしれませんが、それでもやはり他の10代、20代前半の子達に囲まれると、その演技力の秀でた部分を再実感することができます。

常に孫の 美環凛胡 を優しく包み込み、そして時に物語を引っ張っていく。
そんな様子には、演じるということを超えた包容力のようなものを感じましたし、” 塚本奈緒美ここにあり ” といった安心感さえ受け取りました。


南田梨花 でのセーラー服姿は、これは誰もがニヤニヤしながら観てしまったのではないでしょうか。
どれだけ可愛いんだ、と、改めて感じました。

またやはり1人2役となると、それぞれの役の違いも出さなければなりません。
北野苺 は見た目は若くても中身はお婆ちゃんですし、南田梨花 はセーラー服を着ているということは学生でしょう。

そんな2人も、話し方や表情も違っており、さすがの演じ分けだったと思います。


1年目に 塚本 さん に起こったたくさんのアイドルファンの方からの ” ムーブメント ” は今ではすでに ” 安定期 ” に突入し、更に大きな渦となって札幌の演劇界を揺さぶっていると思います。
今年の物販でも彼女のグッズが次々と購入されていく様子が伝わってきましたし、握手会でも常に人気キャストの1人でした。

アイドルヲタクの方が使う用語に、” 無双 ” と単語があります。
意味としては、圧倒的な様 といったところでしょうか。

そういう意味ではこれからも間違いなく続いていくはずです、” 塚本無双 ” が。
これから更に円熟味を増していくであろう彼女の活躍がとても楽しみです。




この座組には ” 北海道演劇界の至宝 ” と言われる役者さんがもう1人。
それが今回、宮脇千鶴 を演じた 岩杉夏 さん です。

岩杉 さん もアリスインプロジェクト札幌公演には3年連続の出演で、塚本 さん とは同じ年のベテラン役者さんです。

私は彼女の ” 声 ” が大好きです。
もとい、” 声も ” 大好きです。

それは演じている時ばかりでなく、普段の日常の中でもいつも感じることですが、とにかく ” 声も ” 本当に良いんです。

昨年末には、『 ユー・キャント・ハリー・ラブ! 』 という、ラジオから流れてくる彼女の ” 声 ” に主人公が恋をしてしまい、やがて暴走していくという演劇作品が弦巻楽団さんによって札幌で公演されましたが、私はその主人公の気持ちがものすごくわかる気がしますし、ラジオから流れてくるその声に、岩杉 さん はこの上なく適役だったのだろうと想像しています。

音のことですからそれをこうして文字でお伝えするのは難しい部分がありますが、一度彼女の声に触れていただけると、この私の言っていること、言いたいことはみなさんに真っすぐ受け入れてもらえるものと確信しています。

彼女も昨年はテレビのバラエティ番組などで声優をしたこともありますが、私はこの 岩杉 さん 、そして前述の 塚本 さん の声は、いくら油断していても、画面を見ていなくてもすぐに気が付くことができます。
それほどにただ作られたのではない、” 素の良い音 ” であり、本当に ” 気持ちのいい音 ” なのです。


今回の作品では 宮脇千鶴 は、演劇部とダンス部の両方の顧問を務める先生役。

物語の中に生徒はたくさん出てきても先生は2人しか出てきませんから、そういう意味でも他の人との違いは明確に出さなければならない役どころです。

前半は頼り甲斐なく生徒を困らせてしまうような先生。
対して後半は頼り甲斐のある先生へと変遷していきますが、特にこの演じ分けが流石だなと感じました。

舞台での台詞ですから、客席で観て聞いている人に対して届かなければならないのは当然。
ですから自分の口から出た台詞は常に前に向かって飛んでいきます。

ですが、前半のそれは迷いを持ったり素直になれない 宮脇 先生 の心情を表すかのように、まるでそれが彼女の頭の上あたりでモワッとした霧のような形状を持っているかのように感じました。

台詞としては客席で観ている側にもしっかりと届いているのですが、宮脇 先生 の気持ちとしては素直に相手に向かって飛んでいっていないような、そんな表現を感じました。

一方、後半部の 宮脇 先生 は、心の中の迷いが吹き飛び、自分に素直になると共に気持ちが生徒達の方向へと向いている。
そこで出てくる台詞達は前半のそれとは違って、前に前に向かって飛んでいっているように感じました。
この違いに ” 至宝 ” たる凄さを感じました。

どちらの 宮脇 先生 も、岩杉 さん が演じているという意味では同じですし、当然物語の上でも1人の人です。
ですが、演じるという意味では良い意味で明らかに違いがあった。

本当に流石だなと感じました。


一昨年のアリスインプロジェクト札幌公演では自衛官・柏村香と竹内珠子の変則ダブルキャスト。
昨年は学者・倉橋玉枝、そして今年は教師・宮脇千鶴。

それぞれがその年の座組の中ではきっと彼女にしか演じられない役だったのではないかと思います。
それだけ彼女には他の人には到底真似できないような演技力や個性があります。

握手会を見ていても、男性のみならず女性ファンもとても多い 岩杉 さん
これからも彼女にしかない魅力を持って、その座組や札幌の演劇界を引っ張っていってくれるのだろうと確信しています。




生徒会長・ 若葉香織小西麻里菜 さん
こちらも3年連続でのアリスインプロジェクト札幌公演出演です。

あるお客様がおっしゃっていました。
「 小西さんはアリスイン札幌にとっての宝だ 」 と。
私もこのご意見には完全同意をもって賛成したいですし、スタッフも含めて異論は全く出ないことでしょう。

私は昨年の公演のレポートで一昨年を振り返り、彼女が演じた役が1年の時を経て愛され続けている、という表現をしました。

しかし、それはそのみなさんからの愛情や自ら演じた役が作ってしまうイメージが、場合によっては次の作品に入っていく時の彼女自身の障壁になってしまうのではないかとすら思えるほど。
それだけその1つの役に対しての入り込み方や、その役どころを活かす表現は目を見張るものがあります。

一昨年はヤンキー・紅島、昨年はジャーナリスト・車谷。
そして昨年末にはイレブンナイン公演 『 サクラダファミリー 』 にも出演するなど、役者としての幅も評価も確実に広がってきています。

私自身、小西 さん が役者として演じる作品としては、前述の3作品を目の前で観てきましたが、どれも ” ハマり役 ” に感じられ、どの役どころを見ても、「 本当の小西さんってこんな人なんだろうな 」 と思わされるような感じが凄くしました。

同じようにそんな作品を観た方、特にそれまで 小西 さん を知らなかった方々にとってみれば、「 この人は普段からこういう人なんだ 」 というイメージを抱いた方が少なくなかったろうと想像します。
それだけ彼女自身の ” 演じる ” というものにはパワーがあり、そして観る人に大きな印象を残す何かがあるのです。


今年の 若葉香織 は、最初の登場シーンからクセの強い、そして絶妙に嫌味感や威圧感のある役柄でした。

演じる面でも他の誰ともなかなか仲良くしない、そしてある意味では孤独感すら漂う孤高の存在だったように感じますが、そんな全ての要素を 小西 さん は本当にしっかりと演じてくれました。

本当に過去最高の ” ハマり役 ” だったと思いますし、これ以上にその意味を表現できる言葉や単語があるのなら、私にぜひ教えていただきたいところです。

嫌味のこめられたものの言い様や、迫力のあるその態度。
立ち居振る舞いも送られる視線も、その全てが彼女だからこそできるものに感じましたし、この座組で彼女以上に 若葉香織 をこのような形で演じられる人は絶対に存在しないだろうとも感じました。

普段の ” 演じていない ” 彼女の姿もよく知っている私ですら、「 これが本当の小西さんなのでは!? 」 と思ってしまうほど、若葉香織 という役どころと、そこに立っている 小西 さん とが ” イコール ” で結ばれるような気さえしましたし、小西 さん ありきで形成されていった 若葉香織 だったとも思います。

いつかの握手会でマイクを持った 小西 さん は、「 本当の小西麻里菜は怖くないです! 」 と言っていたのが印象的でしたが、それだけそういう感想が彼女自身にも寄せられたということでしょう。

握手会で直接彼女に触れた人にとっては本当の彼女を垣間見ることもできたと思いますが、やはりそれだけ本当に素晴らしい演技力でしたし、きっとここから先、しばらく 小西 さん 自身に 若葉香織 の影を引きずる人は少なくないと思います。


普段はシンガーとしてステージに立ち、歌でもたくさんの人を魅了している彼女。
昨年にはジャガイモンプロジェクトのイベントにも参加していただき、我が士幌町にもそんな歌声に惚れ込んだ人がたくさんいたようです。

今回の作品でもオープニングから全員での歌とダンスがありましたが、そんな中でも 小西 さん の歌声はやはりよく響いてもきますし、彼女の歌う歌声には歌詞に表現された意味や想いがしっかりと乗り、そしてこちらへと伝わってきます。

この公演を通じて彼女のことを知った方にはぜひステージの上で歌う彼女もいつかどこかで見ていただければなと思います。
きっと、いや間違いなくまた新しい彼女の魅力を見つけることができると思います。
そしてそこには嫌味感も威圧感もなく笑顔で溢れ、本当に素敵でかっこいい ” シンガー小西麻里菜 ” の姿があるはずです。

まさに、” ミス・アリスインプロジェクト札幌 ” 。
しかしそれだけにはとどまらない多彩な才能と魅力に溢れる女性です。




ダンス部部長・ 橋本綾久 を演じたのは、こちらもアリスインプロジェクト札幌公演3年連続出演の 横山奈央 さん
しかし彼女にとって今年までの3回というのはその度に違う環境で迎える3回でした。

一昨年の1回目は、エイベックス さん のグループアイドル・ サッポロSnow♡Loveits に所属していました。
2回目の昨年は、グループを卒業し、役者を目指してその歩みを進め始めたところでした。

そして今年の3年目。
所属事務所を退所し、フリーとして新しい一歩を踏み出している彼女ですが、今春に公開された映画 『 プリンシパル〜恋する私はヒロインですか?〜 』 に出演するなど、その活躍の幅を確実に広げています。
それはきっとこれまでの演技や取り組みに対する純粋な評価だと思いますし、誰の力でもなく自ら掴み取ったものだとも思います。

今年の作品に関してもオーディションの時に披露したダンスは、納谷 さん をして、「 ダンスクイーンみたいだ 」 と言わせました。
昨年までの実績もありますし、ここでも純粋に評価を受けて今年のキャスティングを自ら手にしたのだと思います。

また、今年の全公演が終わった後、あるスタッフがスタッフしかいない場で 横山 さん を絶賛する声を上げました。
「 3年連続で主役を引き立てる脇役をやるというのは並大抵の精神力じゃない 」 と。
そして、「 この3年間で彼女の演技はものすごく上達している 」 と。

彼女がこの3年で演じてきた役は主役、もしくは主役級と称される役どころではありません。
自分より年下でタレント歴も短い子に先を越されてしまったようなこともあります。

それでも彼女が演じたそれぞれの役は、その時の物語に絶対的に必要な人物であり、そしてそのキャラクターに彼女が配役されてきたというのが、アリスイン札幌の中での彼女に対する評価であるとも思います。


更に、横山 さん はジャガイモンプロジェクトでのお付き合いも長く、すでに4年近くになっているでしょうか。
あの頃中学生だった女の子もこの春に高校を卒業し、もうすっかり大人の女性になっています。

やはりこの期間というのは相手に対しての思い入れも強くするものですし、だからこそ昨秋も彼女を士幌でのイベントに招致し、久々の凱旋を果たしてもらいました。

長い時間が経過しているからこそ、努力している姿も、苦労している様子も、時に悔しい想いをしているところも垣間見ています。
だからこそ、応援したい気持ちは一層強くもなります。


今年の作品ではダンス部の部長として、脇役として配されながらも、物語の流れの中ではキーポイントを握る役どころでもあり、そして色々な意味で個性を発揮できる役でもありました。

この3年、横山 さん が演じる役はいずれも、” 真面目な性格 ” が前面に押し出されたようなキャラクターでした。
しかしそんな中でも今年に関しては、昨年一昨年のような、真っすぐ前だけを向いたような真面目さではなく、愉快な部分も持ち合わせている真面目な子というような、同じ真面目でもちょっと違った性格を持ったキャラクターでした。

物語の中でもダンス部が自主練習をしているシーンなどは毎回のように少しずつ台詞や表現が違うというやり方がなされていましたが、橋本綾久 ではなく、横山 さん の ” 素 ” が出ているようにも観え、その雰囲気が会場全体にホッコリとしたムードを作り出していました。

観劇後に複数のお客様に聞いても、ダンス部のあのシーンが好きという意見が非常に多く、複数人数で繰り広げられるシーンではあったものの、あの雰囲気は間違いなく彼女が絶妙にリードすることによって作られていたと思います。

そこにはダンス部のチームワークの良さが手に取るように見えていましたが、あれは舞台の上のキャラクターのチームワークではなく、舞台以外の部分で育んだ、演じる彼女達自身のチームワークなのだろうとも感じました。
まさに今年の座組の仲の良さ、そして雰囲気の良さが現れるような1シーンでした。


横山 さん は今年の公演に際し、事前のチケットの手売りにも非常に力を入れていました。

今年の公演に向けての準備期間、チケットの販売が開始されて以降もこの座組の中の1人1人からはあまり積極的に発信が見られなかったように、私は感じていました。
SNSでの発信も明らかに弱く小さく、キャストが複数人数写った写真がアップされていても、そこには公演名も場所も日程も書かれていないというような、的を射ていない発信も少なくなかったと思います。

座組全体を見ても、SNSの発信によって宣伝広報をすることに慣れていないキャストが多いのは明らかで、当初チケットの動きが非常に鈍かったのは、チケット販売サイトの様子からみなさんにも伝わっていたと思います。
そんな状況の中、そういう事態にいち早く危機感を抱いたのは 横山 さん であり、その親友の 市山黎 さん だったようです。

2人はいち早く大通公園などでチケットの手売り販売を始め、それは複数回に渡って繰り返されました。
稽古が始まる前にも、お休みの日にも、ちょっとした空き時間を見つけては、時にまだ冷たい風の吹く屋外で、彼女達の努力は続いていました。

そんな彼女達の行動は、我々スタッフにとっても本当にありがたいことでしたし、キャスト自身がこうして危機感を持って物事に取り組んでくれるということがまた嬉しいことでもあります。

横山 さん は昨年も一昨年もアリスイン札幌の座組にいましたし、市山 さん も1年目のそれを経験しています。
そんなところからチケットの売れていくスピードやファンの方々の動きを見た時、自らの経験を持ってそれが危機感へと変わっていったのだと思います。

また、危機感を持つことは出来たとしてもそれを具体的な行動へと転化できるということは、出来そうでいてなかなか出来ることではありません。
私が初めて知った頃の彼女は本当に控えめな、同じグループの中でも一歩後ろに下がってみんなを見ているような印象を感じる子でしたが、この数年の様々な出来事や経験は彼女を確実に成長させてくれているようです。

仮定の話として、オーディションで誰を起用しようかと運営側で悩むことがあるとしたなら、そこに彼女のような子がいて、同じような実力の子がもう1人いたとすると、やはり彼女を起用するのではないかと思います。

1つ座組には、演技そのもののずば抜けた実力でチームを引っ張るような子もいれば、様々な取り組みや考え方自体でチームに大きな刺激を与えるような子もいると思います。

横山 さん は後者のような存在になれる資質を持っていると思いますし、そんな成長を見せてくれているとも感じますし、座組全体に対してそういう影響を与えられる存在にもなりつつあります。

ここまでの数年間の成長を直接見て、そして感じさせてくれているだけに、この先の彼女の更なる ” 伸び ” が楽しみです。
色んな意味でまだまだ ” 伸びしろ ” のある子だとも思います。

あのダンスの最中の自信に満ち溢れた表情も忘れられません。




横山 さん に触れたからには、次に挙げるのは 工藤夢心 さん にしたいと思います。

今回の作品で 長沼亜里沙 を演じた 夢心 さん は、元々は札幌で 横山 さん と同じアイドルグループで活動していました。
私が彼女と知り合ったのもやはりその頃です。

グループからの卒業後は役者を目指して高校卒業を機に東京へと上京。
一昨年はアリスインプロジェクト東京公演 『 みちこのみたせかい』 にも出演するなどして評価を得ています。
そんな 夢心 さん が今回の公演のために北海道に戻ってきてくれました。


彼女が演じた 長沼亜里沙 は他のどのキャラクターとも違った天真爛漫さを持っています。
空気感を掴めずにその場を乱してしまったり、1人で突っ走ってしまうキャラクターは、はっきりとしたキャラクターを打ち出す必要があり、どこかに遠慮や控えめな部分があっては成り立ちません。

そんな元気でいっぱいの前半部から、次第にチームに溶け込んでいく後半部は、キャラクターの個性の作り方も違っていたと思いますし、そういうものが求められた演出だったのではないかとも思います。

物語の中の役柄はニューヨークから突然戻ってきた、かつてはダンス部と演劇部の両方に所属していたエースということでしたが、そんな設定がそれを演じる 夢心 さん 自身と被る部分もあり、だからこそ私は彼女が最初に舞台に登場するシーンが大好きでもありました。

彼女自身が東京から地元に凱旋してこうして舞台に立っている状況と、長沼亜里沙 がニューヨークから突然戻ってくる状況は、結果的に彼女がこの役を演じることになったことで偶然重なったものではありますが、どこかでなんだか偶然ではないような、そんな気がしてならなかったです。


また今回、物語の中で何度も観られるダンスのシーンでは彼女を含めた部分で非常に感情的な瞬間がありました。

ダンスは様々なフォーメーションが用意され、それぞれの配置が次々に入れ替わって続いていくのですが、そんな中でセンターの 金澤 さん を挟むように、その両サイドに 夢心 さん横山 さん が配置されるシーンが何度かありました。

3人のことを詳しく知らない方にとっては他のフォーメーションと変わらない感情で見て過ごされると思いますが、私を含めて一部の人にとってはこれは非常に意味を感じるシーンでした。

この3人はいずれもかつては、 エイベックス さん のアイドルレーベルである ” アイドルストリート ” の所属でした。
現在は 金澤 さん のみがエイベックス所属で、2人はフリーとして活動していますが、元々は同じレーベル所属であり、時に同じステージに立つこともありました。

また、夢心 さん横山 さん は サッポロSnow♡Loveits という全く同じグループで同時期に活動しており、そのグループで士幌でライブをしてくれたこともあります。
更にそのグループの前身には、2人と時期こそ重ならないものの 金澤 さん も所属していたことがあります。

3人がいたレーベル ” アイドルストリート ” からは、後輩にあたる 夢心 さん横山 さん が一歩先に羽ばたき、つい先日、金澤 さん も所属グループの解散によってそこから巣立つこととなりました。

そんな3人が今回、この舞台の上で再び同じ場所に集い、そしてその3人が舞台の中央で舞っているのです。
この光景は本当にエモーショナル。
いわゆるヲタクのみなさんの使う用語で言えば ” エモい ” ものでした。


週末になって彼女達を追って遠方から遠征してきたファンのみなさんとも会場の外で話をしましたが、そんな光景がみなさんにとってもとても ” エモい ” ものだったようで、余計な言葉を並べなくても、お互い何を想っているかは手に取るようにわかりました。

今回はそんな彼女達が作る光景を、彼女達のことを長く応援するみなさんと一緒に観られただけでも、私は本当に幸せだったなと、改めて感じています。


そんな 夢心 さん も公演終了後にはそれほど間を開けることなくすぐに東京へと戻っていきました。

この1ヶ月半は彼女にとっても地元に凱旋できた夢のような日々だったかもしれませんが、ファンのみなさんや、かつて彼女をマネージャーとして支えるなどしたスタッフさん達にとっても特別な時間だったのだろうと、すぐ横で見ていて感じました。

またそれは私自身にとっても同じことで、やはり彼女がこうして地元で光り輝く姿というのは本当に嬉しいものでした。

東京に戻ってからもすぐに次の舞台が待っているそうで、更にその先も色々と活躍している彼女の姿が目に浮かぶようです。

今回の地元での経験が彼女にとってこれからの活動にとっての大きな糧になることを望んでいますし、またいつか今回のようにまた地元で彼女のキラキラした姿を見られる日が来ることも祈っています。

北海道はあなたがまた再び地元に凱旋してくれる日を楽しみに、いつでも両手を広げて待っています。




市山黎 さん が演じたのは、ラッパーの 瑞江理沙 でした。

横山 さん と共にチケットの手売りを本当に一生懸命に頑張った彼女は、一昨年のアリスインプロジェクト札幌公演初年度以来の復帰です。
実はこの3年のアリスイン札幌の実績で、このような形で復帰を果たしたのは 市山 さん ただ1人です。

一昨年、堂本千十合という役でアリスインプロジェクト札幌公演の舞台に立った彼女の演技が、私はあれからずっと印象に深く残っていました。

あの年、私と話をするたびに、「 私、どうでしたか? 」 と感想を求めてきた彼女。
私の答えは、「 個性的な演技がとても良かった 」 と、そのような回答だったと記憶しています。

また、複数回の観劇をした私に対して、「 1回目と2回目、どう違いましたか? 」 と単なる興味ではなく、しっかりとした探求心を持って訪ねてきた彼女には、素人の私からしても大きな可能性を感じたものでした。

あの時、舞台の上で台詞が1つ抜けてしまったことを反省しながらも、ただ悔やむだけではなくすぐに次に向けた切り替えと向上心を口にしていたのはとても印象的でしたし、幼い頃から役者さんをやっている人というのはこんな感じなんだなと素直に感心もしました。

” 個性的な演技 ” という部分では、何とも言えない淡々とした彼女の演技が私はとても好きで、そんな部分に魅力を感じたりもしていました。
ですから昨年の座組の中に彼女の名前がなかった時、私は何だかとても淋しい気持ちを感じたりもしていました。

その後彼女は同じ 劇団ひまわり さん の仲間と共にラジオで隔週のレギュラーを獲得。

残念ながらその番組はすでに終了してしまいましたが、その中で ”オンドラ ” というラジオドラマが月1本程度のペースで作られ、その中で再び彼女のあの ” らしい ” 演技を楽しむこともできました。

また、一昨年の公演以降、市山 さん とは、他の劇団の公演であったりちょっとしたイベントなどで偶然顔を合わせる機会が何度かあったりしたのですが、そんな時にも彼女の素晴らしさを感じる出来事がありました。
最近ではもう言ってくれなくなりましたが、私と顔を合わせるたびに挨拶に合わせて、「 市山です 」 と名前をしっかりと名乗るのです。

私はこの子が 市山黎 さん だということは漢字も含めてしっかりとわかっていましたし、劇団ひまわり所属だということも、1月24日生まれだということもちゃんと把握していました。

それでも彼女は私と顔を合わせる度に、「 市山です! 」 とこちらの目を見て訴えかけるかのように自己紹介をするのです。

彼女のこの行動。
少し不思議な光景に見えてしまうかもしれませんが、私はその度に本当に素晴らしいなと思っていました。

こういう世界で生きていこうとする以上、やはり相手に名前を覚えてもらうのは本当に大切なことですし、そうするために自分の名前を繰り返すことは自分自身をアピールするということに繋がります。

あんなにきれいな顔で真正面から目を見て、「 市山です! 」 と言われれば、しかもそれが何度か続けばどんな人でも確実に彼女の名前を覚えると思いますし、彼女の顔も覚えると思います。

それはタレントにとって、役者にとってはものすごくプラスになることなんだと思いますし、それを臆せずに自分から積極的にできる彼女はやはり素晴らしいと感じました。
でもさすがに最近は言ってくれませんがw


普段の 市山 さん は長い黒髪がとても似合う美少女です。
ですが今回はラッパーという役どころから髪を茶色にしてきました。
今回はそんな茶髪が本当によく似合っていましたし、これまでに見たことのない一面を見られたような気もしました。

瑞江理沙 は普通に話す台詞の量と、ラップを奏でる部分とではどちらが多かったでしょうか。
そう思えるくらいに物語の中で何度もラップを披露してくれました。

今回初めて彼女のことを知ったお客様の中には元々彼女がラップをやっているから、普段からそういう活動をしているからこの役に抜擢されたと思われていた方もいらしたそうで、それだけ彼女のラップが良い仕上がりになっていたという何よりの証拠だろうとも思います。

「 今までラップをやったことがない 」 と、いつかのSNSで言っていた彼女ですが、ラップの指導をいただいた 赤谷翔次郎 先生 のもと、いつの間にかその魅力にも取りつかれていったようです。

舞台で披露したラップも軽快で流暢。
お客様の間から、「 元々ラップをやっていた子 」 という話が出てくるのも頷ける成果を見せてくれました。

また、登場するところはラップばかりではなく、相棒の 大島由美 と共に生徒会長・ 若葉香織 を巻き込んで、毎回違うアドリブを見せてくれたり、出てくるたびに飴や焼きそばパンを食べていたりと、とにかく見た目にも面白い演出が随所に施されています。

物語の中でも最初はその場を乱してしまうような存在だったのに、気が付くと実は色んな人を繋げる接着剤のような役割となるラップ部。

冷静に考えて、歌、ダンス、台詞と、他のキャスト同様に覚えることもやることはたくさんあるのに、更にこれにラップがあるのですから人一倍大変です。
特にラップは相棒と色々なタイミングをピッタリと合わせる必要があり、更にその相棒は 西村摩利乃 さん国門紋朱 さん のダブルキャスト。
それぞれの相棒との様々な調整や練習は単純に作業が倍になるわけで、これも大変なことだったのではないかと思います。

おそらく、全体での稽古以外にも自主練習のようなものにも多くの時間を割いたのではないかと想像しています。


台詞の部分はやはり 市山 さん らしい個性は健在でした。
これは素直に嬉しかったです。

役者さんにも色々な役者さんがいると思いますし、アリスインプロジェクト札幌公演の3年間だけを振り返ってみても本当に色々な人がいたと思います。
そんな中でも彼女の存在自体も、役者としての独特な個性も、私は唯一無二だと思っています。

物語のアクセントとしても、そして作品性を上げる役割としても彼女の存在は貴重であり、そして是非これからも見てたいと思わせてくれる役者さんです。


更に、市山 さん が座組にいてくれることは、実はお芝居そのもの以外にも大きな役割を果たしてくれていると思っています。

一昨年の座組で、稽古中も本番が始まってからも、彼女を中心に盛り上がる笑いの輪がすごく気になっていました。

やらなければならない時に真剣になるのは当然として、それ以外のちょっとした休憩時間やリラックスできるようなタイミングで、本当に仲の良さを見せてくれていた彼女達。

そんな時にキャリアや年齢の垣根を越えて盛り上がる光景の中心に、いつも 市山 さん がいたような気がします。
そこから起こった笑いはまるで良い意味でのパンデミックのように広がり、そして座組全体の良い雰囲気を形成してくれていたと、私はスタッフ目線で見ていました。

この3年間を見ていても、集められたキャストの彼女達の中にはなぜか不思議と人見知りな子が多かった気がします。

そんな中でやはり彼女の存在というのは非常に貴重で、本人はどれほど認識しているかはわかりませんが、今年も座組のチームワークを真ん中からしっかりと支えてくれていたと思います。

これだけ大人数のキャストが集まる現場。
誰もが認めるこういうムードメーカーがいてくれることの意味というのは、単純に数字や何かで表すことのできない有益性があると確信していますし、それがこの座組においては 市山 さん なんだと思います。




今回の公演で、” 変則ダブルキャスト ” として活躍してくれた子が2人。

まずは月組で 北野凛胡 を、星組で 片岡観音子 を演じてくれたのは 齋藤千夏 さん
握手会で新たなムーブメントを起こしたあの 齋藤 さん です。

そしてもう1人は、月組で 片岡観音子 、星組で 北野凛胡 を演じた 塚原樹 さん

2人共に Casting Office EGG 所属、劇団フルーツバスケット所属。
小西麻里菜 さん の後輩にあたります。

今回の公演に向けてキャストを集めるにあたって、演出の納谷 さん の考えもあり、前年までよりも全体のアイドル性を少し下げ、お芝居寄りの役者さんを増やしたいとの考えがありました。
そんな中でその象徴ともなったのが今回初めてキャスティングされた Casting Office EGG さん の4人 ( 他に、駒津柚希 さん 、田川 麗捺 さん ) だったと思います。

共に所属劇団での何物にも代えがたい経験があり、今までのアリスイン札幌に無かった風を吹き込んでくれるであろうというのは、稽古開始前から十分に予想ができました。

その中でも今回、変則ダブルキャストをアリスインプロジェクト札幌公演としては2年ぶりに採用し、そこに起用された 齋藤 さん塚原 さん が色々な意味で作品の核になるのは間違いのないところ。

逆に言えば彼女達の出来如何が作品そのものの出来にも直結するわけで、もし本番までに精度が上がらなければ作品全体の精度もそれに準じたものになっていたでしょうし、当然座組全体に対しての影響も大きかったのではないかと思います。

特に 北野凛胡 は主役の 北野美環 の双子の妹。
物語の中でも重要な立ち位置を担っています。
ここが揺らいでしまうというのはある意味では許されるものではありません。

そして 片岡観音子 に関しても、物語の大きな流れを作っていく役割を果たすキーパーソンでもあり、舞台上にいる時間そのものは比較的短いですが、その分その中で個性を出し、そして観ている人にしっかりと印象を残すのは大変なことだとも思います。

ここの2役を変則ダブルキャストにすることで、彼女達の難しさというのは格段に上がったと思いますし、その大変さも苦労もやらなければならない作業も単純に2倍になったといっても過言ではないと思います。
ですがそんな中で、彼女達はこの役割を十分に果たし、そして期待に応えてくれたのではないかと思います。

聞くところによると、お互いに同じ役を交互にやるにあたって、入念な話し合いなどは稽古中もあまり行なっていなかったようです。
あえてそれをしないことによってそれぞれの考えのもとでのキャラクターが2人の中にそれぞれ形成されていったのだと思いますし、相手の意見に寄せることなく、自分の考えを貫いたことが全く無理のないところでの役作りにもなっていったのではないかと思います。

この公演の稽古から始まる一連の期間中、齋藤 さん塚原 さん と、駒津 さん田川 さん の、” エッグ4人組 ” は、SNSなどを通して見ていても、そして実際に現場で確認しても本当に仲が良く、いつも一緒にいるような印象を受けましたし、お互いがお互いを認め、そして支え合っている構図が見えてくるようでもありました。

彼女達4人はこれまで、外部での公演の多少の経験がある人もいますが、基本的にはこれまで劇団フルーツバスケットでの公演が主で、そこでの経験がほぼ全てとも言える状態。

それぞれに実力はあるのでしょうが、それでもやはりこうして今まで経験のない場所での挑戦というのは、ワクワクするような期待感と共に不安な気持ちも少なからず抱えていたのだと思います。

そんな中で普段から気の知れた仲間が近くにいてくれるということは本当に心強く、お互いに背中を守ってもらっているような気持ちで前に向かって色々なことに取り組めたのではないかとも思います。

正直なところ、最初の頃は彼女達の輪があまりに強固すぎて、逆に他の人がそこに入っていけないのではないかという不安すら感じてしまっていたのですが、公演最終盤にそんなことを気にしながら見ていると、彼女達が積極的に他のキャストのところに行ったり、逆に自分達の輪に引っ張り込んだりと、とても良い光景が広がっていました。

リラックスできる時にいくら一緒にキャッキャとしていても、いざ集中しなければならない時になれば途端に目つきがプロのそれに変わります。
そのあたりは流石に普段から役者として日々勉強している子達だなと感心もしました。


齋藤 さん北野凛胡 は、双子の姉の 北野美環 との間に ” 対等な関係性 ” を感じました。
双子の姉妹なのですから ” 対等 ” は当たり前でもあるとも言えますが、実際の兄弟姉妹でもお互いの持ち合わせている色々なものが作用してこれが単純に ” 対等 ” ではないというのは現実の世界でも得てしてあることだと思います。

ですがこの2人の間には性格やそれぞれの環境を越えた ” 対等 ” を感じました。

これは 齋藤 さん北野凛胡 というキャラクターにそういう部分を見出し、そしてそういう作りこみをしていったからではないかと思います。

一方、塚原 さん北野凛胡 には、北野美環 よりも一歩引いたような、姉妹なのにどこかに ” 遠慮 ” のあるような雰囲気を感じました。
これもきっと 塚原 さん が自分の 北野凛胡 にそういうキャラクター性を作っていったからだと想像しています。

この違いはそれぞれを見比べても面白いものでしたし、これも変則ダブルキャストを採用したことによる成果の1つだと思います。

物語中盤の 凛胡 は、美環 がいないことに対する淋しさや、みんなをまとめていくことに対する不安を見せることが多かったですが、終盤は前を向いて自信が溢れる姿へとなっていきました。

そこは作品そのものの描かれ方から、2人が作る 凛胡 はある程度共通のものとなっていくはずです。
ですが、序盤の部分では特に、齋藤 さん塚原 さん は、それぞれにそれぞれの 凛胡 を表現していました。

違いがよくわかる部分としてはぞれぞれの ” 顔の角度 ” の違いが気になりました。

齋藤 さん凛胡 は、序盤もしっかりと前を向いていて、色々な葛藤を抱える中でも仲間ともしっかりと向き合っている印象を受けました。
対して 塚原 さん凛胡 は序盤から比較的うつむき気味で、キャラクターとしての何らかの劣等感や、やはり仲間に対してもどこかに遠慮がある人間性を感じました。

これを彼女達2人が2つのキャラクターについて入念な話し合いを重ねていたとしたら、場合によってはお互いを見ることでどんどんその2つが似通ったものになっていってしまったかもしれません。

また、話し合ったことで意識的にズラしていくことも可能だったでしょうが、今回の場合はそうではなく、稽古期間にお互いを見ることはあったにしても、結果的にはそれぞれが自分自身のキャラクターを追及した結果、それぞれの味のある2つのキャラクターが生まれました。

同じ台本で、同じ演出家のもと、周りのキャストも同じ状況で作られたお芝居のはずですが、役者自身の自らのキャラクターに対する想像が違うことで、別々のものが出来上がる。
これは本当に面白いことです。


一方、塚原 さん片岡観音子 には、ある種の ” 淋しさ ” から来る ” 強い孤独感 ” を感じました。
齋藤 さん片岡観音子 には、” 強い意思 ” から来る ” 強い孤独感 ” を感じました。

片岡観音子 は、他の登場人物とは一線を引いたような、どのグループにも入らない ” 孤独感 ” を抱えています。
その孤独は、北野美環 がいなくなってしまったことによってそうならざるを得なかったものもあれば、自らの意志によってそうしたものもあると思います。

この孤独に至るまでのプロセスや、その孤独を経て現在はどうなっているのかということは詳しくは台本には書かれていません。
やはりここは演出家と役者自身の想像によって作り広げられていくものです。

ここで2人の違いが一番表れていたところは ” 語尾 ” だったのではないかと思います。

塚原 さん観音子 は、話し始めから語尾までに抑揚をあまり作らず、そこに感情が見えてこないことで作られる ” 孤独感 ” が描かれていたように思います。

齋藤 さん観音子 は、語尾が強く、そこに 観音子 の感情が見えました。

そしてどちらの 観音子 ともに、最後はそんな ” 孤独感 ” から解放され、ようやくみんなと1つのグループになれることで、最高の笑顔が見られます。
前半部で全く笑わない、誰とも同調しないような 観音子 を見てきているだけに、その笑顔や嬉しい感情の出し方というのは 観音子 を演じる上ではある種のキーポイントになっているとも言えると思いますが、ここはどちらの 観音子 もとても素敵に表現されており、客席で観ていた私も自然と笑顔になってしまいました。


演じる部分ばかりでなく、この変則ダブルキャストにおいてはダンスでも非常に苦労する部分が多かったと思います。

片岡観音子北野凛胡 も最終盤の部分ではしっかりと他の人と同じように踊れ、そしてみんなで揃ったラインダンスを見せてくれます。
しかし、凛胡 に関しては前半部は全く踊れないという演技が必要で、これは本来の稽古を経てちゃんとダンスを習得している 齋藤 さん 自身、塚原 さん 自身には大変な作業だったのではないかと思います。

周りのみんながちゃんとやっている中で、本当は自分も出来るのにあえてズラすというのは想像以上に大変なことだと思いますが、これが2人共に絶妙に巧妙にズレており、そこに 凛胡 の可愛さが垣間見えたり、ちょっとした瞬間に中身の2人の可愛らしさも見えているような気がしました。

特にダンス部が自主練習をしているシーンではそれが顕著でした。

アドリブを多く盛り込み、結果的にそれぞれの ” 素 ” が見える中で展開していたこのシーン。
ダンスのズレ方がとても素敵でもありました。

” ズレ方が素敵 ”
これだけ書くとなんのこっちゃというも感じも否めませんが、実際に劇場でその様子を観劇いただいた方には十分にご理解いただけるのではないかと思っています。

凛胡 のズレたダンスが楽しい雰囲気を作り、周りのダンス部の仲間がその雰囲気を助長し、結果として作品全体でも本当に印象的なシーンが出来上がったのではないかと思います。

また、大千穐楽の 塚原 さん凛胡 を演じる回では、これまでのアリスインプロジェクト札幌公演では見たことのなかった展開が起きました。

ダンス部の動きに合わせて客席の最前列にいらした数名の方が同じように動き出したことで、舞台の上と下とで一緒にダンスする状況が生まれました。

するとこれに対して反応を見せたダンス部の中でも 塚原 さん がいち早くそのお客様に対して突然話しかけ、ちょっとしたやり取りが発生したことで会場が大爆笑に包まれたのです。

これはある意味では大きな勇気です。
そこでお客様を巻き込んでしまうことで、その相手からどんな反応が返ってくるかは事前に想像することはできず、場合によってはお芝居そのものの流れか切れてしまう可能性や危険性もあったと思います。

自分達のお芝居の進める中で目の前のそれを無いものとして進んでいくのも当然ありだと思いますし、そのシーンの雰囲気に合わせたその時々の対応もあると思います。

ですがこれに対して 塚原 さん はこれを無視することなく思い切り反応を見せたのです。
あの瞬間は 北野凛子 というよりも、塚原樹 としての要素もかなり強くなっていたと思います。

元々このシーンは、登場人物のそれぞれの ” 素 ” が活かされた、かなり自由度の高いシーンでしたからそんな反応もありだったと思いますし、結果としては大爆笑の直後にはすぐに本来のお芝居に戻り、それがある種華麗にも見えました。

また同じシーンでは、塚原 さん がズレたダンスをちょっとニヤニヤしながらやっているのが、周りがやがて1つのチームにまとまっていく中での 凛胡 の心情を表しているかのようにも観えました。

一方で 齋藤 さん が演じた 凛胡 のこの部分では、「 あれ? アレ? 」 と、ちょっと自信を持ってやっているのに結果的になぜかズレていることに対しての疑問を持っているような表情が感じ取れました。

この2人の 凛胡 の違いも面白かったと思います。


大千穐楽後のそれぞれからの挨拶の時、齋藤 さん は、「 フルーツバスケット以外では初めてのお芝居だった ・・・ 」 と話していました。
が、そんな話をしだした頃から舞台上の数人がザワザワと ・・・。
どうやら2011年に出演した某劇団四季さんの大きな舞台のことをすっかり忘れていたようです。

そんなツッコミを受けた彼女は、「 これだけお芝居寄りのものは初めてでした 」 ということで話をしっかりとまとめてくれましたが、それだけ今回の舞台が彼女に対して大きなものを残したということでしょう。

だからこそ、そんな間違いも我々スタッフにとってはちょっと嬉しかったりもしました。


今回の舞台はこの2人がそれぞれどちらかの役でシングルキャストであったとしてもきっと面白いものが観られたのだろうと思いますが、これが変則ダブルキャストを採用したことでより一層の魅力を増したように感じました。

凛胡 を演じることを考えることで、自分の中での 観音子 の描き方にも影響が出てくるものだと思いますし、その逆も言えると思います。

齋藤千夏 さん塚原樹 さん
2人の 北野凛胡 と2人の 片岡観音子
それぞれのそれぞれに、色んなものが見えてくる、そんな変則ダブルキャストでした。

一歩舞台裏に入ると本当に笑顔の絶えない2人。
それぞれとお話もさせていただきましたが、とても魅力的な女の子でした。

そんな魅力が、今回のアリスインプロジェクト札幌公演の出演をきっかけにたくさんの人に伝わり、そしてこれが色々なものを巻き込んで大きく広がっていくのも時間の問題だと思います。




演劇部の元部長、百合園絵里 を演じたのは 田川麗捺 さん
齋藤 さん塚原 さん と同じく Casting Office EGG 所属、劇団フルーツバスケット所属で今回アリスインプロジェクト札幌公演初挑戦の役者さんです。

田川 さん のプロフィールを見ると、2005年から劇団の定期公演に出演しているとあります。
2001年生まれの彼女ですから、本当に幼少の頃からこの世界にいる、ベテランに区分しても遜色ない活動歴を持つ子です。

そんな彼女に今回与えられた役は演劇部の元部長。
台本によると、” 大女優の貫禄 ” と書かれており、最初の登場シーンからインパクトのあるお芝居が要求される役どころでもありました。

” お芝居の中での演技 ” 更には ” お芝居の中でお芝居をしている演技 ” 。

この2つの使い分けは、というよりも、この2つを観劇している側の人がわかるようにするための演技は、自分自身が1人の 百合園絵里 を演じる中でも違いを出さなければなりません。
これは明らかに難しい部分だったのではないだろうかと思います。

しかしこの壁を 田川 さん は自らの経験値を持って乗り越えてくれたと思います。

舞台に出てきた瞬間からその空気感を一気に変える存在感も持っていると思います。
また今回はその彼女自身の存在感に合わせて、百合園絵里 という個性のある役どころが重なり、本当にインパクトのあるキャラクターが誕生したと思います。

この 百合園絵里 も台本の解釈によっては色々な方向性の個性を出すこともできれば、演じる人が変わればかなり違った 百合園絵里 が仕上がってくると思います。
そんな中でも今回彼女が演じたものは、本当に個性に溢れ、ちょっとした想像を飛び抜ける何かすらあったようにも感じます。

田川 さん 程のキャリアでも、今回のように1度の公演で同じ役で8回も舞台に上がるという経験は初めてだったそう。

ましてや自分が長い間活動している劇団ではなく、外部で初めて経験するガールズ演劇。
これはキャリアがあるだけに余計にプレッシャーのようなものもあったのではないかと想像します。

それでもやはり彼女自身も前述のエッグ4人組のチームワークを中心に、同世代の周りの子達と同じものを作っていくということは、勇気にも新しい刺激にもなったのではないかと思います。


更に、田川 さん のお芝居を見ていて、発声の仕方が、「 本物の役者さんだな 」 と感じるところが多々ありました。

百合園絵里 の最初の登場シーンもそうですが、いわゆる ” お芝居の中でお芝居 ” をしているところでの彼女の声は、まさに発声の訓練の賜物だと思います。
あれはすぐに誰でも真似出来るようなものではありません。

舞台裏で見せてくれる、ちょっとした合間に出てくる笑顔の奥には、今年ここに来るまでに通ってきた数々のものが垣間見えるようでもありました。




同じく Casting Office EGG 所属の 駒津柚希 さん が演じたのは、演劇部部長の 平山樹
彼女の最初の登場シーンもとても印象的なものでした。

大女優然とした、インパクトの大きな演劇部元部長の 百合園絵里 が登場した直後に出てくる 平山樹
ここは 平山樹 というものを押し出すのは非常に難しい部分でもあったと思いますが、彼女は自分の持っている武器を使って、その難しさを払拭しました。


駒津 さん は、現在は劇団を卒団し、シンガーとしての活動もしています。
そんな彼女から出てくる歌声は本当に迫力満点で、公演前にもSNSを通じてそんな一端が公開されるなどしていました。

アリスイン札幌での歌姫と言えばやはり何と言っても 小西麻里菜 さん だと思いますが、駒津 さん のそれは 小西 さん の歌声を追随するような、そして更なる飛躍も大いに期待できるような、そんな凄さを感じさせてくれます。

そんな彼女がまるで歌を奏でるかの如くの発声で舞台に入ってきた時、それまでは 百合園絵里 に向かていた注目が一気にそちらへと向いたのが手に取るようにわかりました。

またその後の演技でもその声は常に健在で、彼女の言葉は常に音色を伴ってこちらに聴こえてきました。
彼女が出てくるとその場がミュージカルの現場に変わったようにさえ感じました。

あの声は普段からボイスレッスンを重ねていなければ出る声ではありません。
そう考えると、改めて彼女の力を知らされるような思いもしましたし、そんな彼女達を擁する Casting Office EGG さん の凄さも再実感しました。


駒津 さん は現在高校2年生。
あんな凄い歌を歌える高校生がいることに改めて驚きを感じますし、大きな将来性も感じます。

今回、公演後に彼女の歌をみんなで聴けるちょっとした機会があったのですが、その場にいた全員が一瞬の間を置いてから感嘆の声を上げたのもとても印象的でした。


物語の中で彼女が少し歌を歌うシーンがありましたが、そこは多くの方の笑いを誘うものでした。
これは彼女の歌の実力を演出の 納谷 さん が逆手にとって面白く仕上げたものです。

実はこのシーン、私が本番開始数日前の稽古場で最初に観た時には、ほぼ普通に歌っているだけでした。
が、その目の前で 納谷 さん の手が加えられ、出だしのボリュームの上がるタイミングをあえてズラし、更に途中のボリュームを一気に下げる大袈裟な抑揚をつけることで笑いを狙いに行きました、

更に、私が現場に再合流した本番4日目には、このシーンは 駒津 さん の歌に更に極端な演出が加えられ、歌の途中で声がかすれると会場中からは演出の狙い通りの笑いが起きていました。
これはこの狙いを知ってる人にとっては会心だったと思います。

納谷 さん の演出は本番前に全てが完成してしまうのではなく、本番が始まってからも常に変遷していきます。
このシーンもまさにその変遷にのったものでした。

でもやはりこれを1回だけ観られた方にとっては、彼女が一生懸命歌おうとしたけれど、声がかすれてしまったと捉えた方もいらしたのではないかと思います。
それはそれでこの物語の中では笑いに繋がる部分ではあったかもしれませんが。


そんな彼女ですが、本来の 駒津柚希 さん は間違いなく素敵なシンガーだと思いますし、それはあの声を聴いただけでも確信できるものかもしれません。
少なくとも公演後にそれを聞いた私達スタッフはみんな彼女の歌の音色に心を奪われました。

これからもライブ活動なども行なっていくようです。
是非ともそんな姿も、ライブ会場で観てあげてほしいと思いますし、応援いただきたいと思います。




演劇部の 永山雫 を演じたのは、鈴木花穂 さん

アリスインプロジェクト札幌公演では3年連続の出演をした上、更にアリスイン東京の舞台でも 『 アリスインデッドリースクール パラドックス 』 『 スーパーマンガ対戦オルタナティブ 』 と2度の出演。
更に昨冬にはイレブンナイン公演 『 サクラダファミリー 』 にも出演するなど、活躍の場がどんどん広がっている個性派タレントさんです。

彼女は、まさに ” 個性 ” のかたまり。
他の誰とも違う ” 愛されキャラ ” です。

そんなみんなに愛される ” かほにゃん ” だからこそ、アリスインプロジェクト札幌公演で3年連続起用されているのはある意味必然的でもあり、今更いなくなってしまうのはもう考えられない。
それが ” かほにゃん ” でもあります。

札幌のみならずアリスイン東京でも起用され、あちらでもやはり ” かほにゃん ” として他のキャストからも愛されていたようです。
これは彼女がキャラクターを作っているのではなく、それが本物の ” かほにゃん ” だからに間違いありません。

東京の舞台での彼女について、それを直接観劇された方から色々と話を聞くことができたのですが、やはり個性の光る存在感であり、その個性を生かした演出がなされていたそうです。

その演出方法は演出家が違っている今回の札幌でも同様で、やはり彼女の個性を生かした、可愛い演出が随所に見られました。

彼女から発せられる高い声につられるように周りの人までそんな喋り方になってみたり、突然空気を読まないような声を出してみたりと、これも完全に彼女自身の声があるからこそのものですし、これを普通の声でやってみるとあまり面白くもなければ印象にも残らないと思います。
しかしこれを ” かほにゃん ” がやることによって、印象的なものにもなれば、なんだか面白いものにもなったりします。

彼女の場合、彼女自身が与えられた役に寄せていくのではなく、彼女に合わせた役を台本を軸に再構築していくというような構図があるようにも感じます。

” 個性 ” というのは時に武器にもなりますが、時にはあまりにそれが強いと自分自身の壁になってしまうこともあると思います。
個性が強すぎて使えないとか、ここに個性は必要ないとか、そういう状況の時だってあると思います。
ですが彼女の個性は、そんなものすら乗り越えて、使う側に ” 使いたい ” と思わせる何かがあるのだと思います。

また彼女のような個性は、そこにいてくれるだけで座組全体を印象的にすらしてしまうこともあると思います。
それほどに彼女は個性派であり、インパクトのある役者さんです。


そんな ” かほにゃん ” が、今年の舞台ではなんだか今までと違った顔を見せてくれた瞬間もあったように思います。

やはりこれまでのアリスインプロジェクトの札幌や東京での出演を経て確実に演者としての本来の力もつけてきていると思いますし、昨冬の 『 サクラダファミリー 』 では同じ納谷演出だったとしても、周りにたくさんのベテランや個性派の役者さんが勢揃いしていたとこで、そこから得られるものも数多かったと思います。

また、ダンスのシーンで見せてくれる真剣な眼差しはこれまでに見ることのなかった彼女の新しい一面を垣間見るようでもありました。

更に、ある回のダンスのシーンではちょっとしたハプニングが発生。
ズラッと並んだ椅子に対して、誰かが座る位置が1つずれてしまったため、結果的に一番端にいた彼女の座る椅子がなくなってしまいました。

そこで一瞬迷いを見せた彼女ではありましたが、次の瞬間にはすぐ横の階段に座り、全く何事もなかったかのようにその場をやり過ごしました。
あのダンスはしっかりと観ていても、そんなことが端の方で起こっていたことには気が付かなかった方はたくさんいるのではないでしょうか。
この彼女の咄嗟の対応はスタッフの間でも評判で、彼女が全て何事もなかったかのようにしてくれたおかげて、そのシーンの雰囲気が崩れることもなく済みました。

終盤へ向けた大切なシーンだっただけに、これが崩れてしまってはお芝居そのものの印象も大きく変わってしまうところでした。
まさに彼女がこの1回を救ってくれましたし、そういう意味での成長も感じさせてくれました。

私自身、彼女の演技をこれまでにも色々と何度も観て来ているだけに、ここで見られた成長や進化はとても嬉しいものでもありました。




谷口郁美 さん 演じた 千川見晴 は、ある意味では今回の作品の中でも一番凄いことを起こした存在です。
公演中に販売されていた台本を見ていただくとわかると思いますが、その台本に 千川 先生 は登場しません。

千川 先生 は脚本家の 麻草郁 さん から送られてきた台本に 納谷 さん が大きく手を加え、全くなかったところから新しく生み出した人物です。

それではなぜそんなことが起きたのか、ぜひともそんな話をしたいと思います。

公演中、どこの挨拶だったでしょうか、握手会の合間だったでしょうか。
納谷 さん がマイクを持ってそんな話をチラッとしたとも思いますが、今回はこの 谷口 さん を起用するためにこの 千川 先生 が創作されたのです。

谷口 さん は昨年のアリスインプロジェクト札幌公演が演技初挑戦。
そんな初めての舞台で彼女はとても素敵な演技を観せてくれました。

看護師・鎌田のばらの叫びは観劇していた多くの人の心を揺らしたのではないかと思いますし、そこには10代の女の子達が出せないような雰囲気も持ち合わせています。
そしてそれはある種、ベテランの 塚本奈緒美 さん岩杉夏 さん にですら出せない雰囲気なのかも知れません。


今年の公演に向けたオーディションが行なわれた際、彼女の姿もそこにはありました。

その場で渡された台本を読む様子は昨年のそれを思い起こさせる、とても彼女らしさの溢れるものでした。
が、一方でダンスは、ダンスは・・・。

しかしそれでも彼女をどうにかして何らかの形で使いたかったしそういう魅力がある、と演出側の判断があったようです。

またそこには所属のプロダクションがどうだとか、忖度がどうだとかそういうのは一切なく、やはり演出家にそう思わせる魅力が彼女にあったということだとも思います。
そんなことからこの物語に、そしてこの学園に 千川 先生 いうキャラクターが1人増えたのでした。


物語の中に描かれた 千川 先生宮脇 先生 との関係性は、宮脇 先生 が終盤に向かって昔の姿を取り戻していく流れに重要な意味を持っています。
実際に劇場で観劇された方にとっては、そんな関係性が印象的だったとも思いますし、宮脇 先生 が、「 お礼は千川先生に言いな 」 と生徒達に向かって言う場面は私も心揺さぶられました。
( 大千穐楽は岩杉さんが肝心なところで台詞を間違えましたが ・・・ )


谷口 さん は、まだ20代の女性に対してこの言い方は失礼かも知れませんが、去年も今年も座組全体のお母さんのような存在です。
実際はもっと年上のキャストもいますが、良い意味で長女のような雰囲気がその場をいつも和ませてもくれ、そして1人1人のキャストを優しく包み込んでくれているかのようにも感じます。

前述の 市山 さん が、ムードメーカーとして座組にとって重要な存在であれば、谷口 さん はホットメーカーだと思います。
そしてそのホットメーカーはやはりこの座組にとっては重要な役割を果たしてくれていたと思います。

本当に集中している時は、眉間にグッと力が入っている彼女ですが、一息ついた時の優しい笑顔は、みんなの心の拠り所になっていると、あるキャストが言っているのを耳にしました。
また、私が彼女達と同じ立場であることを想像すれば、やはり同じようなことを感じるのではないかとも思います。




アイドルグループ・フルーティーからは今年は2人が舞台に上がってくれました。

稲城綾芽 を演じた 長久保桃子 さん は、昨年に続いて2年連続での出演。
昨年は初の舞台にも関わらず、しかも稽古期間もフルーティーの活動と両立したことによって稽古自体も半分程度しか参加出来なかったにも関わらず、納谷 さん をして 「 即戦力 」 と言わしめました。

2人目は 高幡千真枝 を演じた 北出彩 さん
こちらは今回が演技初挑戦です。

今年の稽古期間中も2人はそればかりに集中することなく、フルーティーの活動もしっかりとこなしながらの日々を送っていました。
これはお芝居をするにあたっても、また本来のフルーティーの活動をするにあたっても大変なことだったと思います。

昨年は長久保さん1人だったために彼女はある意味では1人きりで本当に大変な努力をしたのだと思いますが、しかし今年は2人。

北出さんにとっては昨年の経験者が一番近くにいてくれることは何よりも心強い部分があったと思いますし、稽古に来られない間も2人で支え合いながらその遅れを取り戻していった様子が目に浮かんでくるようです。


2人の役どころは生徒会長・ 若葉香織 の腰巾着とも言われるような、いつでも後ろからついて回っているような存在。
そういうことでこの2人にはいつも常に息の合う演技が要求されましたが、その要求に彼女達は見事に応えてくれたと思います。

2人で同時に何かをする場面でも、お互い交互に台詞が出てくるテンポの良いシーンでも、いつも一緒にいる2人だからこそ本当に息の合った様子が手に取るように伝わってきました。
アレはまさにこの2人だったからこそ出来たパフォーマンスだったと思います。


彼女達のピッタリなコンビネーションは演技そのものと共に大きな注目となったようです。

物語の途中、彼女達が気を失うかのように次々と倒れていったり、他にも大きな動きがつけられている場面が何ヶ所もありました。
と言うよりも、全体的にそういうキャラクターに仕上げられていました。

これには客席で見ていた子供達も爆笑していましたし、そういう意味では誰の目にもわかりやすい笑いが散りばめられていたのだと思います。

また、長久保 さん は途中、大勢が舞台から椅子を一斉に片付けるシーンで、アドリブを大いに利かすことのできる場所がありました。
ここで話したことに対して時に 納谷 さん に、「 内輪ネタがウケてなかった 」 と言われ、時に客席がシーンとなるほどの大スべりをし ( 長久保さん曰く、「 何人かは笑っていた 」とのこと ) 。
それでも挫けずに挑んだ大千穐楽は私が観ていた中では一番の大爆笑が起こっていましたし、本番中に思いっきりドヤ顔を見せてもくれました。

やはりあんなことは誰にでもできることではありません。
まるで演劇の世界のベテランのようなその仕草や振る舞いは、やはり昨年 納谷 さん が言った 「 即戦力 」 という言葉がピンと来るようでもありました。

長久保 さん は演技そのものも本当に安定感があり、観ているこちらも安心して観ていられるようなそんな感じさえ受けます。

昨年の舞台の直後には早速他の舞台にも出演し、そこでも結果を出していたようです。
これからも注目のアイドルであり、役者さんでもあります。

北出 さん も演技初挑戦には全く見えず、昨年の 長久保 さん を彷彿とさせるような貫禄のようなものを感じさせてくれました。
きっと今後、やはり 長久保 さん のように他の団体からも注目されるような存在になっていくのではないかと想像しています。


また、2人共に握手会では常に長蛇の列が伸びていました。
ここはさすがフルーティーです。

このあたりは普段の活動の活発さやその人気からみてもある程度想像のつくところでしたが、そんな握手会での対応の様子を見ていると、そんな長蛇の列が出来る人気の理由が垣間見えるようでもありました。

また、今回の舞台を通じて彼女達を初めて知った方も多くその列に並ばれたようです。
正直なところ、これだけたくさんのキャストが出ている舞台で、元々自分のことを観に来てくれた以外の人の注目も引きつけるというのは大変なことです。
またそんな人がわざわざ自分の握手会の列まで来てくださるというのは本当にありがたいことです。


今年、こんな彼女達を目当てで初めて劇場に来てくださったアイドルファンのみなさんが、これを機に演劇の面白さにも注目していただけるようになると、それはまた非常にありがたいことです。
逆に劇場で彼女達の魅力に初めて触れた方が、今後フルーティーのライブに行くとこも十分に予想されます。

このように2つの世界の融合があるのがアリスインプロジェクトの公演で起こる化学反応であり、そういう発展もお互いの世界にとって有益なことです。
アリスインプロジェクト誕生からまもなく10年を迎えようとしている東京ではそんな発展も大いに起こっているという話を聞きますし、3年目を迎える札幌でもそれはすでに間違いなく起こっている現象です。

そんなムーブメントに、長久保 さん北出 さん は更に火をつけてくれるような存在になり得ると大いに期待もしています。




ダンス部員・ 大沢灯 を演じたのは 須田そより さん
こちらもアリスインプロジェクト初挑戦です。

将来の夢を舞台役者だと言い切る彼女は、これまでに富良野GROUPの公演 『 走る 』 に出演するなどの実績もあり、また19歳にして 旅木演劇工房 という自らの劇団も主宰する、まさに演劇の世界に生きる子です。

今年はアリスインプロジェクト初挑戦のキャストが大勢いますが、Casting Office EGG さん からは一気に4人が初参戦することでそこにグループが出来ていたり、北出 さん にも 長久保 さん という頼りになる仲間がいたり、他のキャストも頼れる誰かがそれぞれいたはず。
ですが彼女に関してはある意味では一匹狼での挑戦とも言えたと思います。

大千穐楽の挨拶では、舞台役者だからこそのプレッシャーがあったことも明かしてくれました。

他のアイドルや経験の浅い人達よりもどこかで頭一つ抜け出さなければならないという気持ちや、彼女にとってはアウェイのこの舞台に何か足跡を残さなければならないという一種の義務感のようなものも感じていたのではないかと想像しています。


須田 さん が演じた 大沢 はダンス部員の中でも感情の起伏の激しい役どころ。
自分の納得のいかないことに対しては素直に感情を露わにし、時にキレたり前に飛び出していくようなキャラクターです。

そんな 大沢 の性格を 須田 さん は様々な形で本当にとてもよく表現出来ていたと思います。


私が彼女を観るにあたって注目していた点のひとつが彼女の ” 表情 ” です。

それは稽古場で彼女の演技を始めて観た時からそうだったのですが、台詞を話している時ばかりでなく、何も話さずに立っている時ですら彼女の目や表情からはまるで何かが聞こえてくるようにすら感じました。

会場の外である演劇好きのお客様と話をした時にも、その方は、「 今回の作品のキーになってるのは須田さんだ 」とおっしゃっていました。
見ている人はしっかりと見ているものです。

また、彼女のダンスにも私はついつい目が行ってしまいました。
体そのものは小さいですが、手足を先までしっかり使うことでダンスが大きく見えましたし、華があるようにも感じました。

オープニングのダンスでも後列の全体のセンターあたりにいたりします。
これが偶然なのか、それとも身長などを見ながら全体のバランスで配置されたものなのかは私は伝わり聞いてませんが、私にはこれが必然性と意味を持って見えていました。

稽古が始まる時も舞台の本番前も、そこには他の人の流れに左右されることなく自分を貫き、いつも入念にストレッチをしている彼女の姿がありました。
そういう部分も含めて、舞台役者としての信念やこだわり、そしてやるべき事をやるという強い気持ちを感じることが彼女からはたくさんありました。

また、そんな所にもし他のキャストが気がついていたとしたら、そこには見習うべき点もたくさんあったのではないかと思っています。


公演が始まってからのあるタイミングで 須田 さん と話をした時、彼女は、「 私にはファンという存在が出来たことがない 」 ということを言っていました。
ですがその後に行なわれた握手会には前述の演劇好きなその方も彼女のところに行っていましたし、今回の公演がきっかけで彼女のファンになった人も必ずいるはずです。
少なくとも私は今回の 須田 さん の色々な部分に触れ、間違いなく彼女のファンになりました。

須田そより さん
舞台役者としても、これからの活動にも注目していきたいですし、これからも応援したい存在の1人です。
アリスインプロジェクト札幌公演には、そんな彼女の足跡が確実に刻まれたはずです。




演劇部員の 桜日和 を演じたのは 工藤沙貴 さん
沙貴 さん は今回唯一の、納谷 さん 率いるイレブンナイン所属の役者さんです。

いつもはイレブンナインの舞台に出演しており、納谷 さん の演出という部分では慣れたところでしょう。
また周りを支えるスタッフの多くがイレブンナインの面々であり、そういう意味ではホームのような状況ではありますが、しかしこれがアリスインプロジェクト札幌公演ということを考えると、このホーム感は誰にも増してのプレッシャーにも変わるものだと思います。

私もイレブンナインの舞台では何度となく彼女の演じる姿を観ていますが、主役級ではない役どころでもしっかりと印象に残る演技をしてくれることが多い役者さんでもあります。

一昨年に イレブンナイン さん が久々に行なったオーディションを経て入団した彼女ですが、そこに受かるということはやはり光る何かを持っているということだとも思います。
そしてあの環境にいるということは、間違いなくその後も何かを得て、更に大きく成長し続けていることが十分に予測できます。


昨年はイレブンナイン さん からは若手の絶対的エースともいえる、廣瀬詩映莉 さん がアリスインプロジェクト札幌公演の舞台に立ち、そして多くの人にとてつもなく大きな衝撃を与えてくれました。
彼女の演技は同世代の誰もが真似出来ないような、そして到底横に並ぶことも出来ないような、群を抜いた圧倒的な力を持っています。

そんな 廣瀬 さん の次の年に、同じ イレブンナイン さん から出演していくというのは、観る人によっては比較対象にもなってしまうでしょう。
これはあまりに大きく高い壁であり、そこと比較するのは誰にとっても酷な部分があるのでしょうが、それでも今年の舞台では 沙貴 さん沙貴 さん らしい演技で魅せてくれました。

物語の中で観せてくれるちょっとした面白い部分にはいかにも イレブンナイン さん らしいものがありました。
稽古でも 納谷 さん から飛んでくる指示や演出は、他の誰かに向けられるものとは違い、複数のものが矢継ぎ早に伝えられることもあれば、言葉自体が非常に理解に難しいようなものもありました。

しかしそんなものを彼女はあっという間に理解し、それを自分なりに噛み砕いてすぐに演技に落とし込んでいきました。
そんなところもやはり普段から納谷演出に鍛え上げられているからこそだと感じました。

また、公演中の休憩時間なども1人で客席の上の方に座り、黙々と台本に目を落としている彼女の姿を何度も目撃しました。

そんな状態の彼女には同じ劇団の仲間ですら近づこうとしませんでしてたし、取り組み方というのは人それぞれにあると思いますが、そんな彼女の姿勢には感服するものがありました。


稽古中、納谷 さん が彼女に対して、「 ある程度お姉さんなんだから、他のみんなを引っ張っていってくれる役割も期待している 」 と言ったことがありました。
この言葉の意味することは、実際に言葉に出して伝えるのと、言葉にせずに黙って期待を寄せるのとでは、またそこに大きな違いがあると思います。

ましてこれは他の大勢がいる前で全員に聞こえるように伝えられたのです。

そんなことをみんなの前で自分の師匠から言われたことを想像すると、これはもう半端なく大きなプレッシャーにもなるはずです。
言った方としてはその部分も分かった上で伝えてきているのでしょうから、なおさら大きな意味を持って自分に覆いかぶさってきます。
しかもこの話、公演が初日を迎えるわずか3日前に伝えられたものです。

これよりも以前に同じようなことが再三伝えられていた可能性もありますが、納谷 さん は自分の劇団員に対して本当に大きなプレッシャーを与えていました。

しかしそれはただ彼女が自分のところの人間だからというだけではなく、そこにはきっと彼女に対するそれだけの期待もあったのだと思いますし、自分のところの人間に甘いところがあると、他から預かっている子達を叱ることも出来なくなってしまうというような考えもあたのではないかと想像します。

そんな中で彼女が座組全体にどんな役割を持ち、そして影響を与えていたのかというところは私が現場入りしている間には残念ながらはっきりと目の当たりにすることはできなかったのですが、それでも最低限自分の近くにいる演劇部の部員2人 ( 共にダブルキャストのため、実質的には4人 ) はしっかりと引っ張ってくれていたように感じます。




ダンス部員・ 岩本小夏は、アイドルグループ・ミルキーベリーのリーダー、星野千那 さん

アリスインプロジェクト札幌公演にはミルキーベリーからは毎年メンバーの参加が続いており、今年は 星野 さん とダブルキャストの 佐藤楓子 さん の2人が起用されました。

星野 さん も今回が演技初挑戦だったそうですが、初めてを感じさせない思い切りのいい演技で舞台に色を加えてくれました。

ダンス部は基本的に舞台上では数人単位で動くことが多かったですが、誰といる時にも 星野 さん には花を感じました。
同じくダンス部員 大沢灯 を演じた 須田そより さん が表情の作り方がよかったという話を前述しましたが、感情の起伏の激しい 大沢 とは違い、星野 さん岩本小夏 はダンス部の中でもしっかりした性格を持つ子だったと思います。

そしてそんな 岩本小夏 を演じる 星野 さん もまたその性格に合わせた表情の作り方や表現がとても良かったと思います。

岩本 は、強気になってみたり、誰かに突然甘えるような態度を取ってみたりと、ダンス部の中でも周りに対して色々な自分を使ってうまく振舞っている感じが伝わるキャラクター。
そんな 岩本 の色々な面もその度に 星野 さん が良い意味でごくごく自然に、そして表現豊かに伝えてくれました。

私自身は演技に挑戦したことはありませんが、それでも ” 自然に ” というのが一番難しいということはよく分かります。
ですが、彼女の立ち振る舞いは本当に自然でした。

また、物語の中でダブルキャストの子と絡むシーンもあったりしますが、これを相手によって巧みに使い分けていたのもとても印象的でした。
普段のアイドルとしての活動からも、そしてリーダーという立ち位置からも、ステージ度胸があるのは想像するに難くないですが、それ以上の何かを 星野 さん には感じました。


握手会でも彼女の前には普段から彼女を応援しているであろうファンの方を中心に長い列ができていました。

そんなみなさんに対しての対応も流石にアイドルと思える ” 神対応 ” 。
手が空いた時には客席で見守る方に対して手を振ってみたりもするなど、自らのアピールにも余念がありませんでした。

そんな中で 納谷 さん からのマイクでの焚き付けもあり、舞台裏からヘルメットをかぶって出て来た時には大きな笑いが起きました。
あのヘルメット、どこに置いてあったんだろう ・・・。


またある回の公演には、彼女達が所属するミルキーベリーのメンバーが勢揃いで観劇に来てくれました。
その中には昨年一昨年の舞台に出てくれた懐かしい顔も。

アリスインプロジェクト札幌公演にはまだまだ短いですが、今年で3年目の積み重ねがあります。
そんな中でミルキーベリーの彼女達にも同時にそのアリスイン札幌に関わってくれている3年があり、それぞれに歴史が作られているんだと、ちょっと大人の顔になった彼女達を見ながら感じたりもしました。




ここからはダブルキャストで起用されたメンバーについて触れていきます。


まずは、ラッパーの 大島由美 を月組で演じてくれた 国門紋朱 さん
彼女も札幌で10年近くの活動歴がある経験豊富な役者さんです。

私は以前より彼女の存在は知ってはいたのですが、実際に演技を直接観たのは今回が初めてでした。
そんな中で、この ” 初めて ” は、遭遇の瞬間に ” 衝撃 ” へと変わっていきました。

稽古場で最初にそんな演技を観た時、彼女の立ち振る舞いや、その場での存在そのものに、大きな ” 衝撃 ” と ” 笑撃 ” を受けました。
「 札幌にこんな凄い人がいるんだな 」 と素直にビックリもしました。

国門 さん はこれまでの活動の中ではミュージカルにも多く出演するなど、純粋な演技以外の部分での経験も豊富だそうです。
そんな中で今回観せてくれたラップは、まるでこの人はそもそもがラッパーなのではないかと思えるほどに板に付いたものでした。

ラップというのは韻を踏む言葉の並びを音楽に乗せるもの。

そんな中でその言葉が曖昧になってしまったり、聞き取りづらくなってしまっては本末転倒とも言えますが、そこは彼女はやはり良い意味でのベテラン。
1つ1つの単語も聞き取りやすく響いてくるから、聞いている側にとっても彼女が奏でるラップ自体も楽しめますし、韻を踏んだ言葉遊びも楽しむことができます。


演技の部分ではこのキャスト陣の中では他の子が出さないような、そして出せないような、とても印象深い ” クセ ” のあるお芝居をしてくれました。

彼女はいわゆる ” 個性派 ” というところに分類されるであろう役者さんだと、私は印象を持っています。

その時に自分が入った座組の中で、どういうことをすることで自分の個性を活かせるか、そしてどのような個性がその座組自体を活かしていくことができるかというのをしっかりと考えながらやっているのではないかと想像もします。

実際今回も彼女の作り上げた 大島由美 は、物語の中で設定された役どころ以上に他の誰とも似ていないオリジナリティを持ったキャラクターになっていたと思います。


また、今回の 国門 さん を語るにあたって、その ” 表情 ” について触れないわけにはいきません。

自らの台詞を話している時はもちろん、それが終わって流れが他の人に移っていってからも彼女の顔は常にその世界感の中でしっかりと演技を続けています。

舞台の上で作られる表情というのは少し大袈裟くらいでちょうどいいと思います。

客席の最前列と一番後ろの席とでは、舞台への距離にもかなりの違いがあります。
ここで微妙に口角を上げてみたり、1つ瞬きをしてみたりという小さな動きではそれが観ている人に伝わらないこともよくあると思います。

演技というのは台詞ばかりが全ての想いを伝えて物語を進めていくものではなく、体の動きであったり角度であったり、当然顔の表情も、例えば椅子への座り方1つにしても、本当に様々なものが何かを表現する手段にもなり、そして観る側もその全てを観て何かを受け取ると思います。

そんな中で 国門 さん の表現は本当に色々なものから伝わってきますが、中でもその表情は特に印象的で、観る人を一瞬で理解させたり、時に大笑いさせたりもしていました。

私などはその ” もの言う表情 ” が気になり、お芝居の流れが他の人に移ってからも彼女の顔が気になって仕方なかったです。

また稽古場でもその表情は良い意味で炸裂しており、一瞬気が緩んだ時に観てしまうと、それまで真剣な話をしていたはずなのに笑ってしまう。
連日のように長時間続く稽古の中でもそんな彼女の存在は、座組全体を包み込んでくれるようなものでもあり、また他とないお手本であったとも思います。


公演が全て終わった後、そんな彼女が大勢の前で歌を歌うタイミングがあったのですが、やはりそこでも面白おかしいパフォーマンスには一同大爆笑。
笑いすぎて涙を流す子も続出でした。

そんな様子を見ていると、やはり彼女はみんなを楽しませてくれるパォーマーであり、ムードメーカーでもあると再実感しました。

だからこそ、この座組ではない全く他の現場に行った時、彼女がどんな姿でどんなパフォーマンスを見せてくれるのかも楽しみになります。
そんな姿、ぜひ今後確認しに行ってみたいと思っています。


千穐楽。
そんな彼女の月組は昼の公演が最終公演でしたが、お客様への最後の挨拶の時に、「 大切なパートナーがいてくれたからこそ頑張れた 」 と、同じくラップ部の 市山黎 さん の名前を出して涙しました。

あれだけみんなを笑わせ、明るい雰囲気を演出し、そして座組を自分なりのやり方でまとめてくれていた彼女の涙だけに、我々スタッフの心も大きく揺り動かされましたし、他のキャストにも届く何かがあったのではないかと思います。




星組の 大島由美 は、西村摩利乃 さん

彼女は小学生の頃からダンスなどを習い始めた経歴を持ち、最近では札幌の ミュージカルユニットもえぎ色 の公演で、 『 かぐや NO.1 』 『 海賊ブラボー 』 『 Princess Fighter 』 と3作連続での出演を果たすなど、確実にその道を前に向かって歩んでいます。

今回の公演でも、演技をしている時と握手会の時との差、また普段の活動と今回の舞台の上での様子などそれぞれにギャップを見せてくれたり、またいつもと違う姿で観ている人を楽しませてくれた子はたくさんいると思います。

中には良い意味でナチュラルに普段の姿に近い子もいたりもしたと思いますが、そんな中でもみなさんはどの子に一番のギャップを感じたでしょうか。
私は今回の26人の中で、この 西村摩利乃 さん に一番の色々なギャップを感じました。

私が今回、 西村 さん を最初に観たのはオーディション会場でのことでした。

大人数の候補者の中には私が初めて観る顔もたくさんあったのですが、そんな中でも彼女が披露したパフォーマンスはとても際立ち、そして印象的でもあったと感じました。

中でもダンスのパフォーマンスでは他の候補者からも技術的にも頭1つ飛び出ていた記憶があります。

その圧倒的なダンススキルをこのアピールの場でも十分に発揮してくれていたと思いますし、そんな様子を横で見ていた私の目には彼女の存在が凄く目立って見えました。

その時点で今回の公演の作品が 『 ダンスライン♪ 』になるというのはすでに決まっていましたし、ある程度のダンススキルが必要だからこそオーディションでもそれを確認しています。
だからこそ、彼女のパフォーマンスを一瞬見ただけで、「 あ、この子は合格したな 」 と、私は勝手に思っていましたし、実際に合格者のリストを後で確認した時、彼女の名前がその中にはあったのは私にとっては十分に予想できたものでした。


私が稽古場を訪問した際には、タイミング的に彼女が前に出てくるところはほとんど見られなかったのですが、それでも他のキャストが稽古を受ける間も彼女の真剣な眼差しは常にそちらへと向けられていました。
ここでは、他の子が真剣ではなかったということを言っているのではないという前置きを置きつつ、「 もの凄く真面目な子だな 」 という印象を持ちました。

チケット販売イベントの際にはお客様との交流会に慣れないこともあって最初のうちは緊張している様子がありありと伝わってきましたが、それでも慣れるにしたがって自らもその場を楽しんでいる様子が見て取れました。

公演本番が始まり、ラッパー然とした彼女は髪の色も明るくなって編み込まれ、耳には大きなピアス、指や手首にも色々とついていました。
更にはメイクもあるでしょうし、着ている衣装もあるでしょうし、私が観た前回とはとにかく随分とイメージの違う彼女がそこにはいました。

舞台の上では私が今まで見ていた彼女の面影が何処かへ。
そこにいる 大島由美 は勉強よりもラップが大好きで、学校に何か不満があって、それでも仲間のことが大切で ・・・ というような、いかにも 大島由美 という役どころの裏にあるであろう設定を彷彿とさせる姿でした。

ダブルキャストということもあり、月組の 国門紋朱 さん と比較されることもあるでしょうが、同じ役をやっていても随分と色の違うキャラクターに仕上がっていたように感じます。

そして、彼女が同じユニットで連続で違う作品に起用されてきている理由も見えてくるような気もしました。


本番が終わって舞台裏に戻ると彼女はまた全く違う顔になります。
私はそれにも改めて驚きました。

裏で少し話をさせていただいたりもしたのですが、そんな時の彼女は当たり前ですが直前までのラッパーではなく、話す相手の目をドキッとするくらいに真っすぐ見つめて話をしてくれます。

これほどの違いとギャップを出せるというのはやはり素晴らしい役者さんなんだと思いますし、その真摯な姿勢は必ず評価されるものとも思います。

そんな 西村 さん が今回の公演全体の、私の中での ” ギャップ女王 ” です。




星組の 中川原由香上野華歩 さん 、月組は 太田菜月 さん
この2人は同じ学校の先輩後輩です。

とは言っても 上野 さん はすでに学校を卒業しており、今回も、「 事務所にも所属していない一般人代表 」 と自らを称していました。

また 太田 さん は現役の学生。
2人共にこれが初めての大きな舞台だそうです。

この2人の 中川原由香 は環境は少し似たようなところがある彼女達でも、それぞれに違った 中川原由香 が仕上がっていたように思います。


まず 上野 さん はある時、「 私、変顔でも何でもやります! 」 と言っていました。

その言葉にも当てはまる通り、彼女の 中川原由香 には表情や動きをふんだんに使った演出がなされていました。
それはきっと、長い稽古の中で 納谷 さん がそんな彼女の特性を見出し、そしてそれを活かした演出をしていったことの結果でしょう。

実際、上野 さん の前述の言葉は全てが終わった後、まだ影も形もない次の何かに向かって発せられた言葉です。

彼女に元々あったものを 納谷 さん が演出でうまく引き出したのか、納谷 さん の演出によって彼女が更に目覚めたのか、それともその両方か。
きっとこれは後者なのではないかと想像しています。

気合いを入れる時に腹を叩くとか、冷静に考えてそんな女の子、何処にいるでしょうか?
それでも色々と考えて施された演出やプラスアルファが作品そのものを輝かせ、そして役者さん自身も引き立てます。

稽古中も休憩中も、常に独特な空気感を持っているのが彼女でもありました。
役者さんにとってはそんな ” 独特 ” とか ” オリジナリティ ” というのはとても大切なものだと思います。

彼女のタレントとしての活動はまだまだ始まったばかり。
これからどんな道を歩んでいくのか、どんな個性を見せてくれるのかと、これからが楽しみな1人です。



太田 さん はそんな 上野 さん とは色々な意味で、” 真逆 ” とは言いませんが、かなり方向性の違う子だと感じました。

私の中での彼女の最初の印象は、オーディションで声も体も震えの止まらなかった姿です。

聞くとこのようなオーディションですら初めての経験だったそうで、周りの誰よりも緊張しているその様子は、よく使われる言葉の表現を用いるとすれば、” 産まれたての小鹿 ” のようでもありました。

それでも学校の先生や先輩に言われてきたことを忠実に守ってこの場に挑もうとする姿は、まるでアルバイトや就職の面接を受けているかのようでもありましたが、それがまたこういう世界にどっぷりと漬かってしまった我々にとってはとても新鮮な光景でもありました。

そんな彼女ですが、台本を読み始めてしばらくすると、スッと震えが止まり、何事もなかったかのようにそこに書かれた台詞を読み始めました。
私にはオーディションにおける何らかのことを決定する権限はありませんが、それでも経験こそ圧倒的に少ないとしても彼女のような子が座組にいるのは面白いのではないかと、横から見ながら思っていたものです。

だからこそ、合格者リストに彼女の名前があった時、実はとても嬉しかったのも事実です。


そんな 太田 さん ですから、稽古が始まってもどんな時もいつでも気を張っている様子が伝わってきました。

そのままだと本番までに体力を使い切ってしまうのではなかろうかと少し心配になるくらいでしたが、それでも彼女は一生懸命に最後まで駆け抜けてくれました。

この公演でたくさんのことを学び、そして成長した子はたくさんいると思います。
そこにはそれぞれに得るものがあり、それがまた次の一歩を踏み出すための財産にもなっていくのだろうと思います。

得られたものや成長というのは目に見えるものばかりではなく、本人さえ気が付いていないということもあるでしょう。
しかしそんな中で今年の公演を経て、太田 さん が得られたであろうものというのはとても大きく、そして目に見えて成長した姿を私は感じました。

学校に通っていることで得られるものも間違いなくあるでしょうが、この座組に入れたことで得られたものというのは絶大だと思います。
その中には間違いなく学校だけでは得られないものも数多く含まれているはずです。

次にお会いできる時にはきっともっともっと成長した姿を見ることができると思います。
楽しみです。




佐藤楓子 さん岩本小夏 を演じた 星野千那 さん と同じくアイドルグループ・ミルキーベリー所属。
こちらも今回が演技初挑戦で、月組で演劇部の 森下比呂 を演じました。

物語の中で突然高い声を出すのは、稽古中に彼女から発せられたものが活かされての形になっているとのこと。

納谷 さん も突然の高音ボイスにびっくりしたそうで、ダブルキャストということもあり、それを 楓子 さん の特徴として残したようです。

長い手足を見ているとまるでモデルさんのような彼女ですが、だからといってそれに甘んずることなく、度胸のある演技を見せてくれたり、納谷 さん の面白おかしい演出にも応えてくれていました。

演劇部員ですが普段のアイドルとしての活動の中でダンスをすることはやはり多いようで、そんなこともあって物語の中でのダンスも長い手足を大きく使ったキレの良い動きが凄く目につきました。


また握手会の際には、舞台上でお客様のご案内をしていた私のところに、彼女に対する質問が多く寄せられていたもの印象的でした。

「 あの子は何歳なの? 」
「 普段はどんな活動してる子なの? 」
「 何頭身なの? 」 ・・・

何頭身かは本人に聞いてくださいと答えましたが、それ以外のことはできる限りで回答とご説明もさせていただきました。

これはこの劇場に来て実際に彼女のことを見てから気になったという方がそれだけ多かったという証拠だとも思います。

またそんな彼女には熱心なファンの方も多く、握手会が進む中でも最後までその列がなかなかなくならずに、最終的には彼女だけが残るということもありました。

まだまだ中学2年生。
間違いなくもっともっと飛躍してくれると期待していますしそんな 楓子 さん が楽しみです。




星組の 森下比呂青山千紘 さん
こちらは エイベックス さん が送り込んできた超新星で、今年の座組最年少の中学1年生。
そして彼女もやはり演技初挑戦です。

千紘 さん は大千穐楽が終わった後のお客様に対しての挨拶で、「 いっぱい面白いことしたはずなのに全然ウケなかった。私の心はズタズタに傷ついてます 」 と話しました。

彼女は自分の台詞の後やコミカルな動きをした後、変顔をしたりするなど積極果敢に笑いを取りにいっていました。

それは私が稽古場にお邪魔した際にも遠慮がちに行なわれていましたが、本番が始まり終盤にもなるとあきらかにパワーアップしたものになっていました。

冷静に考えてこの勇気というのは凄いと思います。
中学生の女の子がたくさんの人がいる前でなかなかそんなこと出来ませんよ、普通は。

舞台の上が ” 普通 ” というものに該当するのかと言われればそこには多少の迷いも生じますが、実際ここに立つ勇気だけでもそれはやはり凄いことだと思います。
自分が中学1年生の頃に何をやっていたかと振り返ると、彼女がこうして頑張っている姿というのは本当に尊敬にすら値します。

確かに他のキャストもドンドンと面白いことを仕掛けて来る中で、彼女のチャレンジに対してのお客様の反応というのはまだまだ自ら納得のできるものではなかったのかも知れません。
ですが、ここで自分に納得していないということ自体が何よりも次に向けての自分自身の財産になるのではないかと、私は思います。


実は今回、公演が始まって以降の休憩時間などで、この舞台を機会に初めてお会いした方の中で、私が一番ゆっくりとお話をしたのはこの 千紘 さん だったのではないかと思います。

この舞台のこと、他のお仕事のこと、そして全く関係の無いこと ・・・。
色々とお話をする中で彼女自身のことを色々と知ることも出来ました。

私から見れば30歳も年下の 千紘 さん は、大人っぽい一面と、やはりまだ子供の一面と、両方を持ち合わせた少女でした。
見た目には時々、「 ハーフですか?! 」 とも聞かれることがあるらしいですが、とても実年齢には見えないほどに大人の雰囲気を漂わせてもいます。

しかし逆にそんな外見とは裏腹に、やはり中学生らしいところもたくさんあったりもしました。
そんな二面性は今の彼女の大きな武器でもあり魅力でもあると思います。

どんな話をしたのか、あまり具体的なことを書くのは避けますが、それでも彼女を知れば知るほど本当に色々な姿が見えても来ますし、それに従ってタレントとして興味の沸く存在にもなっていきます。

彼女が感じた今回の舞台で納得いかなかった点、自ら悔しいと思った点は、これからそれを見返し、そして更に成長出来る機会もまだまだあるはずです。
やはりそういう気持ちを持っている人は、今いる場所よりももより上にいける人だとも思います。

逆に初めての舞台で最初から自分に満足してしまうようでは、そこからの成長は期待薄になってしまいます。
そういう意味でも彼女にはもっともっと期待していいのだとも思います。


話をしている間にポテトチップスをほぼひと袋ペロッと食べてしまい、「 あ、勢いで食べちゃった 」 と言っていた顔はまだまだ子供。
でも物事に対する考え方は随分と大人っぽい部分もあったりします。

普通の中学1年生としての物差しでは測れない彼女のこれからがとても楽しみです。




月組の、小川一水高畑有美恵 さん
彼女は現役の学生さんで、こちらも初めての舞台です。

将来進みたい道はおぼろ気には見えていてたとしても、まだまだ学生の頃には、そこで経験するものや観るものによってそれは大きく影響を受けたりするものだと思います。
そんな彼女にとって今回の舞台はどんなものだったのでしょうか。

稽古場で初めて彼女の演技を見た時、初めての舞台にも関わらず彼女には随分と落ち着いた雰囲気を感じました。

序盤は擬音ばかり口にする 小川一水 ですが、中盤からは台詞も増えてきます。

この2つは明らかに表現方法も違い、そういう意味での難しさもあったと思いますが、本番の舞台でもそんな部分も含めて、やはり落ち着いて対処していたように見えました。

いきなりの大きな舞台を学生として踏むということで、そういう意味での緊張も当然あったのでしょうが、そんな浮き足立ったような部分もあまり感じませんでした。

色々と大変だったこともあったと伺い聞いてはいますが、それはベテランだろうが若手だろうがどんな人でもそれぞれが感じるものだと思います。
一番大事なのはその壁を乗り越えようとする努力や工夫であり、そしてそこを乗り越えたことによって何を得たか、乗り越えた先でどうしていくのかだとも思います。


ダブルキャストというのは出番がシングルキャストの半分だから、大変なことも半分なのかといえばそれは全く当てはまりません。

ダブルキャストにはダブルキャストなりの大変さがあり、反対の組に自分と同じ役をやる人がいることによるプレッシャーもあったりするとも思います。
当然、観比べられたりもすることでしょう。
それでも、「 高畑さんの小川、とても良かった 」 という話も私のところには届いていました。

きっと今回の経験は彼女のこれからにも大きな何かを落としているはずです。




星組の 小川一水 は、当プロジェクト所属の 羽美 です。

昨年のアリスインプロジェクト札幌公演で演技に初挑戦した 羽美でしたが、そこには大きな悔いが残ったようです。

私は 羽美 に関しては直接のタレント運営ですから他の方と同じ目線で見られないというのがどうしてもありますが、それでもやはり昨年の 羽美 の演技はお世辞の言いようもありませんでした。

一言で言うと、” 小学生の学芸会 ” 。
私は自分のところの所属タレントではありますが、恥ずかしながらそんな印象を受けました。

その演技には自分自身も納得はしていなかったようですが、それでも経験という意味ではかけがえのないものを得ることができましたし、ジャガイモンプロジェクト所属ということもあってか、周りのスタッフさんにもずいぶんと気にかけていただいたようです。

タレント運営の立場としてはどんな形であれタレントを起用していただいたことは非常にありがたく、「 ぜひまた次も 」 というのが本来なのでしょう。
ですがアリスインプロジェクト札幌公演に関してはジャガイモンプロジェクトはそれ以前にこの公演自体の広報的な役割やスタッフとしても参加しており、アリスインプロジェクト さん とジャガイモンプロジェクトのこれまでの繋がりや関係性から見ても、私にとってもそちらが何よりの最優先事項だと思っています。

実際、公演前はまだしも、公演本番がスタートを切ってしまえば私は劇場ではタレント運営としての仕事はほとんどしていません。
何事も 羽美 自身の自主性に委ね、自分自身で全てを考えて行動するようにとしています。

ですので昨年の現場では、私がタレント運営という立場もあるということを全く知らずにいた方がスタッフの間にも、そしてお客様にもいらしたようです。
実際、外で他のスタッフと一緒にお客様をご案内していたり、握手会のスタッフなどをやっていればそう思われても不思議ではないですし、そもそも私自身がそういう立場だということをほとんど頭に置かずに動いていますから仕方もないことです。


今年の公演に向け、実は私は 羽美 のキャスティングに関しては当初は消極的でした。

それはタレント運営としてはおかしな発想でもありますが、アリスイン札幌に関してはそれ以前に重視しなければならないこともあると考えており、実は昨秋頃に一番最初にそんなようなお話をいただいた際にも、総合的に判断する必要があると考え、回答を保留させていただいておりました。

そんな中、今年の公演に向けてのオーディションが行なわれることとなり、羽美 本人とも相談の上、結果はどうあれひとまずそこに挑戦する判断としました。

昨年の公演後には、「 ジャガイモンプロジェクトが自分のところのタレントを無理矢理ねじ込んだ 」 ということを言う噂話も聞こえてきました。
ですがこれは完全な間違いです。

実際、アリスインプロジェクト さん とジャガイモンプロジェクトは、アリスインプロジェクト札幌公演が始まる数年前よりすでに一緒にお仕事をさせていただくなどしており、より密な関係性があるのは否定しません。
ですが、昨年の 羽美 のキャスティングは正式にオファーをいただいてのものであり、こちらからの事前の働きかけは一切していません。

今年に関しても私はむしろ、「 一切忖度なしで、遠慮なく落としてください 」 ということを伝えていましたし、オーディション会場でそんな様子も見てはいましたが、決定に際しては一切何も口を挟んだりはしていません。

今年のオーディションを受けさせていただくにあたっても、「 やる気は感じられるけれど、それ以前に演技がねぇ ・・・ 」 という意見をスタッフの方から聞きましたし、逆に、「 でも、あの演技、好きだな 」 という意見もありました。

このあたり、相手側も私のことをタレント運営としてでなく、公演運営側のスタッフとして接してくださっている上での話ですし、お互いにそういう関係性が構築された上での話ですので、ここにはお世辞もなにも存在しないと思います。


こういう状況で一切優位性のない中で受けたオーディション。
台本を読んでいる 羽美 は、誰よりも ”ヘタ ” だと私は思いました。

実際、みんなの前で、 「 ヘタだねぇ〜 」 と、納谷 さん にはっきりと言われていましたし、苦笑いするスタッフの顔がこちらの方向へと向かっているのを感じていました。

ダンスに関しても ・・・ 、” なし寄りのあり ” くらいでしょうか。
他の方と比べても特筆すべきところも特にありません。

開始前には、「 一切忖度なしで ・・・ 」 とも伝えていましたし、正直これは落ちたなと思っていました。
ですが合格しました。

合格の理由は、公演運営上の理由もある為こういうところに書くのは避けたいと思いますが、ここには私の働きかけや変な力が働いたわけではなく、またゴリ押しもねじ込みも忖度もありません。
理由に触れないことでこれ以上書くこともありませんが、とにかく今年もキャスティングをいただけることになりました。

そしてそんなオーディション後には1つ、「 去年より成長してる 」 という言葉はいただきました。
ま、去年が去年ですので ・・・ 、色々と詮索もしてしまいそうですが、たまには素直に受け取りたいとも思います。
とにかく今年もキャスティングをしてただけたというのはありがたいことです。


オーディション直後からは稽古もスタート。
同じ座組には 羽美 がかなり以前より憧れていたという人もおり、そういう意味でもかなり嬉しい現場だったようです。

そんな現場も嬉しさも、これは 羽美 自身が掴み取ったものだと思いますし、そこは自分を誇ってもいいと思います。

今回は昨年とは違ってダブルキャストでの起用。
自分と違う月組には自分と同じ役をやる人がいるわけで、そういう意味でも昨年と違うことを色々と考えたりしなければならないと思いますし、実際に行動に移さなければならないこともあるでしょう。

ですが私の方からは月組の相棒 ( 高畑有美恵 さん ) と話し合うようにとか、相棒の稽古を研究しなさいとか、そういうことは一切言いませんでした。
そういうことは自分自身で考えるべきで、こちらから何かを言ってしまうことで考えるということをサボってほしくなかったからです。

私が 羽美 に対して伝えたことは昨年と変わらず、「 稽古中に他の人が言われていることも、自分のことだと思って聞くように 」 ということくらいです。
それこそは私自身がこの現場に1年目からスタッフとして入っていることで得られたものであり、間違いなくそうすべきだと確信していたことでもあります。

あとは本人が考え、学び、そして自分に活かし、本番へと繋げていくだけです。


今年の舞台、羽美 の演技はみなさんにはどう映ったのでしょうか。
それはこれから時間をかけて実際に観ていただいたみなさんに伺える機会があれば幸いです。

このあたりは 羽美 本人がどう頑張ったのかということ以外に、観た方にどう観えたのかということも大切だと思います。

小川一水 は、物語の中では擬音ばかりを連呼する部分と、ちゃんと言葉を話す部分とがあります。

キャスティングが決まった後、まだ実際に誰がどの役をやるかまでは決まっていない段階で今回の台本に目を通しましたが、私は最初から 羽美小川一水 だろうと確信していました。
そしてそれは間もなく現実になりました。

オーディションの時、台本読みが全然うまくいかないながらも、そんな 羽美 の様子を見て 納谷 さん は、「 典型的な後輩キャラだ 」 ということも言っていました。

そんな言葉がずっと私の中にあったこともあり、またこの 小川一水 の他と一線を画すようなキャラクターとも相まって、羽美 がこれにピッタリというよりも、羽美 を使うならここしかないのではないかとも思っていました。

また今回、ダブルキャストに組み込まれたことも本人にとっては間違いなくプラスの方向に動くとも思いました。

どんな舞台もシングルキャストで起用されると、当たり前ですが自分達が作る舞台を直接生で観ることはできません。
観られるとしてもそれは映像の中であり、生の舞台のそれとは様々な点で違いが出てきます。

一方ダブルキャストで起用されると、自分が出る回は全体の半分。
残りの半分は、自分自身は出ていないですがそれを直接生で観ることが可能となります。

また、自分と同じ役をやっている人の様子を見ることもでき、自分の中で比較することもできるようになります。
これはダブルキャストの人にしかできないことです。

そんな中で今回、羽美 は自分が出演しない月組の全4公演を全て劇場で直接観たそうです。
コンカリーニョの中には関係者がお客様の目に触れない環境で舞台を観られる場所があり、そこでしっかりとそんな舞台を確認し、そして勉強していたようです。

これに関しては私から何となく促した記憶はありますが、それでもはっきりとした指示はしていません。
そんな様子を知ったスタッフの方からは、「 羽美ちゃん、今回は全部の公演を観てるよね。偉いね 」 と評価もいただいていました。


今年の演技は ・・・ 、これはぜひ直接観ていただけ方に判断をしていただければと思います。

タレント運営という立場上、私はどうしても他のキャストと同じレベルで観ることができません。
ただ、昨年よりは確実に成長しているところを感じたということだけを書き添えておきたいと思います。


直接の演技以外の部分では、今回私は2つのことについて 羽美 本人を非常に評価しています。

1つ目は、大千穐楽の際、ラストのダンスシーンの最中に椅子が1つ倒れてしまったハプニングがありましたが、倒してしまった本人はタイミングがフォーメーションなどの関係もあってそれ直すことができませんでした。

するとそれに気が付いた羽美は全ての流れを乱すことなくそれを素早く直し、それもあって無事に最後まで全体のダンスが続けられました。
確かにタイミング的にもポジション的にも羽美にしか直せないものでしたが、それを状況見て素早く判断し、そして行動に移せたのは素晴らしかったと思います。

これが稽古での出来事であったならきっと誰かが直せたでしょうが、本番の、しかも大千穐楽。
ここで出来たことは本人が冷静でいられたことと、しっかりと周りを見られていたからだと思います。

ここまでの様々な経験がそれを可能にしたのであれば、それは本人にとっては間違いなく成長と言えると思います。

また、大千穐楽の最後の1回の大切なダンスシーン。
これが椅子が倒れてしまったことによるハプニングでグダグダにならずに済んだことは、明らかにこれによるものも大きかったと思います。


2つ目は、SNSでの情報発信についてです。

今年の公演に向けて、キャスト全体からの情報の発信には明らかに不足している部分があったと、私は横から見て感じていました。
チケット販売の伸びや、SNS上でのみなさんの反応を見ながら、そこに少なからずの不安を感じてもいましたし、そういうことは別としても自分達がこれから出ようとする公演に対する発信がそれでいいのかと、正直大きな疑問も持っていました。

そこで羽美に対して、ツイッターでの発信に力を入れるようにという指示を、具体的な内容もある程度含めて伝えました。

するとこれに対し、羽美は昨年の公演での自身の経験も踏まえ、時に周りを巻き込むなどしてしっかりと発信に力を入れてくれましたし、結果的にこの公演全体を通じてもSNSの上での発信では羽美を超えるキャストはいなかったと思ってもいます。

ジャガイモンプロジェクトを発足させて以来、私は間違いなくSNSの力を利用してその活動の幅を広げてきました。
今ではSNSに直接頼らない部分もあったりしますが、やはりそれでもSNSの持っている力を大きく利用もし、そしてその力を実感もしています。

SNSにおいて、本当に大切であり本当に伝えたいと思うことは、その中で一度言っただけでは伝わらないと思っています。
タイミングによっては受信側のタイムラインの上で見逃されてしまったり、数多く溢れる情報の中に埋もれてしまったりもすると思います。

情報を見てくださっている方も、決して自分だけのことを見ているわけではありません。
世の中は様々な情報で溢れ、そしてたくさんの魅力で満ちています。

そんな中でなお自分が大切だと思うこと、本当に伝えたいと思うことは一度ではなく繰り返し発信するべきだと思います。
少なくとも私はジャガイモンプロジェクトの活動を通じてそれを実感していますし、それが真実だと確信しています。

だからこそ今回羽美には、しっかりと繰り返しの発信をするようにという指示をしていました。
そこには公演タイトル、日時、場所もちゃんと盛り込んで、それ観てくださる方に対して伝えたいことがきちんと伝わる発信を心がけるようにとも促していました。

結果、羽美は連日の稽古が続く中でも私の期待を上回る発信をしてくれていましたし、それがたくさんの方にも見えていたと思います。

この発信をすることによって実際具体的にどれだけの成果が出て、どれだけの方に新たに物事が伝わったのかは数字では表せません。

ですが、私からではなく、周りの他のスタッフ関係者からでもなく、出演キャスト本人からそういうことがされるというのは、数字で出てくる何か以上に意義があるものではないかと思っています。

この点は私からもしっかりと羽美に対して、「 よく頑張った 」 と伝えましたし、それを見ていていただいたファンの方からも羽美に対して賞賛の声をいただいていました。

公演に関わる以上は、良いものを作るに越したことはないけれど、ただ稽古ばかりに集中してそれだけを目指せばいいというものではない。
たくさんの方に知っていただき、観ていただき、そして楽しんでいただくためには同時にもやることがあると思いますし、それも含めての公演だとも思います。


羽美にとってはこの2年連続でのアリスインプロジェクト札幌公演への出演は、本当に色々なものを感じることもできたでしょうし、この経験が次の活動へと繋がっていくこともたくさんあるでしょう。

実際たくさんの方に自分を指名したチケットも購入いただき、改めて普段からそういう方々に支えていただいているからこそ活動できているのだということも実感できたと思います。
やはり自分の活動も自分自身だけでは成り立ちませんし、ただ活動していればいいというものでもありません。
それは今回の公演とも同じです。

みなさんにはきっとこれから、一回り大きくなった羽美を見ていただけると思います。


   


改めて。

今年も演出を手がけてくださったのはイレブンナインの 納谷真大 さん
アリスインプロジェクト札幌公演はやはりこの人あってこその公演です。
私が言うのもはばかられるほどですが、本当に凄い人ですし、その力はあまりに絶大です。

今年も3月中旬に集められた26人のキャストが、納谷 さん の演出によってどんどんと色づき、そして次第に変化していく様子は本当に鮮やかでもあり、座組自体も 納谷 さん だからこそのやり方でうまく1つにまとまっていったと思います。

「 札幌の座組は本当に仲が良い 」 という話をよく聞くのですが、これはやはり上に立つ人の存在もあってのものだと思います。

キャストの中でも自然とまとめてくれる存在がいたり、ムードメーカー、ホットメーカーがいるからこそ大人数が1つにまとまっていくということもあります。
ですがやはり、これを 納谷 さん が優しく包み込む形で1つにしてくださっているのは、我々スタッフの目から見ても明らかでした。


実際に劇場で観劇いただいた方は、この作品を観て演出の妙を数多く感じていただけたと思います。
また、台本を購入いただき、その中を見ていただけた方にはより一層そういう想いを持っていただけたのではないかと思います。

元々あった脚本に多くの手を加え、劇場でみなさんに観ていただくにあたってより魅力を加えていく作業というのは、誰にでも出来るものではなく、そして手掛ける人によっても様々変化していくものだと思います。


稽古期間や本番が始まってからも彼女達に対しての 納谷 さん の指導はその場のその時のピンポイントのことばかりではなく、今後のそれぞれの活動にも繋がっていくことがたくさん含まれていました。

時に声が大きくなることがあったとしてもそこには間違いなくそれぞれに対しての愛情が含まれており、意味のないものなんて1つもなかったと確信しています。

こんな場所で投げかけられ、そして交わされる言葉は全てが 納谷 さん から彼女達に対しての ” 金言 ” でした。

聞き逃してしまったり忘れてしまったりすれば、それはそれだけの ” 損 ” だとも思いますし、しっかりと自分で吸収出来ればそれだけ自分を成長させられる糧になるのだとも思います。
そんな場面を私が直接見ていたのは全体の中でもわずかですが、それでも本当に心に響く言葉がたくさんありました。

素人の私が稽古を見ているだけでも本当に興味深いことは次々に起こっていきます。

台詞1つの覚え方でも、このアリスインプロジェクトの公演に関わるようになるまでは、私は台本に書かれたものを丸暗記してから始まるものだと思っていました。
ですがそれも 納谷 さん は、「 台詞は覚えるものじゃではなく、その台詞が出てくる状況を作ることで自然と出てくるようになる 」 と、毎年のようにその年のキャストに伝えています。

1つシーンを作っていくにあたっても、実際にどんどん稽古を進める中で、大勢が同時進行的に動いているものをしっかりと把握し、その上で誰かの立ち位置を少し変えてみたり、移動経路を変更したり、立つ角度を変えたり。
また時に、台詞を大きく変更したり、語尾の言い回しを少しだけ変えたりもすれば、最初はなかった展開を加えたりもしています。

それは私がすぐ横で見ていても、本当にこの人の頭の中はどうなっているのだろうかと不思議になることばかりですし、実際に稽古の中で演出を受けている彼女達にとっては、まるでそこに神様がいるかのような出来事なのかもしれません。

そしてその場で実際に 納谷 さん が手を加えることで、そのシーンは明らかに良い方向へと変化していくのを見て取ることも出来ますし、逆に一度やらせてみて、彼女達の意見も聞きながら更に調整を加えていくこともあります。

また何でもなかったシーンが 納谷 さん の手によってあっという間に大爆笑で包まれるシーンに生まれ変わったりもします。

それはあまりに大胆な作業であり、そして緻密な作業でもあります。


そもそもこの演劇における ” 演出 ” って何なんでしょう。
改めて調べてみると、

「 劇に関しての全てのことを決定できる最高責任者 」
「 脚本に書かれたことを具現化する人 」
「 野球や映像の世界で言う 『 監督 』 」

というようなことが書かれていました。
ですが私はここで 納谷 さん がやっていることはこれらの言葉の中では表現しきれていない気がします。

これ以前に 納谷 さん と2人でお話をさせていただいた際、「 まずは台本を読み込んでその世界観を理解することが大変 」 ということを伺ったことがあります。

台本には台詞の流れは書かれていても、では誰がどこに立っていて、どこから出て来てどう歩くのかなど、具体的な光景に関してはほぼ何も書かれていません。
これが ” 脚本を具現化する ” ということに繋がっているのだと思いますが、出演キャストが多ければ多いほどこれも大変な作業だと思われます。

また今回の作品では、元々なかったシーンが大きく書き加えられたり、台本に登場しない人物を追加したりもしています。
1つ1つ挙げていけば本当にキリがないですし、またそれらを突き詰めていけば更にその作業量というのは無限大に広がっていくのだとも思います。

この道のプロのスタッフ同士の話の中でも、「 少なくとも北海道では納谷さんを超える人は今はいない 」 という会話が出てきます。

私がそんな 納谷 さん に最初にお会いしたのは、一昨年に初めて札幌でアリスインプロジェクトの公演が開催されるよりも更に1年前。
そんな公演の計画が始まろうとする中で、アリスインプロジェクト さん に 納谷 さん をご紹介いただき、初めて3者で札幌で顔を合わせました。
今考えるとあれは色々なもののスタートの瞬間であり、そして本当に凄いことだったんだなと改めて思います。

初めてお会いした時は正直、「 わ、怖い人がいる 」 と動揺してしまう自分もいたりしましたが、あの時に私の目の前にいた人は全く怖い人ではありませんでした。
そしてあの時に私が挨拶を交わさせていただいた方はこんなにも凄い人でした。


納谷 さん やその演出についてを本当に凄い人だ凄いことだといくら言っても、私の語彙力ではとてもそれについての全てをお伝えすることは不可能です。

イレブンナイン さん はこの夏以降も様々な自主公演をしていくとのことですし、これまでにも私自身、過去のそんな公演も思い切り楽しませていただいています。
そこでは 納谷 さん も1人の役者として登場し、今回の公演での役割とはまた違った形で輝いています。

もし今回の公演でそんな部分にも興味を持っていただける方がいるのであれば、ぜひとも イレブンナイン さん の公演にも行っていただければと思いますし、きっとその先ではもっともっと演劇を好きになったご自身に出会えると思います。

演劇がもっと好きになればアリスインプロジェクトももっと好きになっていただけるのではないかとも思っています。

そしてそんな人が更に増えていけば、この演劇の世界のファンも方も増えていくのではないかと思いますし、そうなれば回りまわってこのアリスインプロジェクト札幌公演も5年目10年目と、安定期に入ってなお一層みなさんに楽しんでいただけるようになると確信しています。

そうなれば演劇の世界で生きていきたいと思って頑張っている現役の役者ももっと安定して活動に励んでいけるものと思いますし、そういう世界に憧れを抱いて飛び込んでくる新星も生まれると思います。

やはりこの世界を支えていただいているのはみなさんなのです。


また、この公演に関わるイレブンナインのメンバーは 納谷 さん ばかりではなく、表側にも裏側にも、パンフレットに名前の出ているスタッフも、出ていないスタッフも、本当にたくさんのスタッフが存在しています。

また、イレブンナイン以外からもたくさんのスタッフが公演を支えてくださっていますし、その中には普段は役者として活動をしている人も数多く、そんなみなさんがスタッフとして動いています。

更には各キャストのプロダクションやご家族のみなさんも公演を支えてくださってるという意味ではその人数に数えられると思います。

内側にいる我々ですら、実際どれほどの人がこの公演に携わり、同じ方向へと向かって一緒に歩いているのかは正直把握できていません。
それほどに本当に多くの方に支えていただいてこの公演がスタートを切り、そしてこうして最後まで走り抜けることが出来たのです。


あるスタッフが、「 アリスインプロジェクトはあまりにやることがたくさんあって、時間が怒涛のように過ぎていく 」 ということを言っていました。
また同じスタッフが、「 役者をやるより疲れる 」 とも言っていました。

役者をやるということ、舞台の上に立ってたくさんの方に観ていただくことというのは、色々なものがすり減っていくのだと思いますし、また本当に体力を必要とするものだと想像します。
ですが、両方を経験しての実感としては役者のそれよりもはるかに疲れるとのこと。

詳しく聞くと、やはりいつもとは違う気の使い方をするから疲れるとのことでした。
確かにその気持ちはすごくわかります。


アリスインプロジェクト札幌公演は今年で3年目を迎え、作品は当然毎年違いますが、全体での流れというのはほぼ一定のものを辿ります。

表に見えるものとしては公演の開催が発表され、キャストの稽古期間中にチケット販売イベントを行ないます。
そこからは公演本番へと向かい、最後は5日間の公演開催。

これはあまりに大雑把な書き方ですが、当然この前後にも表側には見えない様々な準備や作業もあります。

役者として公演に向けて準備や稽古を重ね、そして本番にのぞむのも当然大変なことだと思いますが、アリスインプロジェクトを実際に札幌で開催するには普段はやらないような作業も数多く、またそこには自分達ばかりでなく外部の様々な人との調整もあったりします。
事務的なものだけでも作業量は膨大です。

1つ1つの役割を改めて挙げ連ねていくと本当にキリがないほどにたくさんの役割があり、そしてそれぞれの担当があります。
それには私自身がスタッフ側に入ってから初めて見えてきたものもありましたし、気づかされたことも数多くありました。

改めてそんなみなさんにも感謝をしたいと思いますし、少なからず同じ方向に向かってスタッフとして一緒に動けたことは私自身にとっても大きな誇りです。

実際は公演自体が終わったからといってこれで本当に全てが終了したのではなく、様々な事後処理があったりするなど、そういう意味ではスタッフの中でのダンスラインはまだまだ終わっていないとも言えます。

また、次の何かに向かっても動き出さなければもならないでしょうし、もし来年も公演があるのならそろそろ頭の中ではそんな次が動き出すのではないでしょうか。
全ては1つの終わりで区切られるのではなく継続していっているのです。



この 『 ダンスライン♪ 』 の脚本を書いてくださっているのは、アリスインプロジェクト発足以来多くの作品を手掛ける 麻草郁 さん です。

劇中も歌も、そんな 麻草 さん によって生み出されたものです。

我々はそんな 麻草 さん の存在も忘れてません。
何もない真っ白なキャンバスに一番先に色を付けるのは 麻草 さん であり、そんな1歩目がなければそこから何かが始まることは絶対にありません。

そんな 麻草 さん がある日、ツイッターに投稿された一文をここで紹介させていただきます。

「 脚本は道路、その上を走る車やバイクがいなけりゃ、ただの道です 」 ( 一部略 )

私はこれを見た時、改めて心を何かで叩かれるような、そんな衝撃を受けました。

もうここに私の余計な言葉は必要ないと思います。
どんなに素晴らしい作品も、そこには間違いなく初めの1歩があり、そしてそこからたくさんの人の手によって編み上げられる。
そんな想いが改めて強くもなりました。

私もそんな 麻草 さん とはジャガイモンを通じてもう何年も前から交流をさせていただいていますが、実はまだ直接お会いしたことがありません。
絶対にいつかお会いしたい方の1人であり、そんな時にはぜひ色々なお話を伺ってみたいとも思っています。



今回の舞台、『 ダンスライン♪SAPPORO 』 は、タイトルにある通り、ダンスがとても重要な意味を持ち、そして作品のキーポイントともなる部分でもありました。

実際に舞台を直接観ていただいた方にはご理解いただけると思いますが、物語の中で何度か出てくるダンスのシーンには観劇いただいたみなさんも色々なものを感じていただけたのではないでしょうか。
これには私自身も本当に大きく心を揺さぶられましたし、今までに見たどんなダンスよりも感動したといっても過言ではないとも思っています。

今回の公演に向けてキャストのオーディションが行なわれた頃、彼女達の実力は本当に様々でした。

その場で教えられた振り付けをまるで前から練習していたかの如く華麗に舞う子もいれば、自信なさげに周りばかりを見て、それでもやはり全然ついていけない子もいました。

中には普段からダンスのレッスンを受けている子や経験の長い子もいれば、ダンスなんて全くしたことがないという子もいました。
本当にそれぞれです。

では、その場でダンスが上手だった子がそのまま起用され、そして更に今回のダンス部の役に割り振られたのかと言えば、それは全くそうではありません。

役どころはダンス部員であったとしても最初は全く踊れていない子もいましたし、逆にそれ以外の役どころの子でもオーディションの時からダンスで魅了してくれた子もいました。

それは当然、ダンス以外の ” 演じる ” という部分も配役を決めるにあたっては重要な要素ですし、当然ダンスだけで役を決めるわけにはいきません。
そういう両方を見比べての配役だったと思います。

また、今回必要とされるダンスは ” ラインダンス ” 。
誰かが主役で誰かが脇役という割り振りはなく、ソロで目立つのではなく、全員が揃ったアンサンブルが大切でした。

元来の実力がバラバラだからこそ練習も本当に大変だったでしょうし、やはりこの稽古期間中にダンスばかりを練習するわけにもいきません。

全体での練習の時間外に、ダンスの指導をしてくださった 工藤香織 先生 に個別で指導してもらったキャストもいれば、しっかりと覚えたキャストがそうではない仲間に教えることもあったそうです。
こんな支え合いもチームワークを育て、そしてお互いを信じ合う地盤を作っていったのではないかとも思います。

稽古の期間をずっと見守っていたあるスタッフも、「 ダンスが仕上がっていく様子に感動した 」 ということを言っていました。
彼女達はこの期間を通じて、本当にたくさんの人を感動させるものを作り上げたのです。

確かに隊列が乱れてしまったり、タイミングがずれてしまうこともありました。
仕上がりをもっと追及していけば、きっと更に質の高いダンスを完成することもできたのかもしれません。

ですがこの舞台の上で繰り広げられ、そして繰り返し披露されたダンスは、ただ完璧に踊れればいいのかと言われればそれはそれだけではないのではないかとも思っています。

きっとそこには何よりも気持ちがこもっていることが大切だったのだと思いますし、一生懸命に取り組んだ彼女達の想いがのっかっていることが観ている側の感動を誘ったのだろうとも思います。

本当に素敵なダンスだったと、私は心から思っています。


あるキャストが公演後の挨拶で、「 ダンスの成長と、座組そのものも成長が重って ・・・ 」 という言葉を口にしていたことがあります。

今回は学園の中でみんながダンスを ・・・ という物語の中での設定でしたが、それはお芝居の中の一部としてではなく、彼女達は純粋にダンスそのものを上達させるためにも練習を重ねたのだとも思います。

結果として本当に素晴らしいものが完成し、それを披露することが出来たと思います。

一方で、ダンスばかりでなく様々な稽古を重ねることでこの座組そのものも確実に成長していきました。

最初はバラバラだったものが成長を伴ってやがて1つになっていく。
それは今回のダンスにも、座組そのものにも言えることだったのだと思います。



お芝居自体も、昨年までのものとは明らかに違う仕上がりを見せていったと、多くのスタッフが同調しています。

今年の座組は昨年までよりも全体でアイドルとしての活動をしているキャストが減り、より ” 演技寄り ” のキャスティングがされました。
これは演出側の希望や、理想として頭の中に描くものがあってのキャスティングです。

お芝居をすることに慣れていない子か多いと、稽古そのもののスピード感も多少落ちていくのでしょうが、今年は役者として活動している子を中心に、明らかに昨年までのそれとは違うスピード感で進んでいったようです。

これまでの稽古では1つのシーンの中で誰がどこに立っているとか、どう移動していってどこで台詞を話すとか、それは1つ1つほぼ全てを 納谷 さん の細かな指示によって作られていました。

ですが今年は特に役者としてのキャリアを積んでいる子に関しては自分がどう動くのかを自ら判断させ、ある程度の流れを観たところから 納谷 さん の演出が加わるという形で進められた部分も多かったとのことでした。


またこの ” 演技寄り ” という部分は稽古期間中だけに言えることではなく、本番が始まってからの舞台の上でも感じていただけたことではないかと思います。
演技そのものが演技然としており、公演全体でのレベルが上がっているのが劇場で観ていただいたお客様にも感じていただけたのではないでしょうか。

アイドルだからどうとか、役者だからどうとか、スタッフが先入観で判断するのは間違いですが、それでもやはり今年の全体のそういうバランスは、結果として昨年までのものとは違う何かを生み出したのは間違いない部分だとも思います。


アイドルは演技ができない、役者は演技が上手というような単純な考えも出来ません。

アイドルで演技初挑戦のような子であっても、ビックリするような安定した演技を見せてくれる子もいますし、それはこの3年のアリスインプロジェクト札幌公演の中でも数多く起こったことです。

役者を目指す子でもやはりその実力は様々でしょう。


ダブルキャストの4組の組み合わせも、星組と月組とで少し似たような子を配置したところもあれば、全くタイプの違う子を配置している箇所もありました。
更には変則ダブルキャストを採用したことで、同じ作品を描く中でも2つの組の間には様々な違いが見られるようになったと思います。

公演が始まってからも1つのシーンが追加されたり、台詞や細かな部分が繰り返し変更され、結果的に初日と千穐楽とではキャスト自体の慣れも含めて色々な違いも生まれたと思います。

また、今年の作品は回ごとに各キャストのアドリブに任せられたところや、かなり自由度の高いシーンがあるなど、観ている方にとっても毎回変化を伴う箇所がアチラコチラにあったと思います。

これらはしっかりと稽古が重ねられて一度完成形を見た部分だからこそそこからある程度崩したり形を変えたり出来るものであり、納谷 さん がそこは本人達に任せてもいいと判断出来る部分でもあったのだと思います。

やはりこれは彼女達がそういうレベルに達していたという証拠であり、納谷 さん から信頼を受けられているということだとも思います。

演技をする、何かを演じるという大きなくくりの中では、最初からある程度のものを持ったキャストも今年はいつも以上だったのかもしれません。

しかしだからといってその何人かが頑張れば全てがうまくいくのかと言えば、それは全く当てはまりません。
むしろそれでは全体のレベルの差が開き、バランスも保てなくなってしまうと思います。

そんな彼女達の様子を見ていても、この座組は誰か1人が頑張ることで力が引き上がっていったのではなく、みんながお互いを高め合ったことによって力をつけていったということが伝わってきますし、全員の力で他のどこにもない、誰も真似できないような雰囲気が構築されていったのも確かです。

ダンスもお芝居も、そして座組そのものも、手に取るように、そして目に見えてわかる程に成長していった。
それが今年の26人であり、この座組だったのだと思います。



今回の 『 ダンスライン♪SAPPORO 』 はこれで終わりました。

もしまた同じ脚本で公演が作られることがあったとしても、それでさえそこには全く同じものは存在しません。

キャストの1人が変われば何かが変わるでしょうし、そこには当然それぞれの成長もあるでしょうし、その時のそれぞれの環境によって変わってくる何かもあるでしょう。

そういう意味でも今の 『 ダンスライン♪SAPPORO 』 は今だけのものであってもう二度とやってきません。


直後から彼女達は予想通りに ” ダンスラインロス ” に改めて襲われているようです。
そんな声は多くのファンのみなさんからも伝わってきます。

大きな喪失感は大きな思い出を伴って、そして心の中で無限大に広がっていくと思います。

そんなみなさんの心の中に、この 『 ダンスライン♪SAPPORO 』 はどんな色を持ち、そしてどんな形を持って広がっているのでしょうか。

それぞれによって色や形は違っても、それでもやはりここで一緒に1つのものを体験できた体感できたというのは、何物にも代えられない出来事であり、そしてかけがえのない共通の思い出でもあります。




今年も本当に色々なことがあった公演だったと思います。

チケット販売開始当初は明らかにその伸びもゆっくりとしたものでした。
しかしそれでもやはりこの公演を楽しみにされていたたくさんの方にチケットを購入いただき、更にたくさんの方に対して情報の拡散をいただくなどもしていただけました。

また、公演がスタートしてからも本当に数多くの口コミや情報の発信もいただき、おかげさまで結果的には過去最多のお客様に作品をお楽しみいただくことができました。

繰り返しの来場をいただいた方の力も大きかったと思いますし、一度の観劇をいただいた方の想いも、キャストの子達や我々スタッフにはしっかりと届いています。

今回私自身が会場で実際にお会いできた方、またそうでない方もいらっしゃいますが、たくさんの笑顔やいただいた言葉には本当に何度も何度も心を揺さぶられ、時に涙を抑えられないこともありました。

ご来場が叶わなかった方からもSNSなどを通じてたくさんのコメントやご連絡をいただき、そんなみなさんのパワーや想いも、劇場まで間違いなく届いていたと確信しています。


一度の公演、一度のお芝居。

終わってみればわずかに5日間の出来事だったかも知れませんが、みなさんには公演を行なうことを発表させていただいて以来、本当にたくさん支えていただき、そして時に元気や勇気もいただきました。

そう考えてみると、これはわずか5日間の出来事ではなく、キャストと、そしてみなさんと共に走り抜けた45日間であり、実際は更にもっと長い日々だったと振り返って想います。

楽しいことや待ち遠しいことは、過ぎ去ってしまえばあっという間の出来事に思えます。

てすがこの稽古や準備に追われた日々はその時々にはすごく長くも感じていましたが、そんなみなさんと共に過ごした日々だったのだと考えると、やはりこれもあっという間の出来事だったようにさえ感じます。

いくら凄いキャストを揃えても、どれだけ完成度が高いと自信の持てるものを用意出来たとしても、やはりそこにはお客様がいていただかなければ何も始まりませんし、そして当然何も終わりません。

全てはこの公演の座席に座っていただいたみなさんのおかけであり、遠くから応援いただき、パワーを送ってくださったみなさんのおかげだったのだと、今改めて実感しています。

そしてそんなみなさんのおかげで26人のキャストは誰一人欠けることなく最後まで一緒に走り切りました。



ここまで同じラインに立って同じ景色を見つめていた彼女達の日常もここで終了です。
この先は別々の方向にそれぞれのラインを引いて歩いていきます。

彼女達に共通して流れてきたこの45日間という時間はここで終わり、もう46日目を迎えることはありません。
いくら願っても祈っても、彼女達のそれぞれの時間や歴史は次第に変化を伴って確実に前に進んでいくのです。

それでもそれぞれ別々のラインの先で、いつか再びお互いが交差することもあるでしょう。
その時はまた、2018年の春、札幌の桜が満開だった頃に自分達が作ったラインについての思い出話で盛り上がることでしょう。

彼女達が紡いだこの作品の物語は一旦ここで終わります。
ですが、彼女達が共に作り上げた彼女達自身の物語はきっとこれからも続いていくのだと思います。

どんな色を付け、どんな形に変化し、そしてどんな輝きを放つのか。
それは彼女達それぞれのこれから次第です。

私は、その輝きに向かって前に進もうとする彼女達の姿を、これからも見守っていきたいと思います。

彼女達にとってのそれぞれの時間はすでに動き出しているはずです。


   


誰もがどこかで、誰かとつながっている。

これは、私達関係者が一番最初に受け取った資料の最初のページにも書かれていた言葉であり、パンフレットにもポスターにも公演タイトルのすぐ横に書かれています。


誰もがどこかで、誰かとつながっている。

これは作品の中で描かれた物語にも言えることだと思いますし、物語を紡ぐ全ての人にも言えることだと思います。


誰もがどこかで、誰かとつながっている。

これは作る側ばかりでなく、この公演を支えていただいたお客様や全ての方にも言えることだと思います。


誰もがどこかで、誰かとつながっている。

そしてまた来年、きっと再び ・・・ 。



全公演終了直後、演出の 納谷真大 さん に、今回の感想を伺いました。
完全独占インタビューです。



(アリスインプロジェクトの公演を) 札幌でやることになってから3年は何があってもやろうと決めていました。

今年はそんな3年目だったので、これまで以上にプレッシャーもありました。

僕は演技が好きな演劇畑の人間なので、今回がこれまでで一番演技について頑張りましたし、だからこそガールズ達はこれまで以上に僕に演技のダメ出しも受けたと思います。

ガールズ達はしんどい思いもしたと思いますが、そのおかげでおそらくこれまでの中でも演技の今回がクオリティが一番高かったし、全体のアンサンブルも含めて一番演劇的にも成功した公演だったのではないかと思います。

演劇的なことで苦労することもありましたし、( 本番が始まって ) 初日と2日目は割と心配でしたけれど、途中からは本当に安心できるようにもなりましたし、この3回の中で公演中にガールズ達が成長できた公演だったのではないかとも思います。



『 ダンスライン♪ 』 は札幌での終了後、東京へとその想いは引き継がれました。

5月9日から13日まで、品川・六行会ホールにて、『 ダンスライン♪TOKYO 』 として、札幌と同様に全8公演が行なわれ、こちらも札幌と同様にたくさんのお客様の感動の渦が出来たそうです。

脚本自体は 麻草郁 さん が原作であり、ベースにあるものは札幌と同じものですが、こちらは 夢麻呂 さん が演出を務められ、また札幌とは違った魅力を持った作品が作られたそうです。


札幌は26人、東京では35人。

ガールズ達の数だけそれぞれの想いが舞台を包み、そしてそれぞれの一生懸命があったと思います。

この両方を観劇されたお客様もいらしたようですし、札幌からは数人のキャストやスタッフも東京へと観劇に訪れたとのこと。

一部にはこの両方に携わったスタッフもいますが、そのそれぞれのスタッフ関係者の数だけでもかなりの人数になるはずです。

当然お客様にもこの各8公演、計16公演の間、たくさんの客席を埋めていただきました。


13日、東京での舞台も全公演が終了したとの報に触れ、私自身直接は携わっていないはずですが、それでもなんだかとてもホッとした感じを受けましたし、同時にやはりそんな舞台を彩ったガールズ達に拍手をせずにはいられませんでした。


夢麻呂 さん によると、東京での千穐楽は順風満帆のままに迎えられたわけではなく、曰く、「 神様の悪戯。神様が最後に課した試練 」 もあったそうです。
それでも最後は、「 お客様の為に舞台に立ちたいというキャストの意地とプライド 」 で乗り越えられたとのこと。

最後は 夢麻呂 さん ご自身も号泣だったそうで、スタッフも含めた東京チームのみなさんが全員の熱い想いでこれを乗り切ったことが伝わってきます。



札幌から東京へと引き継がれた1本のライン。

これは出演したキャストばかりではなく、これに関わっていただいた全てのファンの方やお客様、そしてスタッフ関係者も含めて全員にとってのラインです。

このラインは誰か1人が描いたものではなく、ここに携わった全ての人が紡いだラインです。

そのラインは、札幌と東京を繋ぎ、そしてみなさんにとっての ” 伝説 ” になりました。




東京公演のフライヤーです
   
(フライヤーはクリックで拡大してご覧いただけます)


2018年5月14日 掲載

ジャガイモンプロジェクト代表 ・ 川崎康







4月22日

舞台本番を直前に控え、劇場に実際に入っての活動を行うことを 小屋入り といいます。

公演本番のスタートを前に、スタッフ関係者と共に実際に本番で使用する劇場に入り、ここからスタッフのみなさんの手によって舞台の上にセットが組み上げられ、更には照明や音響、その他様々なことを準備し、そして確認していく作業の始まり、それが小屋入りです。


キャストのオーディションなどを経て3月中旬から稽古が始まったこの公演も、本番スタートの25日の2日前となる23日には コンカリーニョ へと小屋入りとなります。

私はその前日となる22日、本番直前の稽古場を訪問し、その熱のこもった稽古を見学取材してきました。


このアリスインプロジェクト札幌公演の一連の期間中、私は例年何度もこの稽古場を訪問することがあります。
それはタレントさんがいる時もあれば、スタッフ関係者しかいない時もあります。

ですがそんな中でもこの小屋入り直前の訪問は他のどの時とも緊張感も違えばその空気感も全く違います。


序盤は1日4時間程度だった稽古も今月中旬くらいからはその時間も長くなり、いよいよ本番に向けた最終段階に入っています。

また、小屋入り前の稽古場での稽古の最終盤は、これまではシーンごとに区切るなどしてバラバラに練習や確認などが行なわれていたものを組み上げ、最初のシーンから最後まで一気に稽古を行う 通し稽古 も行なわれています。

小屋入り後もまだ稽古は続き、実際のステージの上での様々な最終確認が行なわれます。
また、本番直前には ゲネプロ と呼ばれる、実際に客席に関係者などが入っての公開稽古も行われます。

もう本番までの時間は残りわずか。
1つ1つの時間、そして全ての瞬間が今まで以上に大切です。



翌日に小屋入りを控えているということは、彼女達がここまで連日通い、そして共に汗を流してきたこの稽古場ともお別れです。

そんな大切な稽古場での時間を共にさせていただくにあたって、私の中には毎年同じ決め事があります。
それはこの場での存在感を消すことです。

関係者としてこの場にいるとしても、取材も兼ねているとしても、それが応援だったとしても激励だったとしても、やはりこの稽古場でのいつもの流れを乱すことはご法度です。

これまでの活動の中で何度もご一緒していたり、また様々な機会で交流がある方、また逆に今回の公演を通じて初めてお会いする方もいますが、そこは一旦横に置いて極力静かにすることを心がけていますし、そうでなければならないとも思います。

まずは、そんな彼女達の努力や頑張りを、静かに見守ります。




この日の稽古の開始は13時。
これを前に30分ほど早く稽古場に入りました。

その時点ではまだ数人しか到着していませんでしたが、次第に続々とキャストが集合し、それぞれの過ごし方でそれぞれの準備が進みます。

到着してすぐにここからの長い稽古に備えて食事を取る子、入念にストレッチをする子、衣装の確認をする子 ・・・。
それは様々であり、時に数人で仲良く、そして時に1人で集中してと、稽古開始に向けた時間が過ぎていきます。



この日の稽古はまずは冒頭のシーンから流れに沿って、ここまで作ってきたものに対して更に精度を上げ、そして輝きを増すための作業が続きました。

そんな稽古の中で 納谷 さん が演出をし、そして彼女達を指導する言葉には数々の金言が含まれています。
それは私が同様に稽古場を訪れている昨年も、そして一昨年もそうでした。

動きや台詞、立ち位置や流れ。
そんな1つの指摘は具体的な場所に対してのものであると同時に、この舞台が終わった後の彼女達にも残るであろうものがたくさん含まれています。


舞台公演を前に具体的な言葉を書き連ね、本番へ向けてのネタバラシになってしまうようなことを避けつつ、そんな様子をいくつか紹介させていただきます。


この日の演出指導の冒頭で 納谷 さん から出てきたものの中に、” やる気 ” に対する言葉がありました。

例え ”やる気 ” を出して頑張っていたとしても、それを見る側の人がそう感じなければ、それは ”やる気がない ” という評価をされてしまうし、逆にやる気がなかったとしても、見る側にとって ” やる気がある ” ように伝われば、それは ”やる気がある ” という判断になる。

この場では今回の作品に対する、そして彼女達の今に対する直接的な言葉ではありましたが、この考えというのは他の様々な場面で、そして色々な人に対しても言えることだと思います。

考え方を変えると、場面によっては、人に ” どう見られようが ” 一生懸命に頑張る、努力するということも必要なこともあるでしょうし、それが評価へと繋がっていくこともあるでしょう。

ですが彼女達が今やっていることというのは、やがて始まる舞台で、たくさんの方に観ていただくためにやっていることであり、そこには ” どう見られようが ” というものはあまり当てはまりません。
観ていただくために作っているものだからこそ、どのように見えるのかというのは大切なことですし、それが自分自身だけではなく全体の評価へと繋がっていくものです。

そういう考えを今回の話に落とし込んでいくと、やはり ” やる気があるように見える ” ということと同時に、” やる気がないように見えてはいけない ” ということになるんだろうとも思います。
劇場に来ていただく方、実際に観ていただける方々に、 ” 観ていただくため ” に作っているものである以上、やはりこのポイントというのは通常の生活以上に大切なんだと、この言葉で改めて実感しました。


またこの、” どう見えるか ” というのは、1人1人の具体的な何かばかりではなく、1つのシーンや1つの動きに関しても同様のことが言えます。

この日の演出にはそのような部分も多く含まれていました。

実際の劇場に舞台セットが組み上げられられると、そこには具体的な距離感があったり、場所によっては作られた段差があったりもします。
ですがこの稽古場にはそのようなものはありません。

事前に準備された舞台セットのミニチュアがその場にあり、それをもとに床には段差などを想定したビニールテープが張られたりもしていますが、縦横の距離感や広さは実際のものとは大きく違います。
理想としては実際に使う劇場で稽古を継続的にずっと出来るのが理想なのでしょうが、そんなことは劇場自体を自分達で所有しなければ不可能。

稽古場ではそんな理想と今ここにある現実との差を埋める作業も続けられます。

キャストが様々動き回る中で、この場所に立った方が次のシーンに向かってスムーズなのではないかとか、複数人数が正面から見て重なり合わないようにどう位置取るべきとか、実際の本番の流れの中での機能性と、観客側からの見た目の両方を求めていきます。

それは台詞を話している人ばかりではなく、同時進行的に舞台上で動いている人にも及び、また台詞が交わされる中でお互いの立ち位置が交わったり変わったりしていくこともあります。

特に大勢が一度に舞台の上にいる時には台詞を話す人が誰かの陰に隠れたり、また意図せずに後方にいることは理想的ではなく、ではそれをどう解消し、そこに向けて1つ前の動きをどうすることによってそこにスムーズに入っていけるのかという、” 組み立て ” のような作業が続きます。

気が付くと数人が横1列にきれいに並んでしまうなど、日常の生活の中で少し不自然な部分があった時は、「 人は不安になると横に人が見えることで安心するけれど、舞台の上でそれが起こると不自然だ 」 という考えから、その不自然な列を微妙に崩すような作業も行われていました。


この稽古は私自身も彼女達の正面に座る 納谷 さん のすぐ横に座らせていただいており、指導の前と後とで明らかに変化が出る様子が手に止るようにわかりました。
またこの前日までの稽古を直接観ていないからこそ、私にとっては流れの中で一瞬理解ができなかったり、またわかりづらいシーンがあったりもしたのですが、そんな部分もちょっとした演出によってどんどん変化していきました。


実際 納谷 さん 自身も、「 初めて観た人にどう伝わるかというのが大切 」 とおっしゃっていましたが、まさにその通りだと思います。

この公演は全8回の舞台があるものの、劇場で観られる方の中には1度だけ観るという方が当然たくさんいらっしゃるでしょう。
「 何度か観ることによってより深みが出た 」というものであればいいと思いますが、「 何度か観てようやく理解できた 」 というシーンがいくつもあるのは望ましくないと思います。

舞台全体の流れの中で観ている側の理解がついていかないままに進んでしまうシーンも、今作に限らず時にはあるのかもしれませんが、やはり基本的には ” 初めて観た人にどう伝わるか ” というのは本当に大切なことだと思います。

この時点で私自身は事前に台本にも目を通し、物語の全体的なことに関しては分かった上でこの場にのぞんでいます。
お客様が劇場に足を運ばれて本番の公演を観るのとはかなり違った環境や事前準備がありましたが、それでも少し理解の追い付かない部分がありました。
ですが、そんな部分もこの日の稽古で精度が上げられ、そして細かな修正もされていきました。

稽古期間も最終盤となり、ここまで来るともう大きな修正や変更というのはリスクをはらんでくるものになるとも思いますが、それでも少しでも良いもの、素晴らしいものを届けるための努力や工夫、そして取り組みというのが進んでいきます。



一方で、この時点だからこそ直さないという部分もありました。

今回の場合、それは ” 訛り ” です。
どのキャストとも、どの部分かとも申しませんが、ところどころに北海道独特の発音の訛りが出てきてしまうのです。
これは今回の限らず過去の作品でも同様のことが言えました。

またその部分というのは、全キャストが北海道出身であるという環境の中ではお互いにほとんど気が付けないものであったりもするのですが、関西出身の 納谷 さん には明らかに気になる部分だそうです。
そういう部分もこれまでの稽古では事ある毎に指摘され、そして修正が重ねられていたそうですが、演技に集中しすぎてしまう結果、1度は直したはずの部分が疎かになってまた訛ってしまうということが何度かあるそうです。

ですがこの訛りも、この日の稽古からは、「 もう気にしなくていい 」 「 そのままでいい 」 という判断になりました。
それは、「 この子は何度言っても無駄 」 とか、「 どうでもいい 」 というのではなく、本番までの時間を考え、” 訛りを直すよりも大切なことがある ” という判断です。

誰かが訛ったこと笑いの起こる中でも、納谷 さん のその一言でグッと集中力が高まるのを感じる瞬間でもありました。
実際に劇場でご覧いただける方には是非ともあえて残されたそのような箇所も探していただければと思います。



1つの舞台の中には笑える部分があり、そして泣ける部分があり、そんな波が大きく押し寄せてくるような作品がたくさんあります。
今回の作品もきっとそんな作品だと思いますし、観る方にとってもそう感じていただけるものだと思います。

この、『 ダンスライン♪SAPPORO 』 。
元々はアリスインプロジェクトではお馴染みの脚本家・ 麻草郁 さん の原作が存在します。

その台本には具体的な台詞やシーンの流れが書かれ、そして物語の全てが書かれていますが、ある意味ではその ” 物語の全て ” というのは当てはまらないとも言えます。
感情や表現に関してなどそこには書かれていないこともたくさんあり、そんな部分を創造して組み立てていくのが演出家であるとも思います。

また今回、納谷 さん はそんな台本をかなり大きく書き変えていますし、当初はいなかったキャラクターを増やしたりもしています。
更には元の台本に活字のみで書かれたものを具現化し、それを大きな形にしています。

そのどのシーンも、そして書かれた台詞の話し方なども、全てはキャストの彼女達の理解ややり方の上に 納谷 さん が演出を重ねているものです。


作品の中での泣ける部分というのは、物語そのものがそこを狙って作られている部分でもあると思います。
ですが、笑いの部分というのはほぼ1から作って積み上げていかなければならない部分でしょうし、ここには演出の仕方によって大きな違いが出てくる部分だとも思います。

そういう意味では 納谷 さん の ” 笑い ” の作り方は横で見ているだけでも本当にすごく、私が言うのもおこがましいですが、「 こういうのを才能っていうんだろうな 」 といつも実感させられます。
1つのシーンや台詞の中だけでも、そこをどう面白く見せるか、どう笑わせるのかというのが本当に深く考えられており、そこにはたくさんの工夫やアイデアが詰まっています。

納谷 さん が、1つのシーンの中で作る笑いの演出には、キャストの彼女達からも笑いが起こり、時にツボにはまってしまって稽古が進まなくなってしまうことすらあります。
そこには台詞そのもので笑いを取るものもあれば、表情や動きで伝えようとするものもたくさんあります。

舞台の上でも台詞が進む場所とは違ったところで、ずっと面白い表情をしている人もいます。
その笑いが起こる瞬間に向け、その前段階からいわゆる ” 前フリ ” を仕掛けている人もいます。

きっとこれは1度観ただけでも楽しめるものでしょうし、複数回観ることによってまた違った楽しさを見つけられる部分でもあると思います。

また、同じ台詞を言うにしてもただゆっくり喋ってはさほど面白くないものだとしても、周りに考える隙さえ与えないほどに矢継ぎ早に仕掛けることでそれが笑いに繋がる部分もあります。
ここに具体的には書けませんので、少しわかりづらい表現にもなってしまっているとは思いますが、是非ともそんな部分も探し、そして楽しんでいただければと思います。

普通にしていたら普通で終わってしまうようなシーンや動きでも、足の運び方1つで面白くなってみたり、あんなことをやらなそうな人があんなことをやってみたり ・・・。
それぞれのキャラクターを特徴づけるため、細かい演出も数多く行われています。
とにかくそういう意味での見所もたくさんです。



今回の作品は、「 ダンスがすごい 」 という話が、彼女達のSNSなどを経て発信されていました。
また私自身はそんな情報をスタッフを通じて事前に聞いてもいました。

作品名にも ” ダンス ” というキーワードが直接的に入っている作品ですから、そんなダンスにも注目が集まるのは必然的でしょうし、過去の札幌での2作品と比べても、その比重は明らかに大きなものだとのこと。

そんな情報を得た状態で稽古場で見たダンスは本当に本当にすごかったです!

まだ本番の舞台ではない、そして衣装も着ていない状態でのものではありますが、彼女達の1つ1つの動きやその眼差しには、本気で感動してしまいました。
稽古が続く様子をスタッフの立場として観ていたはずでしたが、途中の景色は確実に涙で霞んでしまいました。


大人数でのダンスもしっかりと揃っており、これまでの彼女達の努力を感じさせるものでもありました。

実は今回、私は出演者の一部のオーディションから参加していており、彼女達がそこに挑んでいる様子も見ていました。
そこではその場で教えられる振り付けに対してのダンスのテストもあったのですが、ダンス経験豊富な子もいればそうでない子もいる中でその格差はバラバラ。

当然ダンスだけで全てのキャストをオーディション選出したわけではないため、振り返ってみると結果的に今回の出演が決まったキャストの中にもオーディションでは全然踊れていない子も多数いました。

ですが今回稽古場でそんな彼女達がみんなで作り上げてきているものには大きな成長を見ることができました。
早くみなさんにも観ていただきたいですし、是非ともたくさんの方にそんな彼女達の頑張りを感じていただきたいと思います。



また、稽古の中盤には歌唱指導の 木幡周子 先生 が来られての歌の指導も行われました。
ですがこの指導はあっという間に終了してしまいました。

まずそんな稽古の冒頭に歌を一度歌った時点で、木幡 先生 は、「 素晴らしい 」 という言葉が繰り返されました。
そしてそんな中で歌のパート割りだけをごくわずかに変更し、もう一度歌った時点で、「 よくなった! 」 と感想を漏らされ、この日の指導はこれで終了です。

予定よりもはるかにはるかに早く終わってしまいました。
それだけ彼女達の歌の精度も上がっているということでしょう。


アリスインプロジェクトの公演はどの作品も ” 歌 ” にも大きなポイントが置かれています。
各作品に合わせて作られたオリジナル楽曲はその作品を彩り、そして更に想いの強いものへと進化させていきます。

それは公演後にその曲を耳にするだけで目の前で繰り広げられた景色が瞳の先に蘇ってくるようでもあり、改めての感動を呼び起こすものでもあります。

私自身、アリスインプロジェクトがこれまでに東京で制作してきた作品のいくつかを映像を通して観ていますが、そのいずれの作品も、歌の部分に関しても感情移入するに値するものであり、そして心を突き動かす何かを感じることができるものばかりでした。
札幌での過去2作品にも同様のことが言えると思います。

そしてこれは今作にも間違いなく言えることだと、私は自信を持って全ての人にお勧めできますし、この歌もそしてダンスも、例えどんなに大きな期待をしていただいてもそのみなさんの期待を上回ったものを感じていただけるとも思います。




この座組には3年連続でアリスインプロジェクト札幌公演に出演しているキャストもいれば、今回が初めての舞台だというキャストもいます。
ベテランもいれば、下は中学生までいます。

そんな中、今回初めてアリスインプロジェクト札幌公演に参加するキャストの中にはこれまでに演技経験が豊富な子が多く、そんな子達がこのアリスイン札幌全体に大きな刺激を与えているのが凄く伝わってきました。

特に、Casting office EGG さん から初参加の、塚原樹 さん 、齋藤千夏 さん 、田川麗捺 さん 、駒津柚希 さん の躍動は、きっと本番が始まってからみなさんの目を引き付けるものと思います。

今回は過去2年の座組と比べると、アイドル色が少し薄れて、高い演技力を期待出来るキャストが多数選ばれており、この4人はその象徴と言えるとも思います。

稽古中に 納谷 さん からの演出に対して、ただそれに応えるのではなく、更に1つ工夫をプラスしてくるような瞬間を何度も目撃しましたし、きっと本番までのあとわずかな時間の間にも更に成長をしてくれるのだろうと確信しました。


また、須田そより さん の表情の作り方も、間違いなく見所になると感じました。
彼女もアリスイン札幌は初参加ですが、これまでの演技経験は抱負であると同時に評価を受けている存在です。

台詞を話しているところばかりでなく、彼女が演じるキャラクターがどんな感情でその場にいるのかというのがその表情を通して凄く伝わって来るのと同時に、これまでのアリスイン札幌にはいなかったような存在を感じました。
是非ともそんなところにも注目していただきたいと思います。


アリスイン札幌初参加という観点では、工藤沙貴 さん にも注目です。
沙貴 さん はイレブンナイン所属ということで普段から 納谷 さん の薫陶を受けており、この座組を引っ張っていってほしい存在でもあります。


更に、国門紋朱 さん の動きや表情は見逃さないで欲しいとあえて言わなくても、きっと客席のみなさんの視線が自然と集まることだと思いますし、その役者としての凄さに驚きすら感じていただけるのではないかと思います。


フルーティーの 北出彩 さん もアリスイン札幌初参戦で演技初挑戦。
作品の中では、同じくフルーティー所属で昨年もアリスイン札幌に参加してくれた 長久保桃子 さん との掛け合いが秀逸です。
本当に演技が初めてなんだろうかという良い意味での疑問すら感じてしまいますし、普段から一緒にいることの多い 長久保 さん と組んだことで彼女達2人にしかできないであろうコンビネーションを何度も見ることができます。


また今回は東京から来てくれた2人の存在も大きいです。

ジャガイモンプロジェクトとしてのお付き合いももうすっかり長くなった 工藤夢心 さん は高校卒業後に東京へと旅立ち、昨年はアリスイン東京での舞台も経験するなどしています。
今回はそんな自分自身の中に蓄積されたものと共に北海道に戻ってきてくれました。
ファンのみなさんにとってもまさに待望の瞬間だと思います。


そして、やはり 金澤有希 さん についてここで触れないわけにはいきません。
苫小牧出身の 金澤 さん ももう何年も東京で活動をし、つい先月まではアイドルグループ・ GEM のリーダーを務めていました。
また、アリスイン東京の舞台では主演を務めたこともある実力者でもあります。

そんな彼女のこの座組への参加は、今回の目玉でもあり、当然注目されるポイントでもあります。

今回の稽古の中でもそんな 金澤 さん の目力の強さにグッと引き込まれそうになるシーンがいくつもありました。

私自身、彼女には以前にお会いしたこともあったのですが、今回の公演関連では先日のチケット販売イベントを欠席されたこともあってこの日が初めてお会いする機会となりました。
稽古が始まる前には改めてご挨拶をさせていただき、少し話もしたのですが、そんな時の様子や雰囲気とは全く違った姿を見ることができましたし、本物を感じることができました。

主演ということで否応なしに注目は集まりますが、きっと彼女はその注目に対して期待以上の応えを見せてくれると思いますし、私自身はそれをすでに確信しています。
作品に対する思い入れが強くなるほど、きっと彼女の眼差しを見ただけでも感情が揺さぶられるようなものを感じていただけると思います。

具体的なことは現時点では書けませんので、他のキャストを含めた詳しいお話は、公演が終わってから改めてご報告させていただきたいと思います。



とにかく今回感じたことは、アリスイン札幌の舞台への出演を重ねてきているキャストが作ってきているアリスイン札幌の雰囲気や空気感に、新興勢力が大きな刺激を与え、そしてそれが座組全体の進化に繋がっているということでした。

スタッフ側からも、「 この3年の中で一番演技寄りのキャスト 」 という話が出ていますが、これは実際に稽古を観たことによって、顔ぶれを見ただけで感じるもの以上に実感をすることができました。

「 過去2作品よりもすごい仕上がりになっている 」 という話も事前に聞いていましたが、それも全く大袈裟な話でないということも実感しました。
過去2作品もそれぞれが素晴らしく、そして印象深いものでしたが、今作は、「 面白い 」 「 印象深い 」 という以外に、” 凄さ ” をあちらこちらで感じました。


演出を務める 納谷 さん は自らを ”演技オタク ” だと称しています。
この ” 演技オタク ” という形容詞はこれまでに 納谷 さん が自ら役者として演じるところを観たことがある方に対してはある程度伝わっているものかとも思いますが、彼女達を指導する姿を見ると、真の意味での ” 演技オタク ” を感じることができます。

そしてそれは実際に指導される側の彼女達にもしっかりと響き、そして感じられているものなんだと思います。

本来あり得ないことですが、だからこそ本当はこの稽古場での様子もたくさんの方に観ていただきたいとすら思います。

本番前に稽古を観るということは、作品の内容をフライングで知ってしまうということになり、本番を楽しめなくなってしまうのではないかという疑問を持たれる方もいると思います。
私自身、過去2年も先に稽古場でその内容を知った上で本番の様子を改めて観ていますが、そこにはまた稽古場でのものとは違ったものがあり、そして改めての感動や衝撃がたくさんありました。

納谷 さん の ” 演技オタク ” たる所以を感じることもできます。


納谷 さん 自身、昨年も一昨年も、「 稽古場での成長よりも実際に小屋入りしてからの現場での成長が凄い 」 という言葉を口にしていました。
それは彼女達自身の努力や力から来るものでもあると同時に、納谷 さん からの最後の指導にもよるものだと思います。

また実際、公演がスタートしてからもその指導は続き、そして演出の細かい部分を変化させたりもします。

そんな部分にもまた 納谷 さん の ” 演技オタク ” を感じることができますし、その感性を受けて成長を続ける彼女達を見ることができると思います。


全8公演の中で複数回を観劇される方にとってもそれは言えることで、最初に観る1回と次に観る1回とではきっとそこに成長を感じていただける部分があるのではないかと、今年に関してもある意味ではすでに私自身は確信をしています。
だからこそそんなみなさんがその成長を感じられてどのような反応をしていただけるのかがまた楽しみです。

1度だけ観劇されるという方にとっても、全くのゼロから始まったこの座組がどんな成長を遂げてそこに至ったのかという過程を楽しんでいただけるのではないかと思います。
彼女達のたくさんの努力や苦労があってこそ出来上がったものの瞬間を感じていただけると思います。



実際に稽古場での様子を目の当たりにし、今年の座組は 納谷 さん の言葉の1つ1つに対して真剣な眼差しを向け、そして自分が吸収しようとする意欲がこの3年の中でも群を抜いていると感じました。

私自身も 納谷 さん のすぐ横に座ってずっと稽古を見ていたかにこそそんな様子は手に取るように伝わってきましたし、シーンが止まって 納谷 さん から何らかの言葉がかけられるたびに強い視線が一気にこちらの方向へと向くのを感じました。
こうした方がいい、こうしてみてほしいということに対してはすぐに反応もあり、そして疑問が残ることに対しては質問が飛んできました。

1から10までの全てが 納谷 さん の頭の中で組み上げられたのではなく、そこには彼女達の感性や考えも大いに反映されており、彼女達だからこそ表現できるものもたくさんあります。

そんな彼女達には明らかにレベルの高いところでのやり取りを感じることができましたし、素早く吸収していく彼女達の様子には逞しさすら感じました。


普段の彼女達のそれぞれの活動や様子を知っている方にはより一層の驚きや衝撃を持って受け止めていただけるものになっていると思いますし、この稽古期間を経て座組全体がお互いに刺激し合い、切磋琢磨し合って成長したのを感じていただけるとも思います。




数日後にはついに公演の本番がスタートします。
そして一度始まってしまえばわずか5日間でそれは全ての終了を迎えます。

ここまですでに1ヶ月以上の時間を共にし、そして1つの目標に向かって進んできたこの座組も解散となります。


今回の座組の中には北海道出身ながらも現在は東京で活動をしているメンバーもおり、また普段から札幌で活動しているメンバーもその内容はそれぞれ。
きっとこの26人全員が一堂に会することは二度とないでしょうし、過去2回の札幌公演でもそれは同じでした。

この座組で、このメンバー全員で一緒にいられる時間もあと残りごくわずかです。



このメンバーが集合した当初はまだまだ外に雪がたくさん残り、稽古場が寒くて体を震わせながら身を寄せ合ったこともあったそうです。

共に汗を流したこの期間中には悔しくて涙を流したこともあったでしょう。
やりたいことが上手くいかなくて自分を責めたこともあったかもしれません。

仲間と一緒に笑い、様々な物事を共有し、それぞれが最初とは違った距離感で今を迎えていると思います。


演技経験が豊富なベテランもいれば、今回が全く演技初経験の子もいます。
普段から役者として活動している人、アイドルやシンガーとして活動している子、まだ現役の学生。
その内容も様々であれば、年齢もバラバラ。

それでも稽古が始まってここまでの日々というのは彼女達にとっての共通であり、共に歩んできたかけがえのない日々であるとも思います。

それぞれに個性があり、力量があり、そして違った環境があるからこそお互いに刺激し合えるものもあったと思います。


また、アリスインプロジェクト札幌公演が今年で3回目を数えることにより、これを毎年経験している人もいれば、今年が初めての子もいます。
この環境でのベテランもいれば初参加組もいる。
それもまた刺激にもなれば、様々な勉強になったこともあったのではないかと思います。


稽古期間中は 納谷 さん に何度も何度も怒られ、やることやること全てを直されたり指摘された子もいたそうです。

ダンスがうまく踊れず、人一倍苦労を重ねた子もいたそうです。

本来の活動が忙しく、なかなか稽古に参加できない子もいれば、稽古への参加合流自体が遅れた子もいました。


そんな彼女達に演出をしていく 納谷 さん から見て、この限られた時間の中で自分が理想とするもののどれだけを達成できたのか。

役者のプロの目から見て、彼女達に対して満足できていない部分もあるのではないかと思いますし、逆に何らかの可能性を感じた部分もあったかもしれません。

全ての人が100%だと思える、完璧だと思えるものを作るにはどれだけの時間を費やしてどれだけの苦労をすればいいのか。
そんなことを言い出したらキリはありませんし、稽古でいくら100%のものを作ったとしても、本番でその全てを発揮できるとは限りません。
逆に120%を発揮してしまうような子もいるかもしれません。

それはこのような演劇に限らず、スポーツでも勉強でも、他にも色々なものに言えることだと思います。


彼女達のこの日の稽古を見ていて、私はそこにそれぞれの ” 一生懸命 ” を感じましたし、一方で ” 妥協 ” や ” 打算 ” は全く感じませんでした。
全ての瞳がその先にあるもの、向かうべき場所を一点に見つめ、そしてそこに向かって肩を組み合い、手を取り合っていく姿を感じました。


彼女達が紡ぎ、そして作り上げるものは今この瞬間にしか観られないものですし、例えばこの座組で半年後に集まり、そして全く同じ台本で同じ準備でもう一度同じ公演を行ったとしても絶対に今回と全く同じものを観ることはできません。

彼女達が紡ぐ物語は、今この瞬間だけのものですし、全8回の中でもその全てがそれぞれのものになるはずです。
逆に彼女達がこの8回の中で全く同じものを作ろうとしたところで、そこは絶対に同じものにもならないでしょうし、生身の人間が演じるからこそそれは不可能です。

全ては目の前の舞台の上でリアルタイムで繰り広げられるものだからこそ、小さなきっかけやちょっとした何かのタイミングで全てが変化していきます。
それはどんなにベテランであっても、プロ中のプロであっても同じことが言えると思います。


一昨年そして昨年の公演でも、お客様から、「 複数回観た 」 という話をあちらこちらで何度も聞きました。
本当にありがたいことです。

私自身、実はこの演劇の世界に触れるようになるまでは、「 同じものなんだから1回観ればいいだろ 」 という考えの持ち主でした。
ですが実際に同じ公演の中で複数回の観劇を初めて体験した時、その考えはどこかに吹き飛んでいきました。

それは、爆笑できるようなシーンがあってそれを何度見ても笑えるとか、作品の最後が楽しい終わり方をするから何度見ても面白いとか、そういうようなものではありません。

何かを否定するわけではありませんが、テレビの狭い視野の中で繰り広げられるものは、作る側の人が見せたい場所を見せてくれるので、そこに集中していれば良いでしょう。

ですが、舞台で繰り広げられる演劇の場合、まずはその視野が全く違い、左右にその広さもあれば奥行きもあります。

そんな中でその瞬間に台詞を話している人だけが何かをしているのではなく、その逆の位置で表情を変えたり、動いたりしている人がいます。
そしてそんな全てがそのお芝居を形成しています。

当然、台詞を追っていくだけでもその物語そのものを楽しむことはできるでしょう。
ですが、そんな周りの色々なもの、そして人に目をやるのもまた面白いことであり、その作品をより深く楽しめることだとも思います。


物理的にこの公演期間中に1度しか観劇することができない方も沢山といらっしゃると思います。
1度だけ観れば十分という判断をされている方も当然いることでしょう。

そんな方々を否定するつもりも、また何かをダメだという気は全くありません。
ですが、もしチャンスがあるのであればこの8回の中で複数回の公演を観ていただきたいと思います。


私自身、立場としては興行側の人間ですから、当然1枚でも多くのチケットが売れていき、そして客席が埋まっていくに越したことはありません。
チケットが売れないと色々な意味で大変なことになってしまうことも否定しません。

ですが、それ以上にこの公演を、彼女達が作り上げる作品を、純粋にたくさんの方に楽しんでいただきたい、体感していただきたいという気持ちでいっぱいになっています。

今回は 星組月組 と、一部がダブルキャストとなっているため、そんな2回を楽しんでいただく方法もあると思います。
公演と最初と最後を観ていただいて、彼女達の本番での成長を味わう楽しみ方もあると思います。


生の舞台というものはその舞台の上にいる役者だけが作るものではなく、会場に入ったお客様もその作品を作る一部になります。

舞台で繰り広げられるものは、今回の作品に限らず、どこかしらにプッと吹き出してしまうような演出であったり、思い切り笑えるような仕掛けがされていたりもします。
そんなところで会場のお客様がどれだけの反応をしてくださるかというのは実は本当に大きなものだったりもします。

演出側が、「 ここは笑わせよう 」 と作ったシーンでお客様が大きな反応をしてくださったり、時に声をあげて笑ってくださると、その後の演技が良い意味で波に乗っていったりするものです。
また逆に、笑わせようとしていたのにあまり反応が返ってこないことで、ある意味では、「 スベった 」 という微妙な空気が生まれ、その空気感が予期しない方向へと雰囲気を引っ張っていくこともあったりします。

そういう意味でも会場のお客様も作品の一部であり、その反応の大小などで作品の雰囲気自体が変わってきます。
” 楽しむ ” という意味ではそんな雰囲気を楽しむこともできますし、これもまた同じものは2つとないでしょう。



この舞台の本番へとのぞむ彼女達は、それぞれに魅力を持っているからこそオーディションなどを経てこの座組にいるのだと思います。
そしてその魅力はこの稽古期間中の様々なものを吸収したことでより大きなものになっていると思います。

この公演が終わったらすぐに東京に戻ってしまう子もいますし、これをきっかけに大きく羽ばたく子もいることでしょう。
また、ここでの経験がこの先の進む道を決定づけるきっかけになる子もいるかもしれませんし、演じるということ自体により魅力を感じた子もいるはずです。

そんな今の彼女達が紡ぐ物語は今しか観ることができませんし、チャンスさえあれば複数回観ていただくことで一層たくさんのその魅力を受け取っていただけるとも思います。

私自身も本番ではそんな彼女達の作り上げる物語を1人の傍観者として楽しみたいと思っていますし、ぜひとも1人でも多くの方にこの作品を体感していただきたいと心から思っています。


今観なければもう二度と観ることはできません。
あとで後悔してもその後悔が時間を遡って何かを解決することもありません。

今回の公演を観なかったとしても、だからと言って生活に支障が出ることはないでしょう。
損をするのかと聞かれれば、考え方によってはそんなこともないでしょう。

ですが一方で、この公演を直接劇場で体感することによって、より豊かな気持ちになっていただいたり、何かを感じていただけるのは間違いないと思います。
そしてそういう意味では、” 観ない ” という選択は、やはり ” 損 ” をしているとも考えられると思います。



演劇なんて興味がない。
どうやって観ればいいのかわからない。
チケットの取り方がわからない。
マナーとかうるさそうで嫌だ ・・・

何分くらい前に行けばいいの?
どんな服装で行けばいいの?
何を持って行けばいいの? ・・・

何かわからないことがあれば、不安なことがあればいつでも私に聞いてください!
ジャガイモンプロジェクトにご連絡ください!(このページの右上に「お問い合わせ」のページがあります)
劇場でスタッフにお尋ねください!

今回はスタッフであり関係者である私自身も、初めて一傍観者として劇場に行った時にはとんでもなく早く到着してみたり変に1人で緊張してみたりと、何が何だかわかりませんでしたし、誰にも聞けずにある種の不安を抱えたままに観劇していたのを今でも思い出します。

札幌でも年間を通して様々な演劇の公演があり、たくさんの劇場で多くの役者さんが作品を作り、そしてそれを楽しんでいる方がいます。
とは言いつつも、私自身数年前までは札幌に、北海道にそんな文化が存在することすらほとんど知りませんでした。

アリスインプロジェクト札幌公演が初めて開催されたのは2016年のことでしたが、実はそれよりも1年ほど前、水面下ではその実現に向けた動きはすでに始まっていましたし、私自身もそこに向けて 納谷 さん ともお会いしていました。

ですがその時点で私の中ではそこでお会いした 納谷 さん という人は名前自体も初めて見る ”知らない人 ” でしたし、演劇の文化が札幌存在していることすら知らない私にとって、アリスインプロジェクト札幌公演の実現は、あまりに ” 未知数 ” であり、不安と疑問を大いに感じるものでもありました。

今だからこそ正直に言うと、「 そんなこと札幌でやって、見に来てくれる人っているの? 」 とさえ思っていました。


しかしそんな中、自分なりにこの世界のことを勉強し、そして実際に劇場に足を運んで作品に触れてみたりしたことで、この考えや自分の中にあった演劇というものに対するイメージが一新してしまいました。

映画でもテレビドラマでも、一般的に高評価をされるものであったとしても、それを面白くなかったと評価する人もいるでしょうし、理解に苦しむ人もいることでしょう。
感性なんていうものは人それぞれですし、全ての人に共通して言えることなんてほとんどないと思います。

ですから、演劇の世界に触れたことのない全ての方が私のように何かをきっかけにして、この世界に興味を持ってくださるとは思いません。
私が、「 面白かった 」 と思ったものでも、一方で、「 つまらなかった 」 と感想を持つ方も当然いらっしゃると思います。

ですが、そんなことも分かった上で、それでも伝えたいことがあります。


アリスインプロジェクトは本当に多くの方に楽しんでいただけるものです。

純粋に演劇が好きな方には1つの作品として楽しんでいただけるのがアリスインプロジェクトであり、今回の ダンスライン♪SAPPORO だと思います。

アイドルが好きな方には目の前で躍動し、そして光り輝くガールズ達の姿を観ていただけると思います。
彼女達が一生懸命に作り上げてきたものを観ていただくことでそこにはある種の感動すら生まれると思います。

元々彼女達のことを知っている方、普段の活動から応援してくださっている方に対しても、この公演に向けた稽古の中で確実に成長した姿を観ていただけると思います。
また、様々ある演劇公演の中でもアリスインプロジェクトというのはその入口としてもとても適したものであろうと思いますし、これに関しては私は1人の傍観者としてもお勧めできる部分でもあります。



25日には劇場の幕が上がります。
一方でそこから5日後には全てが終わり、その幕が下ります。


彼女達が初めて稽古場に集合した日から、私が今回訪れた稽古場での日。

ゼロから始まったこの座組はこの日までに大きく成長し、そして1つになって共に同じ方向に向かって歩みを進めてきたのだと思います。

23日に小屋入りをしてしまえば本番までも本当にあとわずか。
しかしそんな中でもきっと更なる伸びを感じさせてくれることでしょうし、本番が始まってからの全8回の中でも確実に成長を続け、そして変化を見せてくれることでしょう。


ぜひみなさんには目の前で彼女達が紡ぎ、そして作り上げる世界を体感していただきたいと思っています。
どの回を観ていただいても、何度観ていただいても、そこにはそれぞれの楽しみがあると思いますし、心に残る何かがあると思います。

私自身もこの公演中、全日現場入りすることはできませんが、最後の2日間はそんな彼女達をまた近くから見守り、そしてみなさんと共に舞台の上で奏でられる作品を心から楽しみたいとも思っています。



昨年も特に大千秋楽が終わった後は涙が止まらず、そのままの状態でスタッフとして直後の交流会の準備に突入してしまいました。
そんな様子を見かけた方に静かに両肩に手を置かれたことがあったのですが、その温もりと感触からはまたその方の想いも伝わってくるようで、一層涙が止まらなくなりました。

その時のことを改めて思い出しながらこの文章を書いていると、1年経った今でも涙が溢れてきます。


きっと今年も、私は公演が1回終わる毎に泣いているのではと想像しています。
そんな姿を現場で目撃された方がいらしたら、ぜひ笑ってやってほしいと思いますし、もし一緒に泣いてくださる方がいるのなら一緒に涙したいとも思います。

そんな感動がここには間違いなくあります。





アリスインプロジェクト札幌公演 「 ダンスライン♪SAPPORO 」

その幕が上がるまであとわずか。


「 ダンスライン♪ 」 は、2011年8月、アリスインプロジェクト旗上げ後の第6回目の作品として東京で公演された、「 ライン♪ 」 の脚本を元に、そこに大きく手が加わって新たに生まれ変わった作品です。

偶然にもその年の6月にジャガイモンプロジェクトが誕生しており、その直後に上演されたのがこの作品だったようです。

当時のキャストを見てみると、そこにはこれまでにジャガイモンプロジェクトで一緒に活動をさせていただいたことのある方の名前も何人も並んでおり、そういう意味でもなんだか感慨深いものを感じたりもします。


一方、2011年の 「 ライン♪ 」 と、今回の 「 ダンスライン♪SAPPORO 」 では、同じキャストは1人おらず、また演出家も劇場も、そして様々な環境のほぼ全てが違っています。

” 脚本 ” という意味では大きく書き換えられていたとしてもそれは ” 再演 ” という捉え方もあると思います。

ですが、それでもやはり今回の公演は関わっているキャスト、演出家、ほとんどのスタッフのそれぞれにとっての ” 初演 ” であり、それはお客様にも言えることだと思います。



もうすぐ彼女達が作る新しい世界が広がっていきます。
そしてそれはわずかに5日間、わずかに8公演で二度と観られないものへと変わっていきます。

そんな世界へのチケットはまだまだ余裕を持った形で残っています。


間違いなく言えること。
それはこの5日間、コンカリーニョが大きな感動の渦に包まれるということ。
そしてその場にいるみなさんの心にこの瞬間が刻み込まれるということ。

今の彼女達だからこそ表現できる 「 ダンスライン♪SAPPORO 」 は、今しか体験できない、体感できないものです。
今の 「 ダンスライン♪SAPPORO 」 は今の彼女達にしか表現できないものです。


きっと100%のものではないでしょう、どこかで台詞が飛んだり予定とは違う何かがあるかもしれません。
でもそれも含めて今の瞬間だからこそ観ることのできる 「 ダンスライン♪SAPPORO 」 です。

それは逃げや誤魔化しではなく、そういうものこそがまた生の舞台の良さであり、味であり、2つと同じものがない唯一無二の体験へとなっていくのだとも思います。



一昨年も昨年も、それぞれのキャストがその時の最大限の努力で稽古を重ね、そして本番へと突入していく姿、舞台で輝く姿がありました。
もちろん今年もそうなることでしょう。

それらは優劣をつけられるようなものでもなければ、大小を単純に比べられるものではありません。
同じアリスインプロジェクトという傘の下に同じキャストが出ていたとしても、そこにはその時の最大限があり、そしてその時にしか表現出来ない何かが間違いなくあったと思います。
そして今年も、今だからこそ、今しか表現のできないものが間違いなくあります。

それはそれぞれのキャストの変化であり、成長であるとも思います。
そしてそれはスタッフそれぞれにも当てはまることだと思いますし、アリスインプロジェクト札幌という大きなくくりにも言えることだと思います。


それぞれの変化や成長というのは自分自身だけで成し遂げられるものではありません。
そこには周りの仲間がいて、支えてくれる人がいて、そしてたくさんのファンの方やお客様がいてこそ伸び広がっていくものです。

実際の劇場での優しい眼差しやかけてくださる一言一言。
本番中に沸き起こる笑い声や反応、そして交流会などでの声援。

時には厳しい評価もいただくこともあるとは思いますが、そういうものも含めて全てがそれぞれの糧になり、栄養になり、力になり、そして未来への道しるべにもなっていきます。



一昨年は学園にゾンビが現れる物語でした。
昨年は現在と未来を行き来するような、次元を超えた作品でした。

そして今年は学園のダンス部や演劇部を中心に、そこから広がるお話です。

過去作品に出演歴のあるキャストもそれぞれがまた新しいキャラクターになっていますし、その違いを観ていただくのも楽しいと思います。
初めて参加するキャストもそれぞれが稽古場でも輝き、きっとみなさんにまた新しい魅力をお届けすることができると思います。


全てはこの5日間のために。
26人の等身大のガールズ達が紡ぐその瞬間を、ぜひ劇場でお楽しみください!






今回稽古場を訪問するにあたり、アリスイン札幌では毎回恒例となっている差し入れを持参しました。

約7時間半にも及んだ長丁場の稽古終了後に箱を開けてそれぞれにポテトチップスを手に取る彼女達は完全に普通の女の子に戻っていました。

最後にそんな様子を伝えてくれた彼女達のツイートを紹介し、このレポートを締めたいと思います。



   

  

  

  

  

  

(順不同)




最後にもう1つだけ追記。


この日の稽古開始前、私は羽美の最後のチケットの手売りに同行しました。

長時間の稽古開始直前であり、また日程的に本番も迫ってきていることもあって無理だけはしないようにということは事前に伝えてはありましたが、本人の希望もあって約1時間の手売りを行ないました。


   


今回の公演に際してはチケットの販売が開始されてからここまでの期間中、羽美に限らずこのような形でチケットの手売りを何度も行ったキャストが数人います。
中でも 横山奈央 さん 、市山黎 さん の努力は目を見張るものがあったと思いますが、それはきっと自分のためではなく、自分が出演する公演のためであり、そしてそんな公演を1人でも多くの方に観ていただきたいという想いからだったのではないかと想像します。


その努力はストレートに数字になって現れるものばかりではありませんが、それでもそんな姿を見ている人、わかっている人は間違いなくいます。

また、そのような努力を重ねている子達が、チケットの売れ行きについて頭を悩ませ、そして心配をしていたという話も私のところには届いています。
まもなく実際に舞台の上に立つ彼女達自身の中に、自らそのように苦悩もしている子がいるというのは本当に逞しくもあり、手放しで喜んでばかりもいられませんが、それでもやはり1スタッフとして嬉しい部分でもあります。

もし私がこのアリスイン札幌のオーディションに対して何らかの力を持つ存在であったと仮定するならば、来年以降のそのようなシーンで、彼女達が、「 今回も出たい 」 と言うならば、きっと優先的に彼女達を起用することでしょう。
彼女達がそうしたいと望むのであれば、私は誰に対してでも頭を下げますし、彼女達にはそうする価値もあるのだと確信しています。

ですが、きっと私がそんなことをしなくとも、物事に対してそのような取り組み方、考え方をできる子は自然と選ばれ、そして残っていくものなのではないかとも思います。


また、名前を挙げた彼女達ばかりではなく、他のキャストも手売りを行ったり、各自のイベントなどでチケットの販売を重ねていました。

小西麻里菜 さん は、稽古終了後にすすきので歌のステージに立ち、そこでもチケットの販売数を伸ばしたようです。
この日の稽古開始前にも、「 チケット売れたよ! 」 と稽古場に飛び込んできた姿がとても印象的でしたし、その嬉しそうな笑顔が全てを物語っていたようにも感じました。



「 努力は必ず報われる 」 とは限らないのが世の中だと思います。
ですが、「 報われる世の中であってほしい 」 とも思います。

私自身もジャガイモンプロジェクトとして、この彼女達の努力には応えてあげたいと思いますし、それはこのチケットのことに関したことだけではなく、稽古期間中の全てのことやそれぞれの力に対しても言えることだと思います。

次に私が現場に戻るのは公演4日目の28日です。
そこから最後の2日間を共に過ごし、そして1スタッフとして会場の表方、裏方を務める予定です。

特定のタレントマネージメントという立場は全く関係なく、彼女達全員が少しでも更に輝きを放てるように。
そして来場いただけるお客様が気持ちよく、そして楽しく観劇いただけるように全てを捧げたいと思っています。


ジャガイモンプロジェクトも、そして私自身も、アリスインプロジェクト さん という存在に出会って大きく成長させていただいていますし、そして何物にも代えがたい数多くの経験をさせていただいています。

2013年に初めて出会い、そこから様々な活動を共にさせていただいています。
2016年からはアリスインプロジェクト札幌公演が始まり、1タレントのマネージメントを超えた立場で参加させていただいています。
他にも関連のイベントなどでも色々と内部に入らせていただき、時に頼っていただけることはとても光栄であり、ありがたい限りです。

ですからこれまでの活動もそうですが、今回もやはり私自身にとってはこれは アリスインプロジェクト さん への恩返しでもあると認識しています。

距離なども含めた物理的な壁もあり、なかなか多くの日程や時間を割けない現状に悔しい申し訳ない想いも常にしていますが、それでも私自身もやはり、残りの期間もできる限りの努力を重ねていきたいと思います。


28、29日は開場前は受付周りなどにいると思います。
また会場でたくさんのお客様とお会いできるのが本当に楽しみです。

お見かけいただいた際にはぜひお声がけくださると幸いです。



この春一番の感動を、ぜひコンカリーニョで。






4月8日

アリスインプロジェクト札幌公演 「 ダンスライン♪SAPPORO 」 の 握手会付きチケット販売イベント が、札幌市内の 演劇専用小劇場BLOCH で開催されました。
と、昨年と全く同じ書き出しをしましたが、昨年の 「 みちこのみたせかい 」 でも公演初日の11日前、同じこの場所で同イベントを開催しました。


今年はこのイベントから数えて25日の初日まではあと17日。

日程だけを見るとまだ今年は少し余裕があるようにも感じますが、それはあくまでも数字の上だけのこと。
毎年キャストの入れ替えのある中で、今年は昨年まで出演していた人気のキャストの顔が無いなどしており、これはチケットの売り上げだけを考えてみても由々しき事態だと思います。


一昨年に初めて札幌でアリスインプロジェクト公演が行なわれて以来、この チケット販売イベント は毎年必ず開催されています。

公演の開催の発表、そしてチケットの販売開始のタイミングよりも遅れて開催が発表されるこのイベントですが、ファンの方によってはその発表前からこのような形のイベントがあることを確信し、そして楽しみにされている方も少なからずいらっしゃると思います。
そしてこのイベントに備えてチケットの買い控えをされてる方もいると想像します。


チケット販売イベント は、ファンのみなさんにとっては本番前に大勢のキャストと一度に触れ合える数少ない機会です。

短い時間ではありますが、そんなファンのみなさんにはぜひともこの機会、この時間を楽しんでいただきたいと思いますし、我々スタッフ側としてはそうなるように様々な努力や工夫が必要だとも感じています。


今年のキャストの中には、握手会初体験という子も何人もいるという話は事前に聞いていました。
ですがそんな子達に対しても、だからと言ってイベント前に交流に対しての具体的な指示は何もしません。
当然、一通りの注意事項などは全体に対しては伝えますが、不慣れな子だけに対して何かを伝えるということは一切しませんでした。

イベントが始まってから何か問題が発生したとすれば、そこはスタッフとしてしっかりとフォローしていくのは当然です。
それでもそんな彼女達の個性を摘んでまでも、こちらの指示通りに一律に何かをしてもらうということには、このイベントの中では利点はないと思います。

また、これまでの私の経験上、大人数のタレントさんの中に不慣れな子がいたとしても、参加されるファンの方達の思いやりやお気遣いで、何事もなくイベントがスムーズに進むことはよくあることです。

ですが、スタッフ側としてはそれに頼っていたり、そこを当てにしてはいけません。
1列になった握手の列をスムーズに流すこともスタッフとして欠かせない役割ですし、そういうことを滞りなくできてこそ初めて気持ちの良いイベントになるとも思います。

ジャガイモンプロジェクト は昨年に引き続いて今年も、一応はタレント運営としての立場もありますが、やはりそこは一旦横に置き、イベント全体を円滑に進めるために1人のスタッフとして、他のタレントさんに対しても中立な立場としてこのイベントに参加します。


   
   


イベント開始は 12:00 からでしたが、スタッフは会場の準備や打ち合わせなどもあり、早い時間から会場入り。

私が札幌に到着した深夜から早朝にかけての時間帯は吹雪が街を襲っていましたが、さすがにこの季節は昼頃にもなるとそんな雪も解けてしまっています。
イベント開始前に天気が悪いと、外でお待ちいただくお客様に大変な思いをさせてしまうところでしたが、ひとまずその心配がないだけでも一安心です。


   


スタッフが集まり始めてからはまだ何もないステージにテーブルを並べてみたり、受付周りの用意をしたりと、それぞれの役割でイベントに向けての準備を進めます。

このあたりは イレブンナイン さん のみなさんを中心にいつも一緒に動いているメンバーで形成されたスタッフですから、「 あなたはコレ、私はアレ 」 というような話し合いや指示などほとんど必要もなく、卒なく準備が進みます。
私自身もそんなみなさんとはもう何度も一緒にこのような形で活動をさせていただいており、特に何ら問題なくその輪の中に入って共に作業を進められようにもなりました。


   


例年のアリスインプロジェクト札幌公演ではこの チケット販売イベント が、私がその年の現場に合流する最初の機会となります。
実際にはこのイベントに限らず、公演全体などにおいては様々な打ち合わせや準備などですでに色々と作業も活動もしてはいるのですが、直接現場に顔を出すのはここが最初になるのがこれまででした。

ですが今年に関しては実はある機会ですでに現場入りをしており、キャストの彼女達の姿を目の前で、全員ではないですが見ています。

2016年の初年度は ” 取材者 ” としての参加でしたが、そこから回数を経て確実に更に奥深くまで公演に携わらせていただいており、それはジャガイモンプロジェクトとしても私個人としてもとてもありがたいことです。
そしてこのような公演やイベントに限らず、その場で自分自身を必要としていただけること、少しでも頼っていただけることというのは素直に嬉しいことです。




イベント開始前、キャストの集合時間を前に続々と集まってくる彼女達。
連日の稽古で疲れも溜まっている頃でしょうが、それでもどこを見ても笑顔が溢れており、控室からも元気な声がこぼれてきます。

今年の公演に向けての稽古は、開始からすでに数週間が経過しています。
大変なこともたくさんあるでしょうし、当然様々な苦労もしていることとは思いますが、そんな時間や経験を共にすることで彼女達の一体感はどんどんと高まっていることを感じます。

それは普段のそれぞれのSNSなどから発信される情報や写真を見ていても明らかですし、実際に現場で彼女達に触れてみてそれがより一層の確信になりました。

アリスインプロジェクト札幌公演では毎年毎回、本当にキャストの子達の仲の良さを感じます。
これだけ人数がいると、性格も様々でしょうし年齢もバラバラ。

アリスインプロジェクトに限ってみても、年1度の公演が回数を重ねることによって、数回出演歴のある子もいれば、今回が初めての子もいます。
また、他の活動に目を広げても、タレントとして経験豊富なベテランもいれば、まだまだ駆け出し始めたばかりの初々しさが溢れる子もいます。

様子を見ていると、ムードメーカーの役割を自然と担っている子もいれば、一歩引いてそんな様子を楽しそうに眺めている子もいます。
どんな人とも物怖じせずに話をできる人もいれば、人見知りをしてしまう子もいるようです。

ですが、それでもこの公演のために作られたお揃いのTシャツを着てみんなで楽しそうにしている様子からは、1つの座組としてのまとまりを感じ、そこからは半月後に始まる公演の成功を今からすでに確信させる説得力もありました。




イベント開始30分ほど前には、一旦全員でステージに集まり、今回のイベントの流れの最終確認などを行いました。

彼女達の中には今回初めて ” 握手会 ” を経験するというキャストも何人かいるとのこと。
この日を前に、事前の話ではそんな彼女達からはある種の不安なども聞こえてきてはいましたが、実際にイベント当日を迎え、そして頼れる仲間と一緒にステージの上に立つと、そんな不安も消えている様子。

中には緊張の色が浮かぶ顔もありましたが、それでもズラッと並んだ彼女達の表情からは不安のようなものは微塵も感じませんでした。

実際に握手会が始まってしまえば、その最中は私が円滑に進行するように一番近くで見守りますし、何かがあれば対処できる態勢は他のスタッフ側でも準備済み。
そういう意味では何も心配せずにいてほしいと思いますし、また、このような握手会に関しても個人個人のそれぞれのやり方があっていいと思います。
そこには見本もなければ、正解も不正解もないと思います。

「 お客様が目の前に来たら、握手をして、自分の名前を名乗って、挨拶をして ・・・ 」 などと、不慣れなキャストに対しては具体的な指示を出すことも可能ではありますが、そういうことを含めて事前にあまり色々と詰め込まない方が、それぞれの個性も出るでしょうし、参加するお客様にとってもそういうことが楽しみの1つでもあると思います。

そんなこともあり彼女達に対してはここでは私からも、何かあった場合にはこちらからサポートするということだけは伝えましたが、それ以外についてはあえて一切何も言いませんでした。

誤解を恐れずに書くならば、別に命を取られるわけじゃないんだから、今まで経験がなくたって何も心配せずに楽しくやればいい。
ただその一点です。


   


一方私はこの最終確認に前後して会場の外に顔を出し、どれくらいの方にご来場いただいているかを何度も確認に行っていました。

やはり運営側にとって、イベント自体に本当にお客様に来ていただけるのかというのは大きな心配事でもあり、気がかりな部分ででもあります。
実際にスタッフの間でもそんなことを心配する声が飛び交ってもおり、みんな外の様子が気になっているようでした。


今回、私が確認したところでは11時を過ぎた頃にはすでに2名の方が早々と来場されており、開場時間を外で待たれていました。
更には開場時間が近くりなるにつれ、次第に少しずつその人数も増えていきました。

私も時間の許す限り、外に出てそんな方々と色々とお話をさせていただいたり、また直後のイベントに関しての説明などもさせていただきました。


今回のイベント、公式サイトでの告知に一部記載ミスがありました。
本来自由席であるはずのA席が指定席であるかのような記述があり、実際にご来場予定の方から事前にご指摘もいただいていたのですが、結局は運営側の訂正更新が間に合わずにそのままの間違った記載のまま当日を迎えてしまいました。

実際今回のイベントでは自由席のみの取り扱いとさせていただいたため、もし万が一指定席を希望される方がご来場された場合、何らかの対応が必要となる状況でした。


これに関しては開場前にすでに外でお待ちいただいていたみなさんに対しては改めてお詫びと共にご説明をさせていただきました。

間違った情報が発信されてしまうというのはお客様に対して混乱を招くものであり、更にそれが訂正されないままという状況は本来あってはならないことです。
開場後にいらした方の中に指定席を希望される方がいた場合には受付での対応を予定していましたが、特に問題はなかったとのこと。
ですが、問題がなかったからそれでいいというわけではなく、やはり間違った情報が発信されていたのは明らかなわけで、それ自体が大きな問題です。

ここは態勢も含めて絶対に改善しなければならない部分だと思います。




昨年のチケット販売イベントは、まず受付でチケットをご購入いただき、その後は会場に入ってそのまま握手の列へ。
一列に並んだキャストとの握手が一通り終わったら順次退場という流れでイベントを行いました。

ですが今年は、昨年の同イベントに参加されたお客様のその後の反応やご意見も参考にさせていただきながら、この流れを大きく変更しました。

まずは受付でチケットをご購入いただき、その後は一旦客席側にてお待ちいただきます。
その後、受付にお並びいただいているお客様の入場がある程度終わった時点で、まずは演出の 納谷 さん からみなさんに対してご挨拶。
続いてキャストを呼び込み、一列に並んだところで1人ずつ自己紹介をする流れとしました。

昨年いただいたご意見の中に、「 初めて会う人も多くて、握手はしたけれど誰が誰だか分らなかった 」 というものがあり、これを参考に取り入れさせていただいたものです。
スタッフ側でもイベント直前まで挨拶をどの段階でするか、お客様をどのように誘導するかなどギリギリまで色々と話し合いと打ち合わせを重ね、結果的に今回のような形とさせていただきました。

また、全キャストが名札をつけ、それぞれが名前をアピールできるようにもしました。
やはりこれも、昨年のイベントでいただいたご意見を参考にした上での改善策です。


このようなイベントに限らず、多くのイベントや興行などでは、主催者側とお客様側のそれぞれにぞれぞれの目線や考えが存在し、それがお互いに認識できていなかったり、噛み合っていないことが多々あると思います。

主催者側としてて提供させていただくものがお客様の希望の的を射ていなかったり、お客様がどのようなことを考えてそこに参加し、そして何を思っているのかということは、実際にその立場に立った経験がなければなかなかわからないものです。

相手が望んでいることの全てを叶えられるわけではありません。
ですがその相手の想いをわかっているといないとでは様々な対応も変わってくることでしょう。

その想いというのは妄想や想像の中で考えを巡らせるよりも、やはり自分自身が実際にその立場に立って経験してみることが大切です。
しかし、残念なことにその両方の立場を経験している人、そして考えを広げられる人というのはどの現場にも決して多くないというのが現状でもあると思いますし、そのそれぞれの認識や考えの差が違和感や不満を招く原因にもなってしまっているのではないかとも思います。


その点では私はどちらの立場も常に経験していますし、そういう意味では双方の懸け橋になれると自負しています。

実際に昨年のイベント終了直後からみなさんからいただいたご意見やその場での雰囲気などを参考に、スタッフ側で何度となく次に向けた話し合いも行いましたし、提案も繰り返してきました。
またそんなご意見を多くいただくためには、例えその現場で自分が運営側だったとしてもその立場に甘んじているのではなく、積極的にお客様の側の輪に飛び込んでいく必要もありますし、そういうところからこそみなさんの本音が多くしみ込んだ生のご意見を聞くことができると思っています。

またこの、” 輪に飛び込む ” というのはその場限りのことではなく、事後のやり取りや他の機会でお会いした時にも続くことで、それが ”点 ” から ” 線 ” になり、そこから継続して色々なことを吸収することができるようにもなります。

そうしたご意見は多く集まることで次のイベントにもより活かすことができるでしょうし、それこそがお客様に対して運営側が的を射たものを提供できるということに繋がっていくのだと思います。
このようにして ” 顧客満足度 ” の高いものを提供できることによって、それは全ての立場の人にとっての ” Win ” になると思いますし、お互いにとっての ” Win - Win ” にもなると思います。


また私にとって、この ” 輪に飛び込む ” は、ただの調査のような単純なものではありません。
何も難しいことを考えることなく、単純にみなさんとそうして交流をさせていただくということはとても嬉しいものですし、私自身も心からその場を楽しんでいます。

更に、他のイベントでは私自身が今回のような形ではなく、お客様と全く同じく1人のファンとして参加する場合もあり、そのような時にはみなさんは ” 仲間 ” にもなります。
そんな仲間に入れていただけるのかどうかという現実は別として、やはりそんな仲間がいるということはまた嬉しい事であり、やはり楽しいことです。


” 楽しい ” というところから得られるもの。
また逆に、それぞれの立場の立場に立った時に不満に感じたり物足りなさを感じるところから得られるものも、全ては自分自身のかけがえのない財産であり、蓄積であり、経験になっていきます。

それらを活かすことで同じ1つのイベントでもより良いものを構築できると思いますし、相手の立場や考えをある程度理解できるからこそ様々な対応も可能になると思います。

今回のイベントも、私だけに限ったことではないですが、スタッフそれぞれの考えや視点にお客様から頂いたご意見が絡み合い、昨年と比べてもより良い準備ができたのではないかと思います。


私自身もお客様側の立場に立った時、スタッフ側にどんなことでも伝えやすい人がいるというのは心強くもあり、様々な部分での利点も感じられるとも思います。
「 スタッフに知ってるい人がいるから、自分だけ良い思いをしよう 」 というのではなく、良いことも悪いことも、伝える機会があることで次のイベントがお互いにとってより良いものになるかもしれません。

また、スタッフ側にとってもそのような存在のスタッフがいることで、お客様のご意見を吸い上げやすくもなりますし、イベントや自分達自体を向上させる材料も増えると思います。

実際、昨年と今年のこのチケット販売イベントに限って見てみても、私のところには他のスタッフとは比べ物にならないほどのたくさんの意見や感想が伝わってきました。
またそれは、その場での直接的なものや、SNSやメールを通してばかりではなく、全く他のイベントでお会いした時に伺ったものも多数あります。

普段からのお付き合いがあるからこそだと思いますし、そんなみなさんとの御縁というのは本当にありがたいものです。
そしてその ” ありがたい ” というのは、イベントのスタッフとしてもそうですし、私個人としてもあてはまります。

みなさんとの大切な御縁が、ジャガイモンプロジェクトを、そして私自身を生かしていただき、そして活かしていただいています。




12:00 、イベントスタート、開場です。

外に並んでいただいたお客様が順次受付に進み、チケット購入後に客席に入っていただきます。


   


この入場は当初は20分程度を見込んでいましたが、みなさんのご協力もあって10分程度で完了。

みなさんが客席に着かれた頃を見計らって、まずは 納谷 さん からみなさんに対してご挨拶。
そして続いては参加全キャストが呼び込まれ、並んだ順に一言ずつ自己紹介。

最後にスタッフからの全体の流れの説明をさせていただき、握手会 スタートです。


   
   


ステージ向かって右側、岩杉夏 さん を先頭に一番最後の 西村摩利乃 さん まで計23人。
チケット1枚購入ごとに受付で握手券を1枚お渡ししていたため、まずはこれをスタッフが受け取り、お客様が1人ずつ握手の列へと流れていきます。

複数枚購入の方はその枚数分の握手券を持っており、全キャストの前を最後まで回った直後、すぐに2周目、3周目と進んでいく方もいらっしゃいます。

私の役割は ”コの字型 ” に並んだテーブルの中心に入り、一気に進むそれぞれの交流の様子などを確認しながら、流れが滞りだしたお客様を次へと促したりするなど、みなさんの一番近くで全体の流れを仕切らせていただきました。

とは言いつつも、ほとんどは実際にはみなさんが特定の1人のキャストの前だけに滞ることもなく自主的に次へ次へと進んでいただき、逆にこちらが、「 もう少しゆっくりでもいいですよ 」 とお伝えすることもあるくらいでした。

多くのお客様で列が長くなるようであればそれに従ってどんどん流れを進めてしまわなければならないところですが、今回は参加をされるお客様がそれほど多くありませんでした。
そんなことからゆっくりと周った結果、23人の前を周り切るのに10分以上かかっている方も多くいらっしゃり、結果的にお1人お1人の満足度は高かったのではないかと思います。

実際に交流をされている方、交流を終わってゆっくりされている方、そして23人のキャストも含め、どの人を見ても本当に楽しそうな笑顔が溢れていました。
私は会話の中身が聞こえるほどの距離間でそんな様子を見守っていましたが、そんなみなさんを見ているとこちらもとても楽しい気持ちになりましたし、そんな握手の列に参加してみたくもなりました。

スタッフ側に立って、その目線から言うのは少し変な話ですが、やはりスタッフ自身が自分も参加してみたくなるイベントというのは、その場にいる人にとっては素晴らしいイベントなのではないかと思います。
違った目線ではまだまだ改善点も改良点も間違いなくあるのだとは思いますが、最低限その場の良い雰囲気というのはご提供させていただけだのではないかと思います。


そもそも、本来の一番のメインは公演の本番ですから、このチケット販売のイベントが良い雰囲気であったとしても、だから何なんだと言われてしまうかもしれません。
ですが例えメインのものではなくても、その1つ1つを一生懸命に心を込めて取り組むことが、最終的には一番大切なものの成功へとも繋がっていくのだと思いますし、私はそれを信じています。

だからこそこのチケット販売のイベントも決して力を抜きたくはありませんし、このイベントも本当に大切なものだと考えます。


   


今回のイベントは 12:00 受付開始、13:00 受付終了、あとは 13:30 を目安に終了する予定で進行していました。

途中からは参加される方の人数も減ってきましたが、それでも10数枚のチケットを購入いただいたことでその枚数分の握手券を持っている方もおられ、そういう方は何度も何度も握手の列に戻ります。

また、ご自身が持っていた券を全て使い切った後も、再び客席に戻ってイベントが進む様子を見守っていただけた方もいらっしゃいました。

そんな中で進んでいったイベントは、最後は握手券をたくさん持たれた方が1人だけ残る形となってしまったため、予定の時間の中で全キャストの前を往復するのではなく、希望するキャストの前に留まることを容認させていたくことで、残りの券を全て一度に受け取らせていただきました。

会場に残って見守っていただいていた方からは、最後に残った1人の方だけが一ヶ所からずっと動かず、そして私もすぐ横でずっと立っていたために不思議な光景にも見えてしまったようです。

ですがこれはやはり最後に持っていた券の枚数を考えても、参加いただいた方にとっては自らの権利を行使したのみと捉えています。

この方が持たれていた握手券の枚数に対して、通常運行ではイベントの進行具合から全てが消費できない可能性が高かったため、途中からは残りの時間などを何度かお知らせさせていただき、こちらの流れにもご協力をいただく形なりました。


またこの方を含め、今回のイベントに参加いただいた方は、私が以前より存じ上げている方がとても多く、そういう意味でもスムーズな進行にご協力いただけた部分もあったと思います。
イベント中にもわざわざこちらに声をかけに来てくださった方も多く、こちらから個別に声がけをさせていただいた場合もありました。

やはりそんなみなさんとの御縁というのは本当にありがたいものですし、今回も短い時間の中でも私自身も色々とお話をさせていただけたりしたのも嬉しいことでした。



イベントの最後には客席に最後まで残っていただいたお客様に対して改めて 納谷 さん の方からご挨拶をさせていただき、ほぼ予定の時間通りにイベント終了となりました。


   


スタッフで最後のお1人が退場されるまでお見送りし、これでようやく今回の予定も全て終了です。

私自身はこのような形のイベントやお客様への対応は、様々な経験を経て回数も重ねてきており、最近はすっかりと慣れてしまった感があります。
もちろん、慣れが慢心や油断に変わってしまうことは避けなければなりませんが、イベントを直前にしてのそういう意味での不安などは抱えずに必要とされるその瞬間に突入できるようになったと思います。

一方で イレブンナイン さん の他のスタッフは、イベント終了と同時に笑顔と共に大きな息を吐く姿をアチラコチラで見ました。
やはり慣れないことをするとどうしても疲れますし、気苦労も重なるものと思います。

また、やはり私の場合は前述のようにたくさんのお客様が話しかけてきてくださったりすることによって、そんなみなさんから元気をいただいたりしています。
そんなみなさんの優しさや想いも、私を疲労や苦労とは逆の方向へと引っ張ってくださっているのだと思います。



今回のイベントを振り返ってみると、来場いただいたお客様のたくさんの優しさや思いやりが溢れ出ているようなイベントだったと思います。

それぞれの方にそれぞれの事情があるでしょうから、誰が勝っていて誰が劣っているとか、ご来場いただいた方が凄かったり優先だったり、また来られなかった方がどうだということではないということを先に上させていただいた上で。

時間より早く来られて外で待っていてくださった方も、推しTシャツを着て来られていた方も、チケットをたくさん購入いただいた方も、1人1人の名前をしっかりと覚えようとフライヤーを片手に確かめるように握手をしていた方も ・・・ 。
本当にそれぞれの方が様々な想いを持ってこの日を迎えてくださったのだと思います。


その中には元々演劇が好きでアリスインプロジェクトに出会ってくださった方もいれば、元々はキャストのファンの方で、それをきっかけに来ていただいた方もいると思います。

そんな方々が演劇をきっかけにそれぞれのキャストに興味を持ってくださったり、逆にキャストをきっかけに演劇に興味を持ってくださるというのは、どちらの世界にとっても誰にとっても利点のあることだと思います。
それはこの3年のアリスインプロジェクト札幌公演を見ているだけでも、そんな現象が少なからずあちらこちらで起こっていることが目に見えてわかります。

また、元々お目当てのキャストがいてその子を見に来たけれど、他にも好みの子を見つけてしまったという話もよく聞きます。

今回のイベントでは、全キャストのうち、金澤有希 さん長久保桃子 さん北出彩 さん がスケジュールの関係から欠席となりましたが、そんな彼女達のファンだという方も来場されていました。

そんな方に対してや、また複数枚数のチケットを購入いただいたことで何度か握手の列に並ぶ方に対しては、スタッフが、「 ぜひお気に入りの子以外に、プラス1で誰かを見つけていってください 」 というご案内をさせていただいていたそうです。

そういうのもまた、アリスインプロジェクトを通して生まれる御縁であり、それぞれにとっての新しい出会いであるとも思います。


聞くところによると、東京でのアリスインプロジェクト公演でもこのように、演劇界とアイドル界のファンの融合が進んでみたり、そこをきっかけに新しい出会いが多く生まれていたりするそうです。

特に公演の直後には出演したアイドルのライブに、それまで見たことのないようなファンの方が増えたり、その後の演劇の公演にも今までとは明らかに違った客層が生まれているそうです。
それは本当に素晴らしいことだと思います。

そういう視線で今回のアリスインプロジェクト札幌公演を見ると、これは興行側にとってもチャンスであり、そしてタレント側にとってもまたチャンス。
更にはファンのみなさんにとってもまた新しい何かが広がる可能性のある機会でもあり、それらはそれぞれの想いを抱え、熱を帯びて広がっていくのだと思います。


実際の現場でも、イレブンナイン さん のスタッフが、ファンのみなさんが一生懸命にそれぞれのキャストを応援してくださるその光景を見て、「 本当にすごい 」 といつもイベントにの度に私に伝えてきてくれます。

そんな光景を驚きを隠さないままに見守っていたスタッフもまた、新しい出会いを経験しています。

最近はそんなスタッフとそれぞれのファンの方が直接話し込んでいたりするような光景も多く目撃するようになりました。
ここにも間違いなく新しい御縁が生まれていますし、我々スタッフ側にとってもそういう御縁というのは本当にありがたいものでもあります。

また、このアリスインプロジェクト札幌公演を一昨年の初回からずっと イレブンナイン さん が演出や制作などを手掛けていてくださることから、そんなイレブンナインという劇団、そしてそれぞれのメンバーにも興味を持ってくださる方も多く、そちらの方でも集客を含めて色々な意味で好影響が出ていると感じます。

そしてまたそれはジャガイモンプロジェクトにとっても同様です。

本当にありがたいことや嬉しいことが盛りだくさんで、たくさんの人にとって良い御縁や出会いがある。
それがアリスインプロジェクトの公演だとも思います。


   


握手会の直後には、「 上手く話ができなかった 」 と後悔の言葉を口にするキャストもいました。
ですが私はそれはそれでもいいと思います。

そういう部分も含めてそれがその人の個性ですし、ファン目線で捉えると現時点がそうなのであれば、ここから一緒に成長や変化を見守り、そして楽しむこともできると思います。

また、それぞれが身に着けたネームプレートを手に持ち、握手をする全ての方に対してそれを近くで見せている子もいました。
これだけの人数がいれば、名前を覚えていただくためにはこのようにしてしっかりアピールするというのも必要なことかもしれません。

そこにはそれぞれの工夫があり、自ら考えたそんなアピールもまたそれぞれの子の個性なのだとも思います。

私自身がそんな握手会にお客様と同じ立場で参加するということを想像すると、やはりそんな個性や色々な出来事があり、そして様々な会話がある方が楽しめるのではないかと思います。

それぞれの子の個性が魅力へと繋がり、そしてそれがファンの人を惹き付ける力にもなると思います。
だからこそ、次に同じような機会があるとすれば、そこに向けた課題や改善点はそれぞれにあったとしても、だからと言って今回が失敗だったとかそういうことはないと思います。

実際、スタッフとしてすぐ近くでそんな様子を見ていましたが、23人の彼女達には23種類のそれぞれの輝きがあったように感じました。
そこには誰のモノマネでもコピーでもない、オリジナルなそれぞれの23人がいたと思います。



一方、今回のイベントに関しては特に集客の部分に関して心配事や不安な部分があったことは確かです。

また正直なところ、このイベントに対してのキャスト全体の発信に多少の疑問を私個人としては感じてもいたのも確かです。

このイベント当日を迎えるにあたって、全キャストのSNSだけに限って見ていると、稽古中やその前後の楽しそうな写真やそんな様子を伝えるものは数多くあっても、このイベントのことを具体的にしっかりと伝えるものはそれほど多くなかったように感じます。

稽古後などにアップされる彼女達の写真や様子を伝える文字は、彼女達自身の魅力も伝え、それが今回の公演の魅力にも繋がっていくとは思います。
当然、そのような魅力があるからこそ公演に来てくださる方も少なくないでしょうし、そういう部分での集客を多く望めるのがまたアリスインプロジェクトだとも思います。
その点に関しては彼女達は努力というよりもごく自然にできているのだと思います。

また私自身も、今回のイベントに至るまでにそんな彼女達のSNSなどを数多く見ていたこともあり、顔と名前が一致もすれば、様々な表情を知ることもできました。

ですがやはり、公演そのものやそれに付随するイベントなどに関しては、しっかりと具体的な内容告知がそれぞれから必要だと思います。
それは自ら発信する直接的なものであれ、誰かの発信を拡散する方法であれ、やらないよりはやった方がいい。
そしてそれをしないということは損をしているとも捉えることができると思います。


これから更に稽古が本格化し、そして25日からは本番の舞台に立つ彼女達にとっては、当然そこに集中することが最も大切でしょう。

ですが一方で、その舞台本番にたくさんのお客様に来場いただくこともまた彼女達にとっては大切なことです。
極端な話をするならば、いくら良いものを作ったとしても、どれほどの努力を重ねたとしても、それを誰にも観ていただけないのであれば、それはほとんど無駄な努力となってしまうとも言えると思います。

今回の公演だけに言えることではないと思いますが、作品を作るとこも大切ですが、お客様に来ていただくということもやはり大切なことだと思います。

このアリスインプロジェクト公演はキャスト個々を ” 指名 ” してチケットを購入できるシステムがあり、それは当然それぞれに ” 差 ” を生み出すことにも繋がります。

このシステムは、個々のやる気を起こさせるものでもあり、時には残酷な結果をはっきりとした数字で示してくるものでもあります。

抜群の人気を誇る人であれば、自分を指名するチケットを売ることに対してはそれほどの努力をする必要もないかもしれません。
ですがそうでない場合、やはりそこには多くの努力や工夫も必要になるのだと思います。

過去2回のアリスインプロジェクト札幌公演でも、この ” 発信 ” という部分では多くの課題を残す一方で、様々な経過や結果を経て取り組み方や努力の仕方にも変化が現れています。

ですがこれは回数をいくら重ねたとしても、明らかな正解というものは存在しないと思います。
ならばやはりそこには努力と工夫が常に必要なんだとも感じます。


そんな中、今年のここまでを私が見る限りではそんな努力や工夫はそれほど各キャストから感じることができません。

ファン目線で見ていると、そこには彼女達の笑顔があり、楽しそうな姿があり、これからの本番に向けた様子が何となく伝わって来ます。
ですが一方で興行側としてのスタッフ目線で見ると、やはりそこには明らかな物足りなさを感じます。


昨年までいたチケットをたくさん売ってくれるキャストが今年は何人もいません。
そうなれば、今年は個々に更に何かが必要でしょう。

複数回出演しているキャストにとってはそういう意味でもベテランでいてもらわなければならないと思いますし、今年が初めてのキャストに対しても良い見本であり、先を切っていける存在でなければならないとも思います。


事務所やそれぞれの時間などの制約もあり、全てのキャストが同じ状況にあるわけではないですが、そんな中でも空いた時間を利用してチケットの手売りを繰り返しているキャストもいます。
そういう姿はとても逞しく、そしてこの公演に対しての情熱を感じるものでもあります。

個人個人のライブやイベントの際にもチケットを売っているキャストもいるようです。
そういう機会に公演をアピールできる、チケットを売ることができるというのはまた大きなことだと思います。

また、当然我々スタッフ側でもやっていかなければならないことはまだまだたくさんあると思いますし、タレント運営としても然りです。
発信などに関しても彼女達にばかり負担をかけるのではなく、当然スタッフとしてもできることはあるはずです。


昨年の公演は、一昨年の第1回の札幌公演のキャストやスタッフ、そしてたくさんのお客様のパワーがあったからこそ実現したものだと思います。
今年の公演も過去2回のたくさんの人達の様々な蓄積があったらからこそ繋がってきたものだと思います。

この先本番までの期間、黙っていてもある程度のチケットはきっと売れることでしょう。
ですが、お客様を迎える側、観ていただく側にとってそれでいいのか。
そう考えると、これからあと約半月、まだまだやるべきことはたくさんありそうです。



(レポート中の会場内の写真は、制作側の正式な許可のもとで撮影しているものです。二次利用は固くお断りいたします) 






キャスト

シングルキャスト
北野 美環  金澤 有希
北野 苺 ・ 南田 梨花  塚本 奈緒美
百合園 絵里  田川 麗捺
長沼 亜里沙  工藤 夢心
橋本 綾久  横山 奈央
若葉 香織  小西 麻里菜
平山 樹  駒津 柚希
瑞江 理沙  市山 黎
高幡 千真枝  北出 彩
稲城 綾芽  長久保 桃子
大沢 灯  須田 そより
永山 雫  鈴木 花穂
岩本 小夏  星野 千那
桜 日和  工藤 沙貴
千川 見晴  谷口 郁美
宮脇 千鶴  岩杉 夏

変則シングルキャスト
北野 凛胡  (月組) 齋藤 千夏 (星組) 塚原 樹
片岡 観音子  (月組) 塚原 樹 (星組) 齋藤 千夏

ダブルキャスト
大島 由美  (月組) 国門 紋未 (星組) 西村 摩利乃
小川 一水  (月組) 高畑 有美恵 (星組) 羽美
中川原 由香  (月組) 太田 菜月 (星組) 上野 華歩
森下 比呂  (月組) 佐藤 楓子 (星組) 青山 千紘


キャストのみなさんのツイッター
青山 千紘 @cottoncandy1747 市山 黎 @00i_rei
岩杉 夏 @pesuuuuuuuu 上野 華歩 @enoki_kaho
羽美 @umi0825_jp 太田 菜月 @n_o0714
金澤 有希 @GEM_yuki_ist 北出 彩 @ktdsai
工藤 沙貴 @karaage05050519 工藤 夢心 @kudo_yumemo
国門 紋朱 @kunikado 小西 麻里菜 @sda_marina
駒津 柚希 @yuzuki_vjs7 齋藤 千夏 @ChiTantan826
佐藤 楓子   鈴木 花穂 @SUZUKI_KAHO
須田 そより @soyorinnnnn 高畑 有美恵 @kkkooox
田川 麗捺 @LenaZou0924t 谷口 郁美 @i9_u
塚原 樹 @619ikki 塚本 奈緒美 @naturalxnaomi
長久保 桃子 @mcmck1019 西村 摩利乃 @usaginomarry100
星野 千那   横山 奈央 @NaoYokoyama0820




スタッフ
原作・脚本 麻草 郁
演出 納谷 真大 (ELEVEN NINES)
舞台監督 上田 知
演出助手 後藤 七瀬 (ELEVEN NINES)
舞台美術 高村 由紀子
音楽 松ヶ下 宏之
照明 上村 範康
音響 大江 芳樹
ヘアメイク 曽根 基世志 /  矢萩 律子
振付 工藤 香織 (ダンススタジオマインド)
歌唱指導 木幡 周子
ラップ指導 赤谷 翔太郎
衣装 小武家 香織 (劇団M.M.C) / 上總 真奈 (ELEVEN NINES)
デザイン 益子 晃
写真撮影 島田 拓身 /  高橋 克己
HP 小和田 明
物販制作協力 坂口 紅羽 (ELEVEN NINES)
制作 小島 達子 (ELEVEN NINES・tatt) / 澤田 未来 (ELEVEN NINES) / カジタシノブ (ELEVEN NINES・tab) /
ELEVEN NINES
当日受付スタッフ 佐藤 紫穂
企画 鈴木 正博
プロデューサー 美濃部 慶
制作統括 青柳 一夫 (MAGMA)
制作 アリスインプロジェクト
製作 アリスイン株式会社
宣伝協力 d-SAP
協力 (50音順) エイベックス・マネジメント / Casting Office EGG / 劇団ひまわり / 劇団フルーツバスケット /
サンミュージックプロダクション / ジャガイモンプロジェクト / 専門学校 札幌マンガ・アニメ学院 /
テアトルアカデミー / ハートビット / ビーイーエス / 北海道アイドルカレンダー /
代々木アニメーション学院 / ライブプロ

 
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